リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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多分50~51・52話の間。屋上から飛び降りそうな櫂の夢とかいう物騒なものを見た三和くんが櫂くんに―?な話。
櫂レン櫂アイが十ユベなら櫂三和はアモエコっぽいなぁと思ってアモエコオマージュしてみた…のですが、アモエコのバッドエンドを回避しようとすると結局十ユベなオチになりました。よく考えて見ればエコーの闇は十代幼少期のユベルと同じパターンなわけで、アモエコってまんま十ユベの闇だったんだなぁと思ったり…。
あ、アモエコは男女ですが、これの中身は100%友情ですよ!(笑)
三和くんマジ櫂の2P。そして櫂は重度のファザコンマザコンだと信じてる。

 かみさまのこどもたち


 ぎぃ、と、軋んだ音を立てながら錆付いたドアを開けると、真っ青な空が視界に飛び込んできた。
 ここは多分学校の屋上。海に臨(のぞ)む岬のように、まっすぐに伸びた四角いコンクリートが、青の中に突き出ている。その一番遠い先、青い空を灰色で切り取る境界線の上に、後姿の櫂が立っていた。
 どうしてこの屋上にはフェンスが無いのだろう。櫂の顔なんて少しも見えないのに、それが遠く青い空の向こうを、見つめているだろうことだけは分かる。
 佇んだままの背中は、どこにも寄る辺のない櫂の身の上を物語る。
(行きたいのか、そっちへ)
「……三和、何故止めない」
 俺が来たことに気づいていたのだろう。振り向きもしないままで櫂はそう言った。
 そんな風に俺に聞くお前を、どうして止められるだろう。
「迷ってる時点で、お前には無理だろ。そこまで自己中になれねーもん」
 淡々と告げた俺の言葉を受け止めて、櫂がどんな顔をしていたのかは分からない。けれど、諦めたように振り向いた俯きがちな視線に、推して知れようというものだった。
 翳った表情のまま、まっすぐに歩いてきた櫂と、無言ですれ違う。櫂は俺の背後で開きっぱなしのドアから、校内へと消えていった。
 その場に取り残された俺は、やるせない思いに囚われたまま、灰色の足元を睨みつけていた。
 
 * * *
 
 がたりと、一段落ちるような感覚で俺は目を覚ました。
 カーテンの向こうから日差しが差し込んでいる。もう夜が明けきっているのは明白で、ここで二度寝でもすれば確実に遅刻コースだろう。
 起きて支度をしなければと思いつつ、さっきまでの光景を反芻して呻いた。
「……なんつー夢だ……」
 
 * * *
 
 夢の中と同じ色で晴れ渡る空の下を、学校へ向かっていつも通り一人で歩く。途中で遭遇すれば声をかけたい相手はいるが、今日に限ってはできれば会いたくなかった。
 今朝見てしまった櫂の夢。普段そんなに意識していたわけではない。けれど、小学生の頃に櫂が転校していったときから、そして高校で櫂に再会してから、もやもやと感じていたこと。それが全部形になったような夢だった。勝手なイメージのはずなのに、何故か間違っている気はしなかった。
 けれどまだ、結論が出ていない。ずっとやり場の無かった思い。俺が睨みつけたかったのは――
 
(行くな)
 
(言えない)
 
(あいつは行きたいのに)
 
(言わなくても)
 
(あいつは行けないのに)
 
(これ以上あいつを呼ぶな)
 
(呼ぶのなら)
 
 
(なんで)
 
 
 * * *
 
「よお、やけに勉強熱心だな」
 そう櫂に声をかけたのは、結局放課後になってしまってからだった。既に教室に人影はまばらだったが、櫂は帰る気が無かったのか机の上に教科書とノートを広げている。宿題でもしているらしい。
「……珍しいな」
 手を止めて、顔をあげた櫂がこちらを見やる。いつもなら最低でも昼休みには顔を出している。それを指してのセリフなのは明白で、俺はにやにやとした笑みで櫂に問いかける。
「なんだ、寂しかったのか?」
 そう言いながら、空いてしまった櫂の前の席に腰掛けた。
「別に」
 目を逸らすように、櫂は手元のノートに視線を戻した。止まっていた手が筆記を再開する。
 そっけない櫂のポーカーフェイスは崩せない。かわいくねぇの、なんて言える気分ではない。この程度、寂しい内にも入らないのだろう――夢のせいで、今日の思考はどうにもネガティブだ。
 何の課題をしているのだろうとノートを覗き込んで、あーこれ俺も出てたなぁ、まだやってねーや、なんて言ったら、見てないで自分もやればどうだとか適当に相手をしてくれる。それ一緒にしようって誘ってる?言ってろ。
「なぁ、俺さ」
「なんだ」
「もしお前んとこのとーちゃんとかーちゃんに会えたら、言いたいことあんだよ」
「………」
 ぴたりと、ノートの上を走っていたシャーペンが止まった。
 やっぱり櫂にとって、この話題は地雷なのだろう。
 でも今は、それが正直腹立たしい。
「なんでお前みたいな奴、一人で置いてったんだって」
 どういう意味なのか我ながら曖昧な言葉だった。なんで死んだんだ、なんで櫂だけ残して死んだんだ。
 あっちにも行けず、こっちにも戻れず、境界線で迷う背中。櫂はこちらを、選んで戻ってきたわけじゃない。ただどうしようもなく、命の所在(ありか)に選ばされている。そんなイメージが打ち消せない。
 どうせなら、一緒に連れて行かれたほうが櫂は楽だったんじゃないか、なんて馬鹿なことさえ、考えてしまうから。
「言うだけじゃ気ぃすまねぇかな。ぶっちゃけぶん殴りたい」
 これが辿り着いた結論だ。
 俺はどうしようもなく、櫂の両親が許せない。
 だからもう、怒りのやり場は見つからない。
「………」
 とはいえそんなことを櫂の顔を見て言えたわけでは無論なく、俺は夢で足元を睨んだように、俯いて目の前の机なんか睨んでいた。
 同じく何も言わない櫂は、今何を思っているのだろう。そんなことを思いながら、俺はしかめっつらで黙りこむ。
 しんとした沈黙に、息が詰まりそうになる。
「………」
 こつんと、櫂の裏拳(うらこぶし)が軽く俺の額を叩いた。
 ぱちくりと目を瞬(しばたた)かせる。顔を上げると、真顔の櫂と目が合った。握られたままのそれなりに成長した拳とは裏腹に、なんだか幼児が真剣に怒っているような雰囲気だった。
 暫く無言で見つめ合う。
 不意に、瞳を伏せて櫂が拳をおろした。
「人の親を勝手に恨むな」
「けど」
 静かにたしなめた櫂に、考えるより先に否定が口をつく。
 勢いだけのその先を続けられないでいると、櫂が言った。
「……まぁ、少しすっきりはしたがな」
 ほんとに酷い親だよな、なんて頷くように。あっさりとしたその表情からは、なんの感情を読み取ることもできなかったけれど。
 俺に譲歩したとか、そんなんじゃない。そもそも櫂は、その手の譲歩をする奴じゃない。
 だから俺は、櫂の机に突っ伏してしまった。

(……なんで……逝っちまったんだよ、ばかやろう)

 本当に、どうして、こんな奴を置いていったのだろう。
 自分の気持ちに素直になれない不器用な櫂は、絶対そのせいで生まれたのに。好きなものに近づいていけない――それを甘えだと戒めすぎる、そんな櫂は。
 ただ好きだけでいさせてやればいいのに。そうしたら櫂は、きっともっとずっと、優しくて明るいままだったのに。
 今でももっと簡単に、笑えていたはずなのに。
「……俺、絶対お前より先に死なねーからな」
「馬鹿言え、お前より先にくたばってたまるか」
「……っ」
 ああもう、本当に。
 俺はどれだけ、こいつを舐めていたのだろうか。
 こいつはもうとっくに、生き抜く覚悟ぐらい決めているのに。
 癒されたのは俺のほう。浄化されたのは俺のほう。
 お前のその純粋さは、全てを失くしているからなのか――それとも、絶対に失くさない何かを、もう手にしているからなのか。
(もうこれ、俺が泣いてる場合じゃねーじゃん……)
 ごしごしと目をこすって、気合を入れて起き上がった。
 そして自分のカバンから、櫂のと同じ教科書とノートを取り出す。
「おい櫂、これ終わったらカードキャピタル行くからな」
「行けばいいだろ」
「てめ、分かってて言ってるだろ。お前も来るんだよ、当然だろ」
「……仕方ないな」
「口の減らねーやつだな、ったく」
 そう言って俺は苦笑した。
 そんなひねくれた言い方でも今はいいんだ。あの店に何があるのか、櫂は知ってる。あちらとこちらの境界線に立つ櫂を、期待と不安で呼び覚ます、未来の可能性。

 なぁ櫂、お前が「生きてて良かった」って、そう思える世界に俺はいるかな。
 いるといいな。
 お前は、俺にまた会えて嬉しかった?
 いつかそう聞いてみようか。お前がもう少し、簡単に笑えるようになったら。
 初めて知ったよ、俺も結構素直じゃないんだ。
 ひょっとしたら最期まで、言わないのかもしれないけど。
 
 生きててくれてありがとう、櫂。
 
 
 fin.


++++

こういう話題を扱うときにはそこそこ書いていいかどうか迷うほうなのですが、げんこつで三和くんこつんして真顔で怒ってる櫂くんが書きたくて実行しました(懺悔)
櫂くんは永遠の少年ですよね…。

前書きでも言ってますが、夢の内容は遊戯王GX117話「決戦!十代VSプロフェッサー・コブラ」で登場したアモンとエコーの過去のオマージュです。といっても、セリフオマージュはあるものの、十ユベオマージュ(主に155話)とも融合してるので展開は結構違いますが。
エコーはアモンを守る竜だったんだよね…。アモンはそれを知らなかったんだよね…。

+++


 リニアモーター
 
 
“もしお前んとこのとーちゃんとかーちゃんに会えたら、言いたいことあんだよ”
“なんでお前みたいな奴、一人で置いてったんだって”
“言うだけじゃ気がすまねぇかな、ぶっちゃけぶん殴りたい”
 
 三和がそう言ったとき、俺は素直に驚いた。
 ああ、そんな風に言えばよかったのか。
 そんな風に、言ってよかったんだと。
 
 けど三和、お前にそんな顔は似合わない。
 俺の代わりに怒ってくれなくていいんだ。
 ただこんな風に、少しだけ傍にいてくれたら。
 馬鹿みたいに頑なだって、いつもみたいに笑えばいい。
 そうすれば俺は、悪かったなと返すから。
 そうやってまた、少しずつ前へ進むから。
 
 お前がいてくれて、本当に――
 
 
 fin.
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