リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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モードチェンジ」の続き…なのですが、33・34話の櫂三和ベタベタっぷりを前提に全国大会予選後(32話後)を考えたら、音速で櫂がデレました(笑)
本編のネタを拾うのに全力を注いでます。公式に逆らえない人なので(笑)

 あれ以来、暫くは櫂とは微妙に距離を置いて接していた。近づきすぎた心は無かったことにはできないけれど、それでも表面上だけなら、いつもどおりに振る舞うことぐらいはできる。
 時間稼ぎでいいのだ。取り繕った表面の下でも、心は少しずつ変わって行く。どう変わるにしても、機が熟せばタイミングはやってくる。
 待つのには慣れている。離れていた四年間、櫂のことを、忘れることなどできなかったのだから。
 もっともそれは、櫂も同じではあったけれど。
 
 アドバンス
 
 ヴァンガード夏の全国大会予選終了後。
「残念だったな?」
 本選出場チームが発表された後、一足先にチームを抜けて来たらしい櫂に、疑問形でそう問いかけると、櫂は感情の読めないいつものクールな表情で聞き返した。
「何がだ?」
「予選。突破できなくて」
「こんなもんだろ」
 あっさりとしたその返答の真意を測りかねて、三和は眉をひそめる。
「それ、どういう意味だ?」
「そのままの意味だが」
 いたって淡々と櫂は答える。それはそうだろうが、簡潔すぎるというのも厄介だと三和は思う。
「……けど、カムイが出てれば本選行けたんじゃねーの?」
 櫂の実力だけなら、明らかに本選レベルだ。先鋒とはいえ、前回優勝チームのAL4相手にきっちり勝利している。ただそれが、ミサキ・アイチという二人の初心者を抱えたチームで、経験値的にも全国に通じそうなカムイとは馬が合わないときて、人間関係のトラブルを起こして全国大会予選止まり。まぁ確かに、全てを総合すれば「こんなもの」なのかもしれないが。
「葛木が無理だって言ったんだから、仕方ないだろ」
 カムイが本選に出なかった原因は当の櫂なのだが、櫂はまるで他人事のように言う。実際、櫂にとっては他人事なのかもしれないが。
「……本選出たかったとか、そういうのは無いのか?カムイさえ怒らせなきゃ――」
「別に」
 そっけなく否定されて、三和はその先の言葉に窮する。
 強い相手を求めているなら、本選で闘いたいと思ってもいいはずなのに。
 納得のいかないその様子に、櫂が口を開いた。
「お前は、本選に出てほしかったのか?俺に」
「え?そりゃ」
 出てほしかったよ。
 そう答えようとしたけれど、違和感を感じて声は途切れた。
 ついでのように付け足された最後の言葉。
「……俺に?」
「俺に」
 わざわざ同じ言葉を繰り返して確認するようなお茶目な奴だっただろうか、こいつは。
 心なしかニヤニヤとした顔で聞かれている、その言葉の含みは。
「……それまさか、『チームに』か『お前に』かってことか」
「さぁな?」
 しらばっくれなくても分かっている。見事にハメられたと言うべきか。
 羞恥で、顔が熱い。
「……両方だよ、一応」
 一応、と付け足したのは、今ここで誰より櫂を優先しかけたことに気づいているからだ。
 チームより何より、櫂が本選で闘うところを見てみたかった。
(俺これ、下手したら櫂より酷くねぇ?)
 櫂は「チームで」負けたことを分かっているし受け容れているのに、三和はといえば、「櫂が」負けたような気がしてもやもやしていて。
「だろうな」
 櫂は特に突っ込むでもなく、そのややずるい返答を受け入れてくれたけれど。
(なんか、調子狂う)
 何故だろう妙に空気が優しくて、いたたまれない。
 気まずげに黙る三和を宥めるように、櫂が言った。
「闘ってみたい奴は、いたけどな」
 その言葉に、思わず訊き返した。
「雀ヶ森レンとか?」
 振り向いた櫂の不意を打たれたような顔を見て、どうも違っていたらしいと思っても後の祭りだ。
「いいいいいやいやいや今のナシ!ナシ!!」
 ぶんぶんと手を振る三和の脳裏に、昼間に聞いた声が響く。
 
“そんなにレンを意識してんのは、昔二人が同じチームを組んでいたからか?”
 
 AL4の矢作キョウとやらが櫂を挑発していたとき、横で聞きながら平静を装ってはいたけれど、思わぬところで露呈した過去に、動揺しなかったわけではなくて。
 
“レン、レン、レン…どこがいいんだ、あんな奴”
 
 しかもその後、櫂は何も言わずに立ち去ってしまって、ただでさえ詮索を嫌う櫂に、問いただすようなことはできなかったのだけれど。
「……気になるか?」
 不快な顔を見せるでもなく、櫂はそう言った。
 それでもまだ、聞いてもいいのか自信が持てなくて、ためらいがちに頷く。
「……うん」
 思案顔で櫂が俯く。
 暫く考えてから、櫂はこう前置きした。
「詳しくは、多分まだ話せない」
 踏み込んでいいのかためらっていたのは三和のほうで、だからそれに、むしろほっとして頷く。
「いいよ、話せるだけで」
 曖昧な笑みで、櫂はそれに答えた。
 そしてまた暫く、沈黙が流れる。
 何も言わずにただじっと待っていれば、意を決したように、櫂が沈黙を破った。
「……会いたかったし、会いたくなかった。逃げたかったし、逃げたくなかった。負けるつもりはなくて、それでも、絶対に勝てるとは思えないから……」
 漠然とした言葉の連なり。勝つとか負けるがヴァンガードでという意味なのか、もっと抽象的な意味なのか、それは分からなかったし、聞けなかった。
 それは本当に、まだ言葉にしてはいけないくらいの感情。他人が聞いてはいけないくらいの、独白だったから。
 言い終えて、ワンテンポ遅れてから櫂が呟く。
「……説明になってないな」
「いや、それはいいけど」
 少なくとも、櫂にとってレンがどんなに根深い存在なのか、それくらいは理解できたし――と、やや複雑ながら三和は内心で思う。
「俺、聞いてよかったのか?」
 その言葉に、また微妙にためらって、言いにくそうに櫂はこう答えた。
「また泣かれるよりはマシだ」
「……っ」
 言いにくそうなのは、多分照れのせいなのだろう。
 照れるのは言われた三和も同じで、顔が一気に紅く染まったのを自覚する。
 しかし櫂は、もうここまで言ったら同じだと言わんばかりに追い打ちをかけてくる。
「あと、変な気を遣って避けられるよりは」
「え」
 櫂の手が、三和の手を握った。
 驚いて櫂の顔を見ると、やけに神妙な――ありていに言えば真剣な、多分正しくは、真摯な表情があった。
「……もう、大丈夫だから。変な気は遣うな。そこまでヤワじゃない」
 その言い方はおかしいだろうと、言いたいのに言えない。何もおかしくはない。つないだ手から伝わるぬくもりが、それを証明している。
 だから余計に、話をそらしてしまう。
「……お前はもうちょっと気ぃ遣ったほうがいいだろ、だからカムイ怒ったんだし」
「俺が俺のチームメイトとトラブっても、俺の勝手だろ」
(お前が嫌われるのは俺が嫌だ)
 なんて、独占欲丸出しなセリフはさすがに言えなかった。
「お前とやり合うカムイの身にもなってやれよ、大人げねーぞ?」
「俺なら年は気にされたくないな。建前で誤魔化されたくもない」
「そう来るか……」
 今の会話をカードキャピタルの面々に聞かせてやりたい。チームメイトだなんて言葉が櫂の方から出たと言ったら、彼らは信じるだろうか。
(喧嘩できるぐらいには、カムイを認めてんのか、こいつは)
 なまじ櫂がカムイの気性に共感するから、“チームメイト”のイメージがカムイと違うことを誤魔化すわけにはいかなくて喧嘩したのだ、結局。
 なんだか完全に負けた気分で、三和は櫂の肩に額を預けた。
「あーも、分かった、分かりました。避けはしねーよ。だからもう、勘弁してくれ」
 心臓に悪い。
 息つく間もなく変わっていく心を――良いほうに変わっていく心を、見せつけられて。
 黙って受け止めていた櫂が、不意に口を開いた。
「……レンと再会しても、思ったより平気なのは……何故だろうな」
 誰にともなく問いかけたその呟きの答えには、多分もう気づきかけているのだろう。
(勘弁してくれっつったのに)
 してくれないから、今更なことを言いたくなる。
「……なぁ、俺さ」
「ああ」
 それでも、ちゃんと言うのは、本当は初めてなのかもしれない。
 気恥かしくて顔は上げられないまま、囁いた。
「お前のこと、好きだよ」
「……ああ、知ってる」
 不遜な言葉とは裏腹に、優しい腕が抱きしめてくれた。



+++

一応合宿につながるように地味な伏線は入れましたが、これ続く必要あるんだろうか…(笑)
そしてレン関係は結構危ない橋渡ってるっていうvvvvvv36話でつじつま合わなくなる可能性もあるしなー。まぁ、相変わらず続けられそうならそのうち続けます。
しかし34話の櫂くんデレてたよね。ほんとデレてたよね。ありがとうございました…!
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