リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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44話後で裏ファイトからの帰り道。ほのぼの。そして漫才コンビ(!?)
櫂三和でも三和櫂でも大丈夫だと思う。本当にどっちでもいけると思う。
これで裏ファイトからの帰り道が45話以降で描写されたりするとちょっと不都合だなぁと思う今日この頃…(笑)

 やけに眩しい陽の光を感じて、三和は薄く目を開いた。
 飛び込んできた見慣れない風景に、一瞬戸惑う。
「……どこだここ……あ、そうか」
「起きたか」
「うぇっ!?」
 状況を思い出した瞬間に間近で聞こえた櫂の声に、三和は素っ頓狂な声を上げた。隣に腰を下ろしている櫂の手には相変わらずカードが握られていて、デッキのチェックでもしていたらしいと知れる。
 ここは裏ファイトをする者達が根城にしているバックストリート。裏ファイター達に喧嘩を売りに来ていた櫂を訪ねてやってきたのだが、諸事情で夜を徹してファイトする櫂を置いて行けずに、結局ここで一晩過ごしてしまったのだ。
 その原因になった客人は、周囲には見当たらない。
「コーリンちゃんは?」
「先に帰った」
 そういえばバイクで来ていたんだったかと、あまり関係の無いことを三和は思い出す。事情を聞く暇もなく案内した彼女の用件は、最近奇妙な能力に目覚めたアイチについて、櫂に問い詰めることだった。
 それは櫂にとっても因縁の能力で、こんなところで憂さ晴らしするほどの葛藤を抱えることになった原因でもあったらしい。吹っ切れてアイチを止めると決意した櫂は、尖った神経のクールダウンも兼ねて、コーリンと夜通しファイトをしていた。
 そんなことを思いながら眠気覚ましに伸びをしていると、同じくあたりで寝ていた裏ファイター達も目を覚まし始める。
「……あれ、まだいたの?」
 さすがと言うべきか一番に目を覚ました六月ジュンは、まだろくに開かない視界に櫂を認めて言った。明らかにうんざりとした声は、ここ数日の櫂の所業を三和に思わせる。
「ああ、もうすぐ帰るから、大丈夫」
「君はいいんだけど」
 寝ぼけ眼(まなこ)をこすって立ち上がると、ジュンは櫂を暫く見つめて、大きなため息をついた。威圧するように腰に手を当てて、櫂に告げる。
「これっきりにしてくれよ」
 しかしその表情は疲れきっていた。表情に似つかわしくない寛大な言葉に、こいつ本当にキングなんだなぁと感動しつつ、三和は苦笑して返した。
「いやぁ、ほんとごめんなー」
「何故お前が謝る」
「お前が謝る気ねーからだよ」
 真顔で突っ込んできた櫂を振り向きもせず、笑顔を貼り付けたままで三和は答えた。自分が来た時点で裏ファイター達は全員憔悴しきっていて、裏ファイトがそういう生業だと分かってはいても、三和は同情の念を禁じ得なかった。どう考えても、彼らより櫂のほうがよっぽどタチが悪い。
 相当迷惑を被っただろう裏ファイター達を思えば、これだけで済ますのも申し訳ないのだが。
「あんだけ世話になったんだからさ。なんか一言くらい言ってもいいんじゃねーの?」
 試しに言ってみた言葉に、櫂は暫く考えると、まだ眠っている裏ファイター達を示しながら、ジュンにこう言った。
「あいつらに言っておけ。素の実力が無ければイカサマも宝の持ち腐れだとな」
 間髪入れず、三和が櫂の頭をはたく音が響いた。
 
 * * *
 
 ジュン達の本拠地を後にして、人気(ひとけ)の無い裏通りを二人で歩く。このあたりの住人は朝が遅いのか、あたりはまだ夜明けの静けさを保っている。
「まー何にせよ、お前が吹っ切れたみたいで良かったよ」
 隣を歩く櫂の気配は、数日前とは打って変わって穏やかだ。
 無言のまま反応がなくても、落ち着いて一緒にいられる。
「にしてもイカサマも宝の持ち腐れって、あれ餞別のつもりなのか?」
 何の気なしに笑いながら、別れ際の櫂のセリフを茶化した。
 疲れているだろうし返事はないかと思ったけれど、意外にも櫂は答えてきた。
「……PSYクオリアはイカサマ……とは違う、な」
 唐突に出てきた未知のワードに、三和はおや、と櫂のほうを見やる。
「PSYクオリアって、昨日言ってた例の力か?」
「ああ」
 肯定のその声に、三和は何か懐かしいような素直さを感じた。
 心持ち視線を落としながら、櫂は独り言のように続ける。
「イカサマなんてものは、ルールを理解していなければ役に立たない。いつ何のカードが必要で、どう使えば勝てるのか……それが分からなければ、仕込むべきカードも見極められないからな。マスターした時点で、ほとんど要らなくなるような代物だ」
 なるほどと思わず唸りながら、三和は櫂の話に耳を傾ける。
「だがPSYクオリアは、その仕込むべきカードが分かる力……。必要なときに必要なカードが、その存在を訴えてくる……。だから何が最適な構築なのかを、検討する必要さえない、が……」
「……が?」
 何かを口にする直前で止まった櫂の沈黙は、物思いにふけっているせいらしかった。
 ぼんやりとした無言の時間を待っていると、櫂がその先を紡ぐ。
「……存在を主張したそれが、必要なカードだと理解するにも、確かに実力は必要なんだろうな……」
 それはPSYクオリアを肯定するわけではないけれど、それを持つことを全否定もしない言葉だった。
 櫂が何故そんなことを口にしたのか、続いた言葉で三和は理解する。
「……俺は一体、アイチの何を見ていたんだろうな……」
「櫂……」
 今までのことを櫂が後悔しているのは、昨日のファイトだけでも痛いほど伝わってきた。アイチを止めると決意したのは罪悪感からではないけれど、それでも櫂の中に、まだ収まりのつかない感情は漂っているのだろう。
 ――と、そのとき。
「……うぉっ!?」
 突然にぐらりと傾いだ体が、三和の方へと倒れ込んでくる。咄嗟に受け止めたものの勢いは止まらず、三和はその体を抱き止めたまま尻餅をついた。ついでに背後にしてしまった壁で、したたかに後頭部を打つ。
「……いってぇ……」
 呻いた三和の腕の中で、目を閉じた櫂が静かな寝息を立てていた。
「……ここで電池切れかよ」
 昨夜は一睡もしていないようだったし、そうでなくともここ数日はろくに眠れていないだろう。当然と言えば当然だが、今まで歩いていたことが不思議なくらいに深く、櫂は眠りについていた。
 安らかなその表情は、大人びた普段の印象よりも、ほんの少しだけ幼い。
「昨日まで散々暴れてた奴とは思えねーな、ほんと……」
 溜めこんで爆発させるやり方しか、櫂は知らないのだ。弱さを見せるのは甘えだと、限界まで己を律してしまう。適当に甘えてくれた方が周りだって楽なのに、それがどうしてもできないらしい。困った奴だと微苦笑を浮かべて、三和はその髪を優しくなでた。
 ジュン達と別れるまで平然としていたのは、彼らの前で気を抜けなかったからなのだろう。無防備な寝顔が信頼の証しだと思えば、起こすことはできそうになかった。もうこうなったら二度寝でつきあうしかないかと、その体を改めて抱き直す。
 ずっと側にいた小さな頃と同じ感触を覚えて、三和は囁いた。
「おかえり、櫂」
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