リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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35話後でカードキャピタル着いたとこから。
あのバスのシーンを最初に見た時、真っ先に思ったのは「その表情は櫂が見たら確実にキレる!!」でした。男の子的に守られたくないお年頃(偏見)のアニメ版櫂にあの三和の態度が癇に障らないわけがない。
いや、実際には帰りのバスでよく寝てそんなストレス忘れてそうですけどvvvv
まぁそういうわけで、櫂の片思いでバイオレンス注意。(どういうわけだ)
しかし36話見る前にこれじゃ、36話見たら私は一体どうなるんだ…。

 合宿からの帰り道、思い思いに一泊二日を満喫した応援団含むチームQ4の面々は、ドライバーの店長こと新田シンを除いて、全員がバスの中で爆睡してしまった。特に夜の遅かったアイチや、朝の早かった櫂はなおさらだ。
 その結果。
「――おい櫂、着いたぞ?」
「……ん……?あぁ……」
 隣に座っていた三和に肩を叩かれて、櫂は目をしばたたかせてひとつ大きな欠伸をした。その隣では井崎が前の席のアイチを揺り起こしている。こちらもまだ寝ぼけているようで、「……ふわぁ……おはよう……?」などと情けない声で答えている――
「………」
 そのあたりで、櫂の意識が完全に覚醒した。寝ぼけた顔のままで、周囲に悟られない程度に地味に動揺する。無防備としか言いようの無い姿をさらしてしまったことが不覚だった。
「起きたか?」
 覗き込むようにしてこちらの表情を伺う三和には、努力の甲斐あって内心の焦りまでは伝わっていないらしく、櫂は短く答えた。
「……ああ」
 ここで取り乱したら総崩れになる。まだ致命的なミスは犯していない。だがこの流れではそうそう邪険な態度を取るわけにもいかない。下手に邪険に当たれば不覚だと思ったことがバレる。そうでなくても照れたことにされかねない――
「よく寝てたな」
 人好きのする、明るい笑顔で三和が言った。
 おい、普通なら底意地の悪い顔でからかうシーンだろう、今日はどうした。朝が早かったからな。人の寝顔をじろじろ見るな。どっちだ。どっちで答えるべきだ。
 三和の表情に虚を突かれて、櫂の思考が完全にフリーズした。その様子を見て、三和が重ねて問う。
「櫂?……まだ寝ぼけてんのか?」
「……人の顔をじろじろ見るな」
 脳内を駆け巡っていた選択肢にややアレンジを加えて、不機嫌そうに櫂は言った。
 櫂の目前で三和が一瞬固まって、そして苦笑した。
「はーいはい、ったく、皇帝さんの魔法もここまでだな」
「…………は?」
 思わぬ名前と単語に、櫂は思わず素で聞き返した。
「機嫌よかったじゃん。楽しかったんだろ?」
 気分を害した様子もなく言われて、櫂は戸惑う。そしてやっと気づいた。
(今日はどうした、は……俺のほうか)
 昨日も今日も、光定とのファイトに明け暮れて、本当に久しぶりに夢中になって闘えて、確かに気分は良かった。
 それでも、光定以外に普段とかけ離れた態度を取ったわけではないはずなのに、少なくとも三和にはそう見えなかったらしい。
 だからからかうでもなく、あんな表情をしたのだろう。いつもこちらが邪険にするから、それ相応の仕返しで軽口を叩かれるけれど、今日は機嫌良くしていたから神経を逆なでするようなことをしなかった――というか、する気にならなかったのだ、多分。
 それは分かった、けれど。
(…………駄目だ、イラついてきた)
 そんなことでお前まで機嫌良くなるな、意味が分からん。
 簡潔に言えば、櫂の感想はそんなものだった。
 無言で席を立つ。
「え、おい」
「起きた。帰る」
 一連のやりとりの内に、アイチ達はさっさとバスから降りてしまっている。
 生憎と櫂は奥まった窓際の席を陣取っていたため、三和が先に出てくれなければバスから降りられない。それが分かっているからだろう、釈然としない表情で、それでも三和は素直に降りてくれた。
「櫂くん」
 降りたところで、アイチがそう声をかけてきた。カードキャピタルの前で一度全員集合しているらしい。
「あ、そろいましたね。それじゃ皆、今日はお疲れ様でした」
 当然まとめ役になっているシンの声に、集まっていたメンツが「お疲れさまでしたー」と斉唱した。蛇足だが、戸倉ミサキも普通に参加している。
 わざわざそれを言うために集まっていたのかと、櫂は内心で溜息をつく。全員で同じことをするという行為が、どうにもしっくり来ない。
 とはいえそれはいつものことで、そのメンバーに含まれていることに文句を言うほどでもない。気に入らないなら従わなければいい、それだけのこと。
 集団に背を向けて歩き出すと、後ろからアイチの声がした。
「あ、櫂くん、またね!」
「ああ」
 櫂は振り向きこそしなかったけれど、完全に無視はしなかった。結局まだ機嫌がいいということなのか、支離滅裂な自分に、櫂自身がついていけない。
「待てよ、櫂!――じゃーなっ!」
 その後ろから、いつものように三和が駆け寄って来る。他への挨拶も忘れないあたり、本当にそつが無いと、櫂は内心で思う。
 まだ荷物がどうのとか店の前で雑談しているらしい声が、次第に遠ざかって行く。
 暫く無言で歩いていたけれど、思い切ったように三和が口を開いた。
「……なぁ櫂、俺、いないほうがいい?」
 まさかの想定斜め下からの問いかけだった。
「何故そう思う」
 問い返した櫂に、三和はまた戸惑うような顔をする。
「いや、うーん……なんでって言われても……」
 口ごもったまま、あれやこれやと考えているのか、なかなか次の言葉は出て来ない。
 櫂自身は、積極的に三和にいてほしくないとまでは思っていない。大体、それならそう思った時点で追い払っている。
 しかしそれをわざわざ口にする気にはならず、櫂は黙ったままになる。
 言いあぐねながらも、三和が言葉を続けた。
「……今日一日くらい、機嫌良いままでもいいんじゃねーかなって」
(……意味が分からない)
 今日二回目の感想だった。
「お前に関係ないだろ」
「関係あるって。お前が機嫌良いほうが俺だって気分良いし」
「……意味が分からない」
 三度目で、とうとう声に出した。言われたこと自体は予想通りだ。だがやはり、そんな心理状態は櫂にとって本当に意味が分からない。
「そーゆー奴もいるんだよ」
 ほとんど普段通りを取り戻して苦笑する三和に、けれど櫂は、普段通りとはいかなかった。
 ああそうだな。いるのかもな。俺にはそんなことは分からないがな――櫂の中で、何かが切れた。
 目についた薄暗い路地裏に、三和の腕を掴んで引きずり込む。
「…なっ、櫂!?」
 抗議の声は完全に無視で両肩を掴んで、ほとんど叩きつけるように壁に押し付けた。
 硬いものがぶつかる、鈍い音がした。
「何すんだよ!?」
 ぶつけた拍子にどこか痛めたのか、振りほどこうとする手に力は入らない。
 何をするはこっちが聞きたい。自分が何をしているのか、正直自分で分からない。
「ムカつくんだよ、お前」
「……っ」
 三和を睨みつけながら、櫂は低い声で告げた。
 さすがに三和の方も臨戦態勢で睨み返してくる……かと思ったけれど、意外にも三和は戸惑うような――傷ついたような、そんな顔をしていた。
(だから、何故)
「……だから、いないほうがいいならそう言えって――」
「俺はそんなことは言っていない」
 言葉を遮って発した否定に、三和がさらに分からないという顔をする。
「勝手なイメージを押し付けるな」
「……っ、だったら、何だってんだ!」
 三和がやけになって喚いたのは不可抗力だろう。けれど混乱度にかけては、圧倒的に櫂のほうが上だった。起きてからこっち、三和のやることなすこと気に入らない。笑うな、喜ぶな、俺の機嫌など気にするな。俺はお前の何なんだ――
「――お前は俺の何なんだ」
「何って、……友達?」
 絞り出したその問いに、訝しげな顔で返ってきた言葉は軽かった。
 それでも決して濁らない瞳。
 そんな目で俺を見るな、俺を分かるな、俺を決めるな見下すな奪うな捕えるな――

 そのとじたセ カ イ ヲ  ブ  チ  コ  ワ  シ  タ   イ

「――っ!?」
 両手で三和の首を絞めて、酸欠にあえいで開いた口を自らのそれでふさいだ。夢中になってその口腔を蹂躙する。酷く甘いそれに慄然として、締めていたはずの手は緩んだ。三和の体が勢いよく呼吸をしようとする。酸素と一緒くたに舌を吸われて、ぞくりとした痺れが背筋を走った。もっと求めればいい、もっと――
「……っ」
 苦痛に歪む三和の顔、まなじりからこぼれた涙に、我に返った。
 押さえつけていた手を離すと、三和が体を折って苦しげに咳き込む。
「……てっめ……、殺す気、かよ……っ」
 咳き込んだせいで上目遣いで睨みつけてくる片目は、怒りと困惑の狭間、どこまでも透明な光に満ちて、不思議と綺麗だった。
 櫂が見つめる先で、その瞳が揺れた。
 その揺らめきに、櫂の心も揺らめく。
「お前、」
 何故、そんな目ができるのだろう。
 三和のことが分からない。
 疑問ばかりが、とめどなく溢れて来る。
「…………何、泣いてんだよ……」
 その言葉に、操られるようにして目元を拭う。指先に付着する液体を見て、櫂はやっと、頬を伝う涙の存在に気付いた。
 けれど自分の涙より、たった今殺されかけたことを忘れたような三和のほうが、やはり不思議だった。
 そしてやっと分かった。
 三和の何もかも、気に入らなかったのは。

 殺したいほど、憎いのは。


 ――最初からずっと、負けていたから――



(…………お前のことが、好きだから)



 あの微笑みに囚われた。
 初めて見たような、それでいて懐かしい笑顔。
 きっと彼の本来の笑顔。
 それこそ魔法でもなければ、向けられなかったはずの笑顔。

 今更言えるはずもない。
 いない方がいいのは俺のほう。
 奪っているのは俺のほう。
 流れる涙が止められない。

「……悪い、ほっといてくれ」
「ほっといてくれって、ほっとけねーだろ、普通……」

 その優しさが俺のためなら良かったのに。
 かわいそうな誰かのためじゃなく。
 純粋に、俺のためなら、俺だけのためならどんなに――



 fin.






………ど、どうしてこうなった…?
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