よもつひらさかをこえるまで（三和＆店長）

一期序盤の多分7～8話あたりで三和くんに突撃インタビューする店長（嘘）
３月頭くらいに書いたっぽいファイルが出てきて、ちょっともったいなかったので短いけどあげてみる。タイトルはほんとは櫂くんのSSとして考えてた時のものなんですが、代替案がうまいこと思いつかないのでそのまま。
店長は「店長」って書こうか「シン」って書こうか悩むことがありますが今回は店長で。店長はみんなのお父さん、シンさんはミサキさんのお父さん（笑）
マクシンは正直アリだと思います（爆）
シンさん高校生のときからミサキさんに人生捧げちゃってんのがこう。ミサキさんが独り立ちしちゃったらその後どうすんのシンさん、みたいな。ミサキさんに彼氏ができるだけでも大打撃だろシンさん…。

「櫂くん以外と、ファイトしないんですね」
　さらりと店長に指摘されて、三和は一瞬面食らった。三和が櫂以外とファイトしないのは意図的なものだ。自然に立ち回っているつもりだったけれど、さすがに一歩離れた場所から見ていて気づかないようなことでもないのだろう。
「……まーね」
　とはいえ、店長が何故そんなことを聞いてきたのか読めずに曖昧に頷くと、見透かしたように眼鏡がきらりと光る。
「遠慮することはないんじゃありませんか？君が誰とファイトしようと、君の自由でしょう」
　なんとも微妙な言い回しに、三和は渋い顔をする。
「あんたそれ、分かってて言ってるよな？」
「なんのことでしょう？」
　にこにことした顔は明らかにイエスの意を示していて、食えない人だと三和は思う。趣味の悪い言い回しだが、決して悪意から言っているのではない。そういうやり方で来られると気づかざるを得ないのだ。結局自分は、櫂と似たもの同士なんだよなと。
「……ファイトしないのだって自由だろ。今はまだ、あいつほっとけねーよ」
　観念したように、三和はそう返した。他人の手の平で踊るのは人並みに癪なのだが、意地を張るところでもなかった。櫂に加えて自分まで意地を張っていたら、それこそ救いようがない。
　それを聞いても店長が何も言わないのは、好きなだけ話していけということなのだろう。
「小学校のときは、あいついっつも本当に楽しそうにファイトしてたんだ。そんときからすげぇ強かったし、俺なんか何回負けたか分かんねーけど、それでヴァンガードや櫂を嫌いになったりはしなかった。あいつはヴァンガードが滅茶苦茶好きで、だから強いんだって分かってたから……一緒にヴァンガードできる仲間のことだって、あいつは大好きだったんだ」
　そこで一度、三和は言葉を切った。この店の人々が知らないだろう櫂の過去を、三和はひとつだけ知っている。それを櫂に無断で話すわけにはいかないし、それだけが全てでもなさそうだった。櫂がこの町を離れていた四年間に何があったのかは、三和だって知らないのだ。
「……今は違うように見えるけど、ほんとはあいつ、アイチと普通にファイトしたいんだと思うんだ。けど……なんか、簡単にできない理由があるんだ、多分。後ろ髪引かれてる、っていうかさ。……あいつほんとは、ここ以外にも居たい場所があるんだ」
　四年前に別れた時、ひどく儚げな雰囲気の櫂は、今にも消えてしまいそうだった。高校の入学式で再会して、最初に声をかけたら第一声は「俺に関わるな」だったけれど、それを聞いて三和はこう思ったくらいだ、「前より元気だ」と。
　だから遠慮無くつきまとって、今こんなポジションを手に入れているけれど。
「それがどこだとか、なんで居られないのかは知らねーけど……少なくとも櫂は、弱いから駄目だって思ってんじゃねーかな。あれだけ鬼強でそんなこと思うのって、けっこう信じらんねーけど」
　そこで一度言葉を切って、三和はしんみりとした空気をかき消す。
「ま、そんなわけだから、あいつがもーちょっと自信取り戻すまでは面倒見るさ。ほっといたら変な方向に暴走しそうだし」
「櫂くんのことばかりなんですね。君はそれでいいんですか？」
　澄ました顔でそう尋ねる店長に、三和は笑って言った。
「やっと相方が帰ってきたんだぜ？面白くなるのはこれからだろ」


　よもつひらさかをこえるまで


（黄泉路の逆走つきあってやるよ。道案内は任せとけ！）


　fin.





「さっさと黄泉路を逆走しやがれ！」はスパイラル・アライヴ屈指の名言だと思う。

49話の両親の棺を前になんとも言えずしょんぼりな櫂くんを見て以来、一期の櫂くんにはどうもこうにも黄泉帰りのイメージがある私です。生き返りたかったら地上に出るまでは決して振り向いてはいけません状態でいろんな懐かしいものに背を向けたまま黄泉路を全力疾走してるイメージ。
櫂くん（の心）が死んじゃったのは両親の死とレンとの訣別のせいだと思いますが、レン絡みのほうは完全に解決したけど両親のほうはどこまで解決してるんだろうな？っていうのはわりと謎だったりします。まだ櫂くんが完全には越えられないからこそ意図的にさらっとしか出してないように見える。
両親ネタに触れると主人公が完全に櫂くんになってしまうというか極論少女漫画になるので、どうも触れるつもりなさそうだと思ったり、いや5D'sのクラッシュタウン編やGXの異次元世界編が許されるなら３期でやれる（２期でやりそうな気がしない）と思ったり。それとも２期AC編のアイチサイドがクレイ編で櫂サイドが両親編になったりするんだろうか。それくらいのカオスは平気でやりそうだから困る…（笑）
同じく両親亡くしてるミサキさんが一期で完全に吹っ切れてるしな…。シンさんの存在もあるし、ミサキさんのほうが早くに亡くしてるっていうのもあるだろうけど。
うーん、やっぱり意図的に先延ばししてる気がする。まさかのあれだけの実力がありながらPSYクオリアに選ばれないのが両親と関わってるとかいう超展開クルー？…そういや一時期ミサキさんもPSYクオリア疑われてたな…ひょっとしてひょっとする…？