リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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52話見て時代は櫂カム!とか思って書き始めたのにうまくまとまらなくて櫂三和オチに変えようとして行き詰って放置していた新年会ネタを諦めて初期状態でさらしてみる。新年…。

 強化合宿と称した温泉旅行。どこから出てきた資金なのか店長のおごりで、チームQ4とその仲間達は、どこぞの旅館の一室を借りて新年会の最中だった。
「だからもう、泣くのはよせって言ってるだろう……?」
「は?」
 ぼーっとした顔でカムイの頭をなでつつ、櫂はそんなことを口走った。
 カムイが硬直している間にも、頭をなでる手は止まらない。
 焦点の合わない瞳が何を見ているのか、カムイには全く想像がつかない。
 心なしか櫂の表情は寂しそうで、調子を狂わされつつカムイはその手を払う。
「泣いてねーよ!」
 しかし櫂は全く聞こえていないらしく、そんな反応にはお構い無しでカムイをふわりと抱きしめてしまう。
「大丈夫だから……」
 当然カムイは櫂を振り払おうとしたのだが、妙に儚げなその風情とは裏腹に、体格差がありすぎてとてもではないがカムイはその腕に太刀打ちできない。
 ちらりと目をやった櫂の席には、甘酒の残った湯呑みが置いてある。せっかくの新年だし温まるからと、店長がやけに景気よく勧めていた姿が脳裏をよぎる。
「お前完全に酔ってるな!?離せ!はーなーせー!……うわっ」
 カムイを抱きしめたまま、櫂は眠ってしまったのか畳に倒れこんだ。
 倒れたお陰で櫂の腕はゆるんでいる――が。
 体を起こして、見下ろした櫂の安らかすぎる寝顔に毒気を抜かれて、カムイはぼやいた。
「なんなんだよ一体……」
 
 * * *
 
 
 両親が死んだと聞かされたとき、何が起こったのか意味が分からなくて、俺はただ茫然と立ちすくんだ。
 飾られた二人の遺影を見ても実感は湧かなくて、涙も出なかった。
 それ以来一度だって、泣いたことはないけれど。
 
 本当は、泣いたことがないなんて言えないのだろう。
 あの知らせを聞いたとき、俺のどこかで時間が止まった。
 そして心の中に生まれた、もう一人の自分。
 あの瞬間に立ち止まって、今も一人で泣いている少年。
 どうすればその涙を止められるのか、ずっと分からなかった。
 
 レン達といたときは少しだけ泣きやんでいたけれど、レンと最低な別れ方をしてまた泣き出して。
 アイチと会ってまた少し泣きやんで、レンが忘れられずに気づいたら甘えすぎて、同じことを繰り返してまた泣き出して。
 
 けれど今度こそ後悔したくないと、涙を堪えてアイチを止めたときに――守れたときに、やっと少しだけ分かった。
 
 抱きしめるだけでいいんだと。
 
 泣くのはもうよせ。大丈夫だから。俺はもう、一人じゃないから――
 
 
 * * *
 
 櫂に半ば抱きつかれたまま、途方にくれているカムイのところに、三和がやってくる。
「なんだ、珍しい組み合わせだな……って、櫂のやつ甘酒で酔いつぶれたのか?」
「三和、どうにかしてくれよこいつ。変なこと口走って絡んできてさぁ……」
「変なこと?」
「もう泣くなとか、大丈夫とか」
「……ふ~ん?」
 櫂の寝顔とカムイの顔を交互に見つめて、三和は面白そうに言った。
「お前ら、結構似てるよな」
「げ、ありえねー」
 心底嫌そうに言ったカムイに、三和は苦笑する。
「うーん、まぁ、仲良くしてやってくれよ」
「そりゃ、チームメイトだし、それなりには仲良くしてやってもいいけどさ……」
「ああ、それでいいからさ」
 そう言って、懐かしむような顔で、三和は眠ってしまっている櫂の隣に腰掛けた。
 その声の優しさの深さになんて、カムイは気づかない。
 それでいいんだろうと三和は思う。
 カムイはきっと、櫂が過ごせなかった、守られた少年時代そのものだから。
 両親を亡くして、守られることを知らずに過ごした四年間が、櫂の中に酷くアンバランスな強さと弱さを植えつけてしまったことに、三和は気づいていた。
 カムイの幸福な少年時代と共に過ごすこと――そこにアイチや三和自身まで含めた仲間達と一緒に、満ち足りた時を過ごすこと。
 それはきっと、櫂が運命に奪われた少年時代を取り戻せる方法なのだろう。
 そしてそれを取り戻してこそ、櫂の強さは本物になる。
 精一杯の意地を張って独り戦い続ける、危うい強さじゃなくて。
 本当に気高く揺るぎない、櫂の強さを見てみたい。
 その姿を見るためなら、三和は正直なんだってできそうな気がしていた。
(だから、今はもーちょい甘やかされちゃえよ、櫂)
 そんなことを思いながら、三和は眠っている櫂の隣に腰掛ける。
 言われなくても、櫂は本能では分かっていそうだけれど。
「これでも昔は、みんなのヒーローだったんだぜ?こいつ」
「昔なんか知らねーよ。俺が知ってるこいつは、強いのだけが取り得の偉そうで目障りなチームメイトだ」
「ははっ、そりゃそーだ」
 不遜なその態度だってそっくりだ――なんて言ったら、カムイはまた怒るのだろう。
 そういう対等なやりとりは櫂に任せて、自分は保護者に徹しよう。
 どうしようもない時間の分だけ、開いてしまった距離がある。
 櫂がアイチを待ってるみたいに。
 多分自分は、櫂を待っているのだ。


 fin.



寝ぼけってカムイくんなでなでぎゅーする櫂くんと、ちいさい泣いてる自分に優しくする櫂くんが書きたかった話だったのに、三和くんマジ保護者オチになってどうしようかと思ったっていう。

両親を失ったことで無意識レベルの「守られてる感覚」というか、要するに安心感を失くしてた櫂くんが、アイチくんの闇落ちを止めてそれをやや取り戻したような気がするわけで。それは櫂くんが自分で認めないままの望みに応えて強くなろうとしたアイチくんの闇落ちが、櫂くん自身に「強がることの弱さ」と「強がっても消せない弱さ」と「その弱さを守ろうとする意志」を全部まとめてつきつけたからなんだろうなーと。
アイチの闇落ちは櫂の強がりを砕いて、櫂が自分の弱さ…というか「親しい人と一緒にいたい気持ち」=「寂しさ」を、そう思うことが弱いんじゃなくて、それを認められないことが弱さなんだ、って思わせたような気がします。寂しくていいんだ、みたいな。
「寂しい」を認めるには、両親との死別は敷居が高すぎたんだと思います。そんなの認めたら生きていけないよ、みたいな。でも、「一緒にいたい」と「寂しい」を認めないとアイチは止められない。はやく同じ高みで戦いたいけど、寂しいからってアイチ急かしてたらアイチはアイチじゃなくなっちゃう。一緒にいたいから今はさよなら…。ああ、また泣いてまう…。
かくして櫂くんは「寂しさを受け容れる」強さを身に付けたわけです。アイチくんは待てばそのうち来てくれますし。ていうかそうでなくても友達だし。ファイターとしての距離と友達としての距離が同じじゃなくて別々に絡み合ってるからヴァンガの人間関係ややこしいんだ…。
そして一緒にいたいからレン様に挑戦したけど容赦なく振られるという。「寂しい」を認められないままなら、さらに腕を磨いて何度でも挑戦するかもしれない。でも、認められる今の櫂くんにはこれ以上挑戦する意味は無い。かくして、ループは起こらず物語は進化する。アイチと櫂の物語から、アイチとレンの物語へ。これを凄いと言わずに何を凄いと言えばいいのと小一時間…。
 
強くならないと生きていけないから強くなる、孤高っていうのは寂しがり屋の代名詞だと思うんだ。

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