リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
櫂三和が全力で遊園地デート満喫する話。予想の斜め上ってレベルじゃねーぞ!
もうこれ完全に胸焼け注意\(^o^)/
時系列は二人が高校1年終わりの春休みぐらいイメージで、櫂がだいぶ砕けてます。あと櫂くんは一人暮らしだと決めつけた設定使ってます(笑)三和くんの思考回路が乙女。
某所でとある方と盛り上がった櫂三和遊園地妄想を元にしております…と言いつつ会話の1割ぐらいしか活かせてないですが…(遠い目)
なにげに10月半ばから書き始めて止まってたんですけど、今を逃したら本編で櫂くんのキャラが大変なことになりそう(元気になる的な意味で)なので頑張っちゃ…った…orz
もうこれ完全に胸焼け注意\(^o^)/
時系列は二人が高校1年終わりの春休みぐらいイメージで、櫂がだいぶ砕けてます。あと櫂くんは一人暮らしだと決めつけた設定使ってます(笑)三和くんの思考回路が乙女。
某所でとある方と盛り上がった櫂三和遊園地妄想を元にしております…と言いつつ会話の1割ぐらいしか活かせてないですが…(遠い目)
なにげに10月半ばから書き始めて止まってたんですけど、今を逃したら本編で櫂くんのキャラが大変なことになりそう(元気になる的な意味で)なので頑張っちゃ…った…orz
からんからーん、と、安っぽい鐘の音が鳴るのを聞きながら、三和はいたく感心していた。
「当たーりー!」
賑わっているというほどでもない商店街だが、まばらに拍手の音が聞こえたりする。
「お前、引きいいのってトリガーだけじゃないんだな……」
「たまたまだ」
季節は春休み、商店街で福引きなんぞをすることになったのは、別に母親にお遣いを頼まれたからとかそういうことではない。櫂の買い出しにつきあっていたからだ。とある事情で、櫂はマンションで一人暮らしをしている。福引き券がきっちりたまる程度には、櫂はこの商店街の常連だった。
「おめでとう!一等は遊園地ペアチケットだよ」
にこにことした顔で、福引きを受け付けているおやじさんが景品を櫂へと差し出してくる。
「兄ちゃん達、二人で遊びに行ったらどうだい?ああ、それとも彼女と行くかな。当てたのは一人だもんなぁ」
豪快に笑うおやじさんに、三和は愛想笑いを浮かべつつ内心で動揺する。
(これ俺なら反応しづれぇ……)
話しかけられている当の櫂を見やれば、いつものクールな表情のままだ。普段無口な奴はこういう時困らなくていいなと、あまり汎用性の無さそうな利点を発見する。
チケットを黙って受け取った櫂に気分を害するでもなく、おやじさんはまた豪快に笑った。
「また来なよ!」
櫂は声を出す代わりに、ひとつ頷いて答えた。カードキャピタルで会うときにはまったく考えられないことだが、この商店街で櫂は年配の方々から「人見知りの無口な高校生」扱いをされているらしい。接する状況が違うとそんなこともあるのかと、認識のズレに驚いたものだった。
「……で、どーすんだ?そのチケット」
櫂のマンションへの帰り道、そわそわとした気分を隠しながら三和は尋ねた。
その内心を知ってか知らずか、櫂は顔色一つ変えることなくこう返してくる。
「一緒に行けばいいだろう」
櫂が遊園地に行くというイメージが湧かなかったせいで、期待していなかったセリフだった。
「マジで?」
「こんなところで嘘をついてどうする」
「いや嘘とは思わねーけど」
「他にアテも無い。お前が行かないなら誰かにやるぞ」
「いや行かねぇとも言ってねーって!!」
思わず全力で否定してしまう。その様子を見て、櫂がかすかに笑った。
「なら、決まりだな」
必死過ぎるのがおかしかったようにも見えるけれど、ほっとしたのかとも思えるような笑顔だった。櫂が人見知り扱いされているのを意識したせいもあるのか、どうも結論を出すのに迷う。
しかもさらっと流してしまったけれど、櫂は確かに「三和が行かないなら行かない」という趣旨の発言をしていたわけで。
それってひょっとしなくてもデートですか?と口にする勇気は、三和にはとうとう持てなかった。
* * *
約束の日、待ち合わせをするのもまどろっこしく、三和は自宅まで櫂を迎えに来ていた。
いつぞやの合宿の頃はまだ自宅を教えてもらえず、待ち合わせ場所に櫂が現れるまで実は相当やきもきしたのだけれど(櫂はほぼ時間通りに現われたが)、今はそんな必要もなくて気が軽い。同時に、どれだけはしゃいでいるんだと思ったりもするけれど。
櫂と一緒にいる時間は、決して少なくはない。この間の買い出しがいい例だ。それが友達だからではなくなったのは、そんなに前のことではなくて。
とどのつまり、なんとなく一緒にいるわけではないデートらしいデートというのは、これが初めてだった。
(あいつ、その辺どこまで意識してるんだろ)
少なくとも、意識していなければこの間の誘い方は無かった気はする。でなければ、いらないからお前の好きにしろと、チケットの行方を三和に丸投げした可能性が高い――そこまで考えたあたりで妙にこそばゆくなってきて、三和は考えるのをやめた。
インターホンを押すと、すぐに電波でくぐもった櫂の声が答えた。
『今行く』
言葉通り、しばらく待つと開いた玄関から、見慣れた服装の櫂が姿を現す。
見た目がいつもと変わらないのは三和も同じである。今さらそういうところを意識するのも気恥ずかしいというのが三和の理由ではあったが、櫂はどうなのだろう。
「よ、よう」
「ああ」
地味にどもってしまった三和とは裏腹に、櫂はいたって平淡に答えた。
櫂は今日のこれをどう思っているのだろう。
その謎が案外早く判明することになろうとは、このときの三和は考えていなかった。
* * *
「さーってっと、どこから回る?」
太陽の照りつける青空の下、広々としたエントランスで三和は櫂に尋ねた。超有名というほどでもない遊園地は、家族連れその他でほどよく賑わっている。
最初はどうなることかと思っていたが、遊園地に着くまでのいたっていつも通りの雑談のお陰で、三和のテンションは通常運転にまで復帰していた。
「さぁな」
「やる気ねぇなオイ」
もちろんそれは、櫂がいつも通りだからなのだが。
間髪入れないツッコミにもまったく動じず、櫂はさらりと返す。
「お前の好きにしろ。何なら端から全部でも構わん」
「そりゃまた豪快な意見で」
櫂が当てたのは一日パスポートなので、時間が許す限り乗り放題ではある。
それを差し引いてもなんだか色んな意味で凄い発言だったような気がするのだが、ここで立ち止まるのはよそうと、三和はその案に乗ることにした。
「んじゃ、迷ってる時間もったいねーし、その辺から乗ってくか」
歩きだして、ぺらりとパンフレットを開いたはいいのだが。
「……って、一番手近なのはメリーゴーランドだな」
園内マップから目を上げてみれば、ファンシーな曲に合わせてがちゃがちゃと回る回転木馬は、既に前方十メートルも無い距離で視界に入っていた。
その前にたどり着いて、二人してそれを見上げてみる。
「………」
どこの遊園地にでもあるだろう、いたって普通のメリーゴーランド。
やたらと光る電飾だとか、白やピンクのデコレーションだとかが嫌いだとは言わないけれど。
むしろ普通に遊びに来ていれば、ネタになるとか言って乗るような気もするのだけれど。
「……さすがにやめとく?」
冷や汗つきの笑顔でそう尋ねると、櫂はしばらく考えた後、おもむろに三和の手を引いてメリーゴーランドへと向かい出した。
「え、お、おい?」
戸惑う三和に、櫂はざっくりと告げる。
「逃げるのは好かん」
「いやここそういうシーンじゃなくね!?」
三和のツッコミも空しく、櫂はずんずんと進んで三和ごと受付をパスしてしまう。オペレーターのお姉さんがその図にウケていた気がするが、気のせいだと思いたい。(ドン引きされるよりはマシだが)
「白馬は無理、白馬は無理、白馬は無理」
呪文のように主張すると、じゃあ馬車だなと、櫂はさっさと選んで御者席に座ってしまう。当然、三和も隣に座らざるを得ない。なんだか左後方斜め上の馬上から、少女の不思議そうな視線を感じる。
「マジはずい……」
「座ってるだけだろ」
「お前の神経どうなってんの!?」
「気にしすぎなんだ、お前は」
いや間違いなくそっちが普通じゃない。メリーゴーランドなんて男子高校生というだけでもアウトに近いのに、二人で馬車。わりと堂々と手をつないで、二人で馬車。顔を真っ赤にして三和がいたたまれなくしていると、櫂が言った。
「嫌なら罰ゲームだとでも思ってろ。たいした違いじゃないだろ」
確かに完全に罰ゲームだ。何の罰かは知らないが。しかし言葉とは裏腹に握りなおされた手のひらが、それとはだいぶ違う感情を訴えている。つないだ手とは逆方向にそっぽを向いた顔は、適当に不機嫌そうな顔をしていることだろう。
「……お前ってほんと、素直じゃないと言うか素直すぎると言うか……」
「何か言ったか?」
「いんや何も」
三和は三和で顔を上げる勇気は出ず、メリーゴーランドが回っている間、ひたすら上下する足場を眺めていた。
* * *
「一発目からレベル高すぎんだろ……」
全く体力を使わないアトラクションにも関わらず、あまりの精神疲労に三和は早くも休憩を要求した。
ベンチにへたりこんでいると、櫂がジュースを買ってきてくれる。
「さんきゅ」
三和がそれを受け取ると、櫂はその隣に座った。
ストローを吸い上がる液体の冷たさが心地良い。
喉を潤して一息ついていると、それを待っていたのか櫂が口を開いた。
「落ち着いたら次に行くぞ」
「容赦ねぇな」
文句というほどでもなくそう返すと、櫂はにやりと笑って言った。
「全制覇するんだろう?そんなに余裕は無さそうだがな」
それは普段を髣髴とさせる不敵な笑みだった。けれどさっきまでの雰囲気は確かに残っていて、どことなく柔らかな印象になっている。
「あれ本気だったのか……」
その笑顔につられるように、三和も笑った。
「当然だ」
本当にこいつはナメてはいけない。正直予想以上に心躍っている自分に気づいて、三和はそんなことを思った。
* * *
そこからはとりあえず全力で遊んだ。
まずコーヒーカップ。もちろんこれは持てる力を振り絞ってカップを回す。ちょっと酔いそうだった。
空中ブランコは文字通り座っているだけなので問題なし。どちらも高所恐怖症ということはなかった。
お昼は園内で普通に買ったホットドッグと特大サイズのポップコーンを二人で食べた。
ジェットコースターは激しいアップダウンが効いたのか、今度は櫂がへばってしまったので、お返しとばかりに三和がジュースを買ってきた。
ちなみに似たようなアトラクションは他にもあったけれど、当然櫂は全部チャレンジした。三和が「無理すんなよ?」とやや本気で心配して言うと、櫂は「無理じゃない」と答えたけれど、あまり信じられなかったのでコースター系を無事に制覇しきったときには正直ほっとした。
お化け屋敷はモーションフィギュアシステムにも使われているような立体映像タイプで、苦手な三和は多少怯みながらも、ここまで来て自分も逃げられないと腹を括った。驚くたびに櫂にしがみつく三和に、櫂はわりとまんざらでも無さそうな顔をしていた。
* * *
「……で、残るは観覧車と」
とっぷりと日の暮れた中、二人はとうとう最後のアトラクションへとたどり着いていた。
既に園内も夜間用のライトアップに照らされていて、上空のゴンドラからは夜景が一望できるだろうことは想像に難くない。
「最後にこれとか、ムードありすぎんだろ」
苦笑した三和を見つめて、櫂が言った。
「……やめておくか?」
何故だか最後の最後で譲歩しようとする櫂に、三和はもうひとつ苦笑する。
多分、一日中振り回してしまったとでも思っているのだろう。
派手に我を通す割には打ち解けた人間に気を遣う櫂は、なるほど人見知りなのかもしれない。普通は逆だと思うけれど。
最初に櫂がやったように、その手を取って笑った。
「最初にメリーゴーランドクリアしちまったから、もう怖いもんナシだよ」
* * *
「楽しかったな」
「……ああ」
「お前があんなはりきると思わなかったけど」
「………」
「あ、悪い意味じゃねーぞ?」
「分かってる」
「……またこんな感じで、二人でどっか行こうか」
「……そうだな」
「どこがいい?」
「………」
「………」
「…………お前と一緒なら、どこでもいい」
そうして二人、約束のような口づけを交わした。
fin.
++++++
切ないシリアス系と赤面するほど甘いの書くのが好きという自覚はあったんですが、櫂三和でこの胸焼けする甘さはもしかしなくても初めてですよね…。だって櫂くんが!!櫂くんが全制覇とか言い出すから!!遊園地のマップググったらわりとメリーゴーランドって入り口付近にあるもんだから!!
櫂くんの思考回路に書いてて戦慄した。
最後の会話に地の文が無いのは仕様です。シチュエーションお好きに妄想してください\(^o^)/
「当たーりー!」
賑わっているというほどでもない商店街だが、まばらに拍手の音が聞こえたりする。
「お前、引きいいのってトリガーだけじゃないんだな……」
「たまたまだ」
季節は春休み、商店街で福引きなんぞをすることになったのは、別に母親にお遣いを頼まれたからとかそういうことではない。櫂の買い出しにつきあっていたからだ。とある事情で、櫂はマンションで一人暮らしをしている。福引き券がきっちりたまる程度には、櫂はこの商店街の常連だった。
「おめでとう!一等は遊園地ペアチケットだよ」
にこにことした顔で、福引きを受け付けているおやじさんが景品を櫂へと差し出してくる。
「兄ちゃん達、二人で遊びに行ったらどうだい?ああ、それとも彼女と行くかな。当てたのは一人だもんなぁ」
豪快に笑うおやじさんに、三和は愛想笑いを浮かべつつ内心で動揺する。
(これ俺なら反応しづれぇ……)
話しかけられている当の櫂を見やれば、いつものクールな表情のままだ。普段無口な奴はこういう時困らなくていいなと、あまり汎用性の無さそうな利点を発見する。
チケットを黙って受け取った櫂に気分を害するでもなく、おやじさんはまた豪快に笑った。
「また来なよ!」
櫂は声を出す代わりに、ひとつ頷いて答えた。カードキャピタルで会うときにはまったく考えられないことだが、この商店街で櫂は年配の方々から「人見知りの無口な高校生」扱いをされているらしい。接する状況が違うとそんなこともあるのかと、認識のズレに驚いたものだった。
「……で、どーすんだ?そのチケット」
櫂のマンションへの帰り道、そわそわとした気分を隠しながら三和は尋ねた。
その内心を知ってか知らずか、櫂は顔色一つ変えることなくこう返してくる。
「一緒に行けばいいだろう」
櫂が遊園地に行くというイメージが湧かなかったせいで、期待していなかったセリフだった。
「マジで?」
「こんなところで嘘をついてどうする」
「いや嘘とは思わねーけど」
「他にアテも無い。お前が行かないなら誰かにやるぞ」
「いや行かねぇとも言ってねーって!!」
思わず全力で否定してしまう。その様子を見て、櫂がかすかに笑った。
「なら、決まりだな」
必死過ぎるのがおかしかったようにも見えるけれど、ほっとしたのかとも思えるような笑顔だった。櫂が人見知り扱いされているのを意識したせいもあるのか、どうも結論を出すのに迷う。
しかもさらっと流してしまったけれど、櫂は確かに「三和が行かないなら行かない」という趣旨の発言をしていたわけで。
それってひょっとしなくてもデートですか?と口にする勇気は、三和にはとうとう持てなかった。
* * *
約束の日、待ち合わせをするのもまどろっこしく、三和は自宅まで櫂を迎えに来ていた。
いつぞやの合宿の頃はまだ自宅を教えてもらえず、待ち合わせ場所に櫂が現れるまで実は相当やきもきしたのだけれど(櫂はほぼ時間通りに現われたが)、今はそんな必要もなくて気が軽い。同時に、どれだけはしゃいでいるんだと思ったりもするけれど。
櫂と一緒にいる時間は、決して少なくはない。この間の買い出しがいい例だ。それが友達だからではなくなったのは、そんなに前のことではなくて。
とどのつまり、なんとなく一緒にいるわけではないデートらしいデートというのは、これが初めてだった。
(あいつ、その辺どこまで意識してるんだろ)
少なくとも、意識していなければこの間の誘い方は無かった気はする。でなければ、いらないからお前の好きにしろと、チケットの行方を三和に丸投げした可能性が高い――そこまで考えたあたりで妙にこそばゆくなってきて、三和は考えるのをやめた。
インターホンを押すと、すぐに電波でくぐもった櫂の声が答えた。
『今行く』
言葉通り、しばらく待つと開いた玄関から、見慣れた服装の櫂が姿を現す。
見た目がいつもと変わらないのは三和も同じである。今さらそういうところを意識するのも気恥ずかしいというのが三和の理由ではあったが、櫂はどうなのだろう。
「よ、よう」
「ああ」
地味にどもってしまった三和とは裏腹に、櫂はいたって平淡に答えた。
櫂は今日のこれをどう思っているのだろう。
その謎が案外早く判明することになろうとは、このときの三和は考えていなかった。
* * *
「さーってっと、どこから回る?」
太陽の照りつける青空の下、広々としたエントランスで三和は櫂に尋ねた。超有名というほどでもない遊園地は、家族連れその他でほどよく賑わっている。
最初はどうなることかと思っていたが、遊園地に着くまでのいたっていつも通りの雑談のお陰で、三和のテンションは通常運転にまで復帰していた。
「さぁな」
「やる気ねぇなオイ」
もちろんそれは、櫂がいつも通りだからなのだが。
間髪入れないツッコミにもまったく動じず、櫂はさらりと返す。
「お前の好きにしろ。何なら端から全部でも構わん」
「そりゃまた豪快な意見で」
櫂が当てたのは一日パスポートなので、時間が許す限り乗り放題ではある。
それを差し引いてもなんだか色んな意味で凄い発言だったような気がするのだが、ここで立ち止まるのはよそうと、三和はその案に乗ることにした。
「んじゃ、迷ってる時間もったいねーし、その辺から乗ってくか」
歩きだして、ぺらりとパンフレットを開いたはいいのだが。
「……って、一番手近なのはメリーゴーランドだな」
園内マップから目を上げてみれば、ファンシーな曲に合わせてがちゃがちゃと回る回転木馬は、既に前方十メートルも無い距離で視界に入っていた。
その前にたどり着いて、二人してそれを見上げてみる。
「………」
どこの遊園地にでもあるだろう、いたって普通のメリーゴーランド。
やたらと光る電飾だとか、白やピンクのデコレーションだとかが嫌いだとは言わないけれど。
むしろ普通に遊びに来ていれば、ネタになるとか言って乗るような気もするのだけれど。
「……さすがにやめとく?」
冷や汗つきの笑顔でそう尋ねると、櫂はしばらく考えた後、おもむろに三和の手を引いてメリーゴーランドへと向かい出した。
「え、お、おい?」
戸惑う三和に、櫂はざっくりと告げる。
「逃げるのは好かん」
「いやここそういうシーンじゃなくね!?」
三和のツッコミも空しく、櫂はずんずんと進んで三和ごと受付をパスしてしまう。オペレーターのお姉さんがその図にウケていた気がするが、気のせいだと思いたい。(ドン引きされるよりはマシだが)
「白馬は無理、白馬は無理、白馬は無理」
呪文のように主張すると、じゃあ馬車だなと、櫂はさっさと選んで御者席に座ってしまう。当然、三和も隣に座らざるを得ない。なんだか左後方斜め上の馬上から、少女の不思議そうな視線を感じる。
「マジはずい……」
「座ってるだけだろ」
「お前の神経どうなってんの!?」
「気にしすぎなんだ、お前は」
いや間違いなくそっちが普通じゃない。メリーゴーランドなんて男子高校生というだけでもアウトに近いのに、二人で馬車。わりと堂々と手をつないで、二人で馬車。顔を真っ赤にして三和がいたたまれなくしていると、櫂が言った。
「嫌なら罰ゲームだとでも思ってろ。たいした違いじゃないだろ」
確かに完全に罰ゲームだ。何の罰かは知らないが。しかし言葉とは裏腹に握りなおされた手のひらが、それとはだいぶ違う感情を訴えている。つないだ手とは逆方向にそっぽを向いた顔は、適当に不機嫌そうな顔をしていることだろう。
「……お前ってほんと、素直じゃないと言うか素直すぎると言うか……」
「何か言ったか?」
「いんや何も」
三和は三和で顔を上げる勇気は出ず、メリーゴーランドが回っている間、ひたすら上下する足場を眺めていた。
* * *
「一発目からレベル高すぎんだろ……」
全く体力を使わないアトラクションにも関わらず、あまりの精神疲労に三和は早くも休憩を要求した。
ベンチにへたりこんでいると、櫂がジュースを買ってきてくれる。
「さんきゅ」
三和がそれを受け取ると、櫂はその隣に座った。
ストローを吸い上がる液体の冷たさが心地良い。
喉を潤して一息ついていると、それを待っていたのか櫂が口を開いた。
「落ち着いたら次に行くぞ」
「容赦ねぇな」
文句というほどでもなくそう返すと、櫂はにやりと笑って言った。
「全制覇するんだろう?そんなに余裕は無さそうだがな」
それは普段を髣髴とさせる不敵な笑みだった。けれどさっきまでの雰囲気は確かに残っていて、どことなく柔らかな印象になっている。
「あれ本気だったのか……」
その笑顔につられるように、三和も笑った。
「当然だ」
本当にこいつはナメてはいけない。正直予想以上に心躍っている自分に気づいて、三和はそんなことを思った。
* * *
そこからはとりあえず全力で遊んだ。
まずコーヒーカップ。もちろんこれは持てる力を振り絞ってカップを回す。ちょっと酔いそうだった。
空中ブランコは文字通り座っているだけなので問題なし。どちらも高所恐怖症ということはなかった。
お昼は園内で普通に買ったホットドッグと特大サイズのポップコーンを二人で食べた。
ジェットコースターは激しいアップダウンが効いたのか、今度は櫂がへばってしまったので、お返しとばかりに三和がジュースを買ってきた。
ちなみに似たようなアトラクションは他にもあったけれど、当然櫂は全部チャレンジした。三和が「無理すんなよ?」とやや本気で心配して言うと、櫂は「無理じゃない」と答えたけれど、あまり信じられなかったのでコースター系を無事に制覇しきったときには正直ほっとした。
お化け屋敷はモーションフィギュアシステムにも使われているような立体映像タイプで、苦手な三和は多少怯みながらも、ここまで来て自分も逃げられないと腹を括った。驚くたびに櫂にしがみつく三和に、櫂はわりとまんざらでも無さそうな顔をしていた。
* * *
「……で、残るは観覧車と」
とっぷりと日の暮れた中、二人はとうとう最後のアトラクションへとたどり着いていた。
既に園内も夜間用のライトアップに照らされていて、上空のゴンドラからは夜景が一望できるだろうことは想像に難くない。
「最後にこれとか、ムードありすぎんだろ」
苦笑した三和を見つめて、櫂が言った。
「……やめておくか?」
何故だか最後の最後で譲歩しようとする櫂に、三和はもうひとつ苦笑する。
多分、一日中振り回してしまったとでも思っているのだろう。
派手に我を通す割には打ち解けた人間に気を遣う櫂は、なるほど人見知りなのかもしれない。普通は逆だと思うけれど。
最初に櫂がやったように、その手を取って笑った。
「最初にメリーゴーランドクリアしちまったから、もう怖いもんナシだよ」
* * *
「楽しかったな」
「……ああ」
「お前があんなはりきると思わなかったけど」
「………」
「あ、悪い意味じゃねーぞ?」
「分かってる」
「……またこんな感じで、二人でどっか行こうか」
「……そうだな」
「どこがいい?」
「………」
「………」
「…………お前と一緒なら、どこでもいい」
そうして二人、約束のような口づけを交わした。
fin.
++++++
切ないシリアス系と赤面するほど甘いの書くのが好きという自覚はあったんですが、櫂三和でこの胸焼けする甘さはもしかしなくても初めてですよね…。だって櫂くんが!!櫂くんが全制覇とか言い出すから!!遊園地のマップググったらわりとメリーゴーランドって入り口付近にあるもんだから!!
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