リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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前に投稿したやつやや修正+櫂&三和パート完結。一応後編…というかクライマックスは考えてるんですが、書けるかな~(おい)

「……とつきあいはじめたってほんとかよ!?」
 某年七月某日、とあるカフェの片隅で話し込んでいた高校生の片割れ、黒髪の少年が叫んだ。
「そーよ」
 澄ました顔でストローでジュースをすするのは、まだどこかあどけなさの残るポニーテールの少女だ。
 その落ち着き切った態度に、信じられないように少年がまくしたてる。
「なんっ…でだよ、もっと他にいい奴いるだろ!?なんでよりによって……」
「何よ、カムイちゃんにそんなこと言われる筋合いないでしょ?」
 眉をひそめてそう言い返した少女――大文字ナギサに、いまだにカムイちゃん呼ばわりされている葛木カムイが食ってかかる。
「いやそりゃそーだけど、なんでよりによって櫂の野郎なんだよ!?」
 叫んだとおり、ナギサの相手はカムイにとっても旧知の青年、ナギサより二つ上のカムイよりさらに四つも年上、同じヴァンガードファイターの櫂トシキだった。
 しかし断固として口を割るつもりの無いらしいナギサは、さらりと一言で切り返す。
「別にいいじゃない、そんなの」
「よくねーよ!!」
「何がよくないのカムイくん?」
 口を挟んだのは、ナギサではない。冷ややかなトーンにカムイが振り返ると、そこには満面の笑みを顔に貼り付けた少女が立っていた。清楚な印象とは裏腹に、つけいる隙の無い完璧なその笑顔は、絶対零度と形容するに相応しい。
 カムイと同じ年頃のその少女の名は先導エミ――カムイの長年の想い人であり、紛れも無い現在の恋人である。
「エ、エミさん……どうしてここに……」
「ナギサちゃんが教えてくれたの」
 にこやかなままでエミは答える。
 その答えにカムイが勢いよくナギサに向き直ると、ナギサは相変わらず澄ました顔を見せつける。
「私に黙って?二人でカフェ?しかもナギサちゃんがつきあいだしたことに文句言うために?」
 畳み掛けるような糾弾に、カムイがたじろぐ。
「こ、これにはわけが……」
 にっこりとした能面のような笑顔は、嵐の前の静けさをたたえていて。
 カムイの背筋を悪寒が走った、次の瞬間。
「……カムイくんなんて大っ嫌い!!」
 有無を言わせない雷が、カムイを直撃した。
 
 * * *
 
「……それで今日は機嫌が悪いの?」
「うん」
 ぶすっ、とした顔を隠そうともしないエミに、アイチが苦笑する。
 エミから話を聞く限りでは、カムイはまったく庇いようがない――が、その一方で同情も禁じえなかった。この妹の全力の拒絶は、カムイにはさぞかし堪えることだろう。
「勝手なのよ、ナギサちゃんから猛アタックされてたときは逃げ回ってたくせに、ナギサちゃんが他の人とつきあうのは気に入らないなんて」
「はは……」
 そうだね、と肯定して勢いに乗られるのも怖くて、アイチは曖昧にうなずく。
 かつてのナギサがカムイに熱烈なアプローチを仕掛けていたのは周知の事実だ。それこそ、ナギサの恋人の櫂も承知のことだろう。
(……櫂くんがナギサちゃんと……っていうのは、僕も驚いたけど)
 あまりオープンとは言えない性格の櫂だから当然といえば当然だが、そんなそぶりを見せたことは一度も無かった。一体いつからそんな想いを抱いていたのか、気にならないといえば嘘になる。自分にとっては、櫂は今でも憧れの人なのだ。
「……そりゃ、あんなに慕われてたんだから、気になるのも分かるけど……」
 散漫になっていたアイチの思考を、トーンの落ちたエミの声が遮る。
 一通り怒りをぶちまけた後に残ったのは、純粋な寂しさのようだった。
 うつむいたエミの頭を、アイチはぽんぽんとなでる。
「カムイくんのこと、好きなんだね」
「……うん」
 素直に頷いたその声は少し震えていて、カムイには悪いが今回は全面的にエミの味方をしようとアイチは兄として心に決めた――
「……って、アイチのくせに生意気!!」
「うえぇぇええ!?」
「何よアイチのくせに!ミサキさんとキスもろくにできないくせに!このヘタレアイチ!!」
「いいい今それは関係ないだろ!?!?」
「うるさいうるさいうるさーい!!」
 ――が、そんな気遣いは気の強い妹には気に食わなかったようで、アイチは思わぬとばっちりを食うことになったのだった。
 
 * * *
 
 ところは変わって、また例のとあるカフェ、今度は大学生の青年二人である。その一人は件の青年・櫂トシキであり、向かいに座っているのは彼の親友、三和タイシだった。
「……ってな感じでアイチからメールあったんだけど、なんて言って告白したんだ?ナギサちゃんからってこたぁねーだろ?」
 エミのことで気になるけれど直接櫂に尋ねる度胸は無いから、もし気が向いたらナギサとの付き合いについて聞いてみてくれないか、というのがアイチから三和に送られたメールの趣旨だった。
 ちなみに三和が櫂とナギサの付き合いを知ったのも、そのメールが初めてである。
 しかしその問いに、櫂は黙ってコーヒーを飲むばかりだ。
「黙秘かよ」
「話す必要性を感じないな」
 ぼやいた三和に、櫂は簡潔にそう答えた。この二人が会話する場合、たいてい三和が櫂の五倍は話している。そもそも櫂は、会話という営為をあまりしたがらない。
「はぁ……。まぁいいけど、確かナギサちゃんって、今年やっと高一だろ?軽く犯罪っぽくね?」
「そうだな」
「開き直りかよ、このロリコン」
「なんとでも言え」
 軽い罵倒をさらりと受け流す櫂に、三和はおや、と顔つきを変える。
「……ってことは、ナギサちゃんのこと好きってのは、ほんとなんだな」
 かすかに驚いた響きの声で三和が言った。
 正直メールだけでは、櫂が誰かと付き合うという事態に現実味が無さ過ぎてあまり実感が涌かなかったのだが、この流れを否定しないということは、少なくとも櫂がナギサに好意を持っているのは事実なのだろう。
 この三和の言葉についても、櫂が否定する気配は無い。
(イエス/ノーしか答えないって、ほんと不親切だよなーコイツ)
 それとも嘘はつかないと信頼できるだけマシなのか。これで本当に誰かと付き合ったりできるのかと、三和の中ではクエスチョンマークが増えるばかりだ。
 さてどう話を続けようかと悩んでいると、櫂の方が口を開いた。
「まぁ、そんなところだ」
 あまりにも適当すぎる肯定に、三和は即座に突っ込む。
「どんなところだよ」
「お前のイメージは間違ってはいない、俺に言えるのはその程度だな」
 今度こそちゃんと答えてくれたものの、なんとも歯切れの悪いセリフだった。
 言えるのはその程度、ということは、言えない何かが隠れているということだ。
 そして今の話で残っている不確定要素は、そう多くない。
 なんだか雲行きが怪しくなってきたと思いながら、三和は怪訝な声で尋ねた。
「……お前、ほんとにナギサちゃんと付き合ってんの?」
 地雷を予感しながらも、三和はそう言って核心に迫る。
 その質問に、櫂は暫く沈黙してからこう答えた。
「……ああ」
 淡々としたその声音に沈痛なものを感じ取って、そこから想像される事態の微妙さに、三和はそれ以上追及するのはやめることにした。

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