のはずたったのに蓋を開けたら三和誕+エイプリルフールネタの櫂くんSS\(^o^)/
櫂くん三和くんをメインに、アイチくん森川くん井崎くんもいます。でもやっぱりメインは櫂くん三和くん(笑)もうびっくりするぐらい「櫂ファンの書く三和誕」ですよ…(遠い目)櫂くんに全力で夢見てみた。特にショタ(笑)
一期終了後、とくに大きな事件も起こらずに春が来てるパラレル時空のイメージです。アイチくんたちはきっと後江高校に進学が決まってる(笑)
それはまるで、奇跡のような
櫂と三和がカードキャピタルの店内に入ると、お馴染みのアイチ、森川、井崎の三人が何やら話しているようだった。櫂に気づいたアイチが、何故か驚いて立ち上がった。
「えっ、櫂くん!?」
そのまま駆け寄ってくると、アイチは必死の表情で櫂に問いかける。
「ほんとに櫂くん!?櫂くんだよね!?」
「あ、ああ」
若干気圧されつつ櫂が答えると、アイチはほっと安堵の息をついた。
「よかったぁ……」
「……っぶわっはははは!!!」
と、後ろのほうで、こらえきれなかったように森川たちが笑い出した。その声に振り向いて、アイチが叫ぶ。
「笑わないでよー!!」
「だ、だ、だっておま……っひひひっ」
笑いすぎてまともにしゃべれないらしく、森川が何を言おうとしたのかは分からなかった。
「……何があったんだ?」
「え、いや、その」
もじもじと赤面したアイチが、俯いたまま話す。
「森川くんが、櫂くんは本当はこの星の人じゃなくて、故郷の惑星クレイに帰っちゃったからもう会えないよって……」
ぶっ、と、櫂の隣で三和が吹き出した。おそらく月に帰っていくかぐや姫風の櫂でもイメージしたのだろう。
「……信じたのか?」
ろくなリアクションが取れない櫂の平坦な問いかけに、アイチは焦ったように弁解する。
「だ、だって櫂くんほんとに強いし!かっこいいし!PSYクオリアなんて力があるくらいだからそういうこともあるかもしれないって……」
理由の前半が適切かどうかはともかくとして、後半については頷けるような気がした。自分自身超常現象の証人ならば、そんな法螺話を信じそうにもなるだろう。
しかしはたと、櫂は一連の流れにデジャビュを感じる。いつかどこかで、これに似た何かがあったような――
「そういえば、お前今日誕生日か」
「ここでそう振るのかよ!?」
三和を振り向いて唐突に確認した櫂に、返答可能性は大きく二つあったはずなのだが、三和の反射神経はツッコミを選んだようだった。畳み掛けて再度引っ掛けようとしていると見られて当然のタイミングに、多分櫂は気づいていない。
「えっ、三和くん今日誕生日なの!?」
「さっきの今でその反応は俺はちょっと心配だぞ?」
「エイプリルフールは知ってるよ!でも櫂くんだし!!」
知っていてなおさっきの話を疑いきれなかったというのだからアイチのイメージ力は深刻である。今も櫂を信じきったその言葉に、櫂はふっと得意顔で笑う。
「人徳だな」
「まぁ間違っちゃいねぇけど」
裏を返せば空気が読めないということにもなりかねないが、櫂に――というかこの二人に、一般的な感覚は通じそうになかった。ある意味無敵なコンビになりつつあるなぁと三和は苦笑する。何かをやや踏み外している気もするが、一年前再会した頃、三和自身を含めほとんどすべての人に対して心を閉ざしていた櫂が、誰かと打ち解けていることが嬉しくないわけはない。アイチとのこんな関係も、この一年二人が地道に築いてきた信頼の成果だ。
気を取り直して、三和はいつもの調子で笑った。
「誕生日なのはほんとだよ。祝ってくれる?」
そんな三和に、アイチも笑顔で応じる。
「もちろんだよ!誕生日おめでとう!」
「ありがとな、アイチ」
「……くっくっくっくっく……いいことを聞いたぞ!」
と、そこでいつの間にやら笑い終えていた森川が含み笑いで参戦してくる。
周りは慣れたもので、いたって冷静にその続きを待っている。
いつもの星占いブックを片手に、びしぃっ!と森川が三和を指さした。
「三和ぁ!これで貴様の運命を暴き俺様に有利な日にファイトを申し込んでやろう!さーてっとお前の星座は……」
乙女チックに姑息な作戦を堂々と宣言し、星占いブックのページをめくった森川の顔が驚愕に染まった。
「ぬぁにー!?俺様と同じだから弱点を攻められないだと!?」
「ああ、お前もおひつじ座なんだ?ひょっとして誕生日もうすぐ?」
「はっ!?しまった、これでは逆に俺様の弱点がバレ……!?」
「へっへー、どうしよっかなー?」
動揺した森川の隙を見逃さず、本気ではないだろうノリで悪代官のような顔をする三和に、ああこいつ平常運転だなと櫂は思う。会話は会話で、なるほど星座が同じというのも分かる気がする当意即妙のやりとりだ。なんだかんだこの二人は呼吸が合うのだろう。
「森川くん誕生日もうすぐなのかな?」
「星占いがどうこうって教えてくれなかったけど、もう少しみたいだな」
「そっか、じゃあ結構早いんだ」
「そういうアイチはいつなんだ?」
「僕?六月六日だよ」
「え、じゃあ俺一番最後か?」
三和が森川を相手しているのをいいことに、井崎とアイチは平然と別の話題を展開していた。結構ドライな奴らだなと、暇になった櫂は一個下の少年たちを観察する。
と、そんな櫂をアイチが振り向いた。
「あ、櫂くんは誕生日いつなの?」
びくっ、と、かすかに動揺した櫂が硬直する。
「櫂くん?」
不思議そうに名前を読んだアイチから視線だけ外しつつ、あさっての方向を見つめたまま櫂が聞き返す。
「……知りたいか?」
「う、うん」
櫂の顔に心なしか浮かぶ冷や汗にアイチは気づいていない。櫂はおもむろにデッキを取り出した。なんだか微妙に目が据わっている。
「俺に勝ったら教えてやる」
「え!?えええと……分かった!」
予期せぬ展開に動じつつも、ほぼ迷いなく承諾してデッキを取りにいくアイチ。誕生日が知りたいからというより、櫂とファイトできるならなんでもいいのだろう。
一方その隣でも。
「ええい、やめだやめだ!今日の最強森川様に相手の運勢など関係ない!ここでたたき伏せてくれるわ、勝負だ三和!!」
「いいぜ、かかってこいよ!」
「「「「スタンドアップ!(ザ・)ヴァンガード!!」」」」
* * *
ファイトの結果は――まぁ、言わずもがなというところだ。
惜しい所までいったアイチだったが櫂に勝つまでには至らず、森川はいつもの自称最強デッキで奇跡のグレード3ライドを果たしたものの三和には勝てなかった。
「くっそぉぉぉ何故だ!何故同じ運勢のはずなのに勝てないんだー!!」
「はっはーなんでだろうなー?」
「も、もう一回いい?」
「ああ、いいだろう」
悔しがる森川と上機嫌の三和の隣で、櫂とアイチは二戦目を始めようとしている。
「お、なんだまたやるのか?今日はどうしたんだよ、櫂」
「別に」
一連のやりとりを聞いていない三和に、二人を観戦していた井崎が補足する。
「アイチが櫂の誕生日聞いたんだけど、あいつ、アイチが勝ったら教えてやるって言って教えてくれなくて」
「櫂の誕生日?それだったら――」
三和が言いかけた瞬間、櫂がきっ、と横目で三和を睨みつけた。
「……言ったら俺の命がなさそうだな。がんばれアイチ」
「うん!」
やや緊張した面持ちで頷いたアイチの気合は十分――とはいっても、真剣勝負のそれにしては雰囲気が楽しそうだった。櫂が誕生日を黙秘している理由はよく分からないが、さっき睨まれたのは単にこのファイトを邪魔されたくないからなのかもしれない。
「スタンドアップ!ヴァンガード!」
「スタンドアップ!ザ・ヴァンガード!」
二人のファイトが始まる。振り返ってみれば最初の頃、櫂はこんなファイトがしたいのに素直になれないばかりに、アイチを振り回しまくったのだ。その原因も解決した今では、この光景は平凡な日常としてあるけれど、それを思えば夢のような話だ。
自然、三和の口元には微笑みが浮かんでいた。
(よかったな、櫂)
* * *
「ソウルセイバー・ドラゴンで、ヴァンガードにアタック!」
「よっしゃあアイチ、最強グレード3の実力を見せてやれ!!」
アイチの応援にまわっている森川からヤジが飛んだ。隣の井崎も面白そうにファイトを眺めている。
「ノーガード!」
(……うん?)
櫂の側から観戦していた三和は、櫂の選択に違和感を持つ。櫂の手札にはシールド一万のカードが二枚。出し惜しみする場面には見えなかった。コストを溜めるにしても、ツインドライブ持ちのヴァンガードが相手ではリスクが高いような気がする。
(……そーいや誕生日聞かれて答えなかったって……)
櫂が本気で知られたくないのなら、ファイトに勝てば教えるとさえ言わないだろう。ファイトがしたいだけなら、ここでわざわざ捨て身の戦略を取る理由がわからない。
(……ああ、そういうこと)
ファイトをふっかけた理由に思い至って、三和はおかしそうに笑った。
(ったく、やっぱ変わんねぇなぁ)
そうこうしているうちに、櫂はアイチのターンを凌ぎきり、ファイトは最終局面に入る。
「ボーテックス・ドラゴンのメガブラスト!リアガードを三体退却!」
「くっ……」
「敵ヴァンガードをアタック!」
「ダメージチェック……トリガーなし、また負けちゃった……」
そこでぱちぱちと三和の拍手の音が響く。
「いやーでもアイチも強くなったよ、ほんと」
「三和くん」
「今度は俺とやらねえか?俺に勝っても櫂の誕生日教えてやるぜ」
「え?」
突然そんなことを言い出した三和に、当然櫂が難色を示す。
「勝手なことを言うな」
「お前もう二回やったじゃん。いいだろ?別に」
そう三和にウィンクされて、櫂は渋々といった顔でため息をついた。
「……好きにしろ」
「え、いいの!?」
「ああ」
「ただし、俺だって手加減しないぜ?気合入れてこいよ!」
「うん、負けないよ!」
これでアイチは三連戦、三和も今日二戦目だが、果たしてその結果やいかに。
「「スタンドアップ!ヴァンガード!」」
* * *
「いやー、なんか今日は楽しかったなー!」
カードキャピタルからの帰り道、そう言った三和は言葉通り楽しそうだった。
「誰が手加減しないって?」
ともすれば水を差しそうな櫂の声色も、慣れた三和にとってはなんの妨げにもならない。
「手加減なんかしてねーよ?ちょーっと冒険しただけじゃん、誰かさんと一緒でさ」
「何のことだ?」
三和曰くの“誰かさん”は澄ました顔でしらばっくれる。リスクが高い分攻撃力も高い作戦を使って、櫂は勝って三和は負けた。成功率で言えば櫂のほうは冒険とは言えないのかもしれないが、それを差し引いてもあえてリスクを取ったのは意図的なものだろう。
「誕生日は教えといたぜ、お前の代わりに」
感謝しろよーと言わんばかりの顔に、櫂は眉をひそめて返す。
「……お前、アイチに変なこと吹き込んでないだろうな」
「さぁ、どうかな?」
櫂のジト目も意に介さず、言いましたと言わんばかりの三和に仏頂面をする櫂だったが、あえて突っ込むことはしなかった。
三和の負けを見届けると同時に、櫂は席を立った。やっぱり聞かないほうがいいんじゃないかと焦るアイチに、三和はこう言った。
“知られたくないわけじゃねーって。照れくさいんだよ、多分な”
櫂の目の前で、アイチと三和は「おめでとう」「ありがとう」なんてやりとりをしたわけだが、あれがそのまま櫂にできるかというと間違いなく無理だろう。とはいえその程度の理由で教えないというのもどうかというのが、櫂がわざわざファイトをふっかけた理由だと三和は睨んでいた。
そっかぁ、と納得したようなアイチは、櫂くんに喜んでもらえるお祝いってどうしたらいいかな、なんて今から楽しそうに考えていた。三和が一枚噛ませろと言ったのは言うまでもない。
「そういえば……」
ふと、思い出したように三和が話題を変える。
「覚えてたんだな、俺の誕生日」
にやっ、と聞く三和は、何故櫂が三和の誕生日を思い出したのか気づいたのだろう。
「……ああいう趣味の悪い嘘をついたやつが他にもいたなと思っただけだ」
「アイチみたいに信じた純粋なやつもいたなぁ」
「うるさい」
どうしてこうひねくれたセリフで素直に返すのかと三和は笑う。そこが面白いからからかうんだと、櫂は知っているのだろうか。変わらずに友達をしてくれているくらいだから、案外気づいているのかもしれないが。
“櫂、実は俺、お前を守るためにやってきた天使なんだ。でもお前は強いから、俺がいなくても大丈夫だ。だから帰らなきゃいけなくなった”
できる限りの神妙な面持ちで言った三和に、櫂は低い声で答えた。
“……何言ってるんだ”
“うんやっぱ信じないよな”
“信じる信じないじゃないだろ、行くなよ!”
“……へ?”
見え透いた嘘を呆れられたのだと思った三和だったが、櫂の反応はその想定とはまったく真逆のものだった。
“帰らなきゃいけないってなんだよ、そんなの関係ないだろ!お前は俺と一緒にいたくないのかよ!?”
“え、いや、あの、櫂?”
“俺は……俺は、嫌だからな……っ”
しまいには泣き出してしまった櫂を宥めようと慌てて嘘だと言ったら、怒った櫂に三和は数日口をきいてもらえなかった。一応、本題だった誕生日を嘘だと思われないための前振りだったのだが、どうも内容が地雷だったらしい。それ以来、冗談の内容と相手は選ぼうと三和は心に固く誓った。
「まぁ、さすがに今は信じねぇだろ?」
フォローのつもりで言ったセリフに、櫂は答えなかった。代わりに三和を振り向きざま、べちっ、と平たいものでその額を叩いた。
「てっ!?」
すっ、と、それが三和に差し出される。
「……極限突破?」
三和を叩いたのはヴァンガードの最新ブースターパックだった。どうも三和とアイチが会話している間に購入していたらしい。
「やる」
「へ?ひょっとして誕生日プレゼント?」
櫂の表情はとてもプレゼントを贈る表情ではなかったが、三和は慣れたもので普通にそれを受け取る。
「好きにイメージしろ」
「わかったプレゼントな」
まだ何かもの言いたげにしていた櫂だったが、結局それを否定したりはしなかった。
受け取ったパックをもって、三和が嬉しそうに笑う。
「ありがとな!」
櫂はもう完全に答えてくれなかった。けれど、それでも並んで歩いてはくれている事実が、言外に照れているだけだと物語っていた。
じゃあな、また明日。そう言った三和に、櫂は一言「ああ」とだけ答えた。
その返事に満足して、三和は上機嫌で家へと帰って行った。
* * *
三和と別れて、一人で歩く道すがら。
“実は俺、お前を守るためにやってきた天使なんだ”
“さすがに今は信じねぇだろ?”
(……ある意味今のほうが信じそうだ、なんて口が裂けても言えない……)
信じられない程度に適当にムカつくところがあってよかった。
櫂は心からそう思った。
fin.
三和くん誕生日おめでとう!これからも櫂の2Pとして櫂をよろしく!(爆)
pixivからこのサイトにはリンク等を貼っていません。あんな大手SNSからこんなコアなサイトに直接飛べるようにする勇気無いです\(^o^)/
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