リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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櫂くん誕生日おめでとう!!!しかしこの完成度でごめんねええええ。・゚・(ノД`)・゚・。結局三日で…書いたよ…orz(追記:やや加筆修正しました)
一年365日夢中すぎて誕生日創作に向けるエネルギー残させてくれないなんて恐ろしい子…!
アイチ誕「
続・それはまるで、奇跡のような」の続きで、例によってパラレル時空です。今回はその影響がもろに出たオリジナル設定が採用されています。他にも裏設定あるけどあやふやだから省略。
しかしこのシリーズ、誰よりアイチくんが楽しそうで何よりです\(^o^)/

 奇跡のような日常世界


 じりじりと照りつける日差しが大地を灼き、立ち上る熱気が気温を上げる。窓を全開にしても室内を通る風は高が知れていて、確実に体力を奪われながら耐えるしかない。そんな苦行も残り僅かだ。しかし本当の苦難はこれからだと、櫂は教室前の時計を睨んだ。チャイムと同時に、教師が教科書を閉じる。
「じゃあ今日の授業はここまで。もうすぐ通常授業始まるんだから、そろそろ宿題は片付けとけよー」
 補習とは名ばかりの半日授業が終わった。櫂は素早く机の上を片づけ、カバンを片手に教室を飛び出る。しかし――
「……おっと、そうはさせないぜ」
 できれば一番会いたくなかった顔が、不敵に笑って行く手を阻む。
「何故、ここに……!」
「こんな暑い中お前らもやってらんねーだろって、話の分かる先生もいるもんだよなー」
「僕も似たようなものだけど、そんな逃げなくても……」
 三和に呆れつつ櫂を宥めるような笑顔にも、今の彼が敵だという事実は打ち消せない。ああ、バカ正直に最後まで受けるくらいだったら、はじめから早退でもなんでもすればよかった。
「つーわけで、俺達と一緒に来てもらうぜ」
「大丈夫だよ、櫂くんが思ってるほど怖くないから」
 アイチそれは脅し文句だ。ツッコミを声に出すことはできなかった。結局それが己の弱さなのだろうと、内心歯噛みしてもどうしようもない。
「誕生日おめでとう、櫂くん」
「楽しい誕生日にしようぜ?」
 このフレーズはこんなにも威圧的に響くものだったろうか。久しぶり過ぎて忘れているだけだろうか。足止めを強行突破できなかった自分にため息をついて、櫂は言った。
「……言葉通りなら、いいがな」
 ほっとしたように笑った二人には、今は気づかないふりをした。

 * * *

 とりあえず腹ごしらえだと入ったヴァンガードカフェで、三人は普通に昼食をとった。何か仕掛けてきやしないかとやや警戒していた櫂だったが、あからさますぎるせいもあるのか特にそんなことはなかった。二人に案内されるまま、真上から降り注ぐ日差しを遮るには少々頼りない街路樹の木陰を歩く。
「それで、今日はどこへ行くんだ」
「あれ、なんかえらく素直になってんな?」
「もう遅いだろ、色々」
 これ以上ジタバタするのはさすがに見苦しいと、観念した櫂はほぼ開き直っていた。
「三和くん、言ってもいいかな?」
「ああ、いんじゃね」
 三和がアイチに自分の誕生日を教えたことは知っていたし、今日二人が何か仕掛けてくるんじゃないかと思ってはいた。だが一体どこで打ち合わせをしていたのか、改めて何も知らないなとぼんやり思う。
「カードショップ男前。カムイくんのところに行こうと思って」
 なかなか意表をつく目的地だった。
「櫂くんはいつも色んなショップに行ってるみたいだけど、男前にはあんまり行ってないみたいだから、皆で行くのもいいかなって」
「俺はもっとこー、カードキャピタルに人呼んでぱーっと皆で食べるようなのをやろうと思ったんだけどさぁ」
 万が一でもそういうのをやられたら嫌だなというのが、最初に櫂が逃げようとした理由だった。
「櫂くんそういうの苦手そうだから、違うのにしようって」
「アイチ……」
 つまり三和の企みを阻止してくれたのはアイチということなのだろう。櫂はアイチの肩をがしっとつかみ、真剣な表情で言った。
「よくやった!」
「え、そ、そんなに?」
 櫂の迫力に押されてどもるアイチ。
「えー?やっぱせっかくの特別な日なんだし、どーんと派手にいってもいいじゃん」
「派手なイヤガラセはお断りだ」
「イヤガラセなんかじゃねーって、あれだよあれ、愛情表現」
「なおさらお断りだ」
「またまたー」
 そんな調子で歩みを再開した二人に遅れること数秒、呆気にとられていたアイチは慌てて後を追った。

 * * *

 カムイは今、チーム男前に所属している。チームQ4で全国優勝したから、次はチーム男前でというのがその理由だった。しかして今年の夏のチャンピオンシップ地区大会はといえば。

“アイチお兄さんと櫂は分かるけど……お前かよ!?”
“ねーちゃん今年も午前中は来れないって言うからさ。でもねーちゃんの代打って言うより、どっちかってーとお前の代打だよ”
“?……どういう意味だ??”
“さーね”

 笑ってはぐらかした三和の意図は、すぐに判明することになる。
 チームQ4vsチーム男前となった地区大会決勝戦、ムラッ気があるという自負通りと言おうか、先鋒戦は三和VSナギサで三和が敗北。副将戦はアイチvsカムイと相成ったわけだが。

“……カムイくん、一つだけ言っていいかな”
“なんでしょう?”
“僕、またカムイくんと一緒に大会に出てみたいんだ”
“え?”
“だから僕が勝ったら、Q4に戻ってくること、考えてくれないかな”
“……俺には俺が決めた道があります。でもいいですよ、その挑戦、受けて立ちましょう!”

 こうして始まったファイトにはアイチが勝った。続く大将戦。

“カムイは今うちのメンバーだ。カムイを連れていくなら、俺を倒してからにしてもらおう!”
“……そうさせてもらう”

 激戦を制したのは櫂だった。こうしてチームQ4は地区大会三連覇を達成し、全国大会出場を決める。
 そして全国大会では、チームQ4の四人目はカムイということになったのだが……。
 例によってと言うべきかどうか、櫂は全国大会で「俺は出ない」と言い出した。

“……お前まさか、地区大会で俺誘うのに乗り気っぽかったのそのためか?”
“簡潔に言えばそうだな”
“即答かよ!?”

 本選に限って出ようとしない櫂に釈然としないながらも、自分がベンチに入る気はさらさらないカムイは、それ以上深くは追求しなかった。

 * * *

「こんにちはー」
「ちわーっす」
「………」
 西部劇風の入り口を開けて中に入ると、そろいのバンダナをつけたチーム男前の面々が揃っていた。その中にはカムイも含まれている。
「お兄さん!全国大会以来ですね」
「うん、元気そうだね」
 真っ先にアイチに挨拶したカムイは、後ろから入ってきた櫂に気づいて不敵な笑みを浮かべる。
「今日誕生日なんだって?そーいや地区大じゃ当たらなかったし、お前とはやってなかったよな」
 そう言いながら、早速カムイはファイトテーブルにデッキをセットする。アイチと三和は、櫂の誕生日にファイトをしにいくと、それだけカムイに伝えていた。
 前置きの全くない展開にも櫂は動じることなく、むしろ嬉々とした雰囲気でその向かいに立った。
「いい度胸だ。どうやら勝てる気でいるらしいな」
「トーゼンだろ、誕生日だからって手加減してやらないぜ」
「望むところだ。そのセリフ、後悔するなよ」

「「スタンドアップ!(ザ・)ヴァンガード!!」」

 * * *

「……手札を一枚ドロップして、完全防御!」
「チェック・ザ・ドライブトリガー……ゲット、クリティカル!!」
「へへっ、通さないぜ!」
 テンションの高い二人のファイトを見学しながら、アイチがぼやいた。
「楽しそうだね」
「ほんとにな」
 櫂が喜びそうなこと、と言えばやはりヴァンガードしか思いつかず、アイチと三和があーでもないこーでもないと話し合った結果、地区大会でも櫂とは当たらなかったカムイとのファイトでどうだろうということになったのだが。
 打ち合わせしたわけでもないのに即ファイトで櫂と通じあえてしまうカムイに、アイチは若干ジェラシー的なものを感じてしまってもいたりした。なんとなくカムイは、自分が知らない櫂のツボを天然で心得ているような気がする。
「……カムイくんと一緒に出たいって言ったのは僕だけど、櫂くん、どうして決勝出なかったんだろう……」
 滅多に内心を口にしない櫂のことは、アイチには分からないことだらけだ。
「まぁ、気まぐれな奴だからなぁ」
「うん……」
 三和が櫂を説明するときに、たまに使うのがその言葉だった。どうも三和は、櫂についてよくわからないところは、全部気まぐれで片付けることにしているらしい。
「……って言っても、あれ見てたら分かる気しねぇ?」
「え?」
「ファイナルターン!」
「誰がさせるか!!」
 ファイトは最終局面を迎えたらしい。櫂のファイナルターン宣言は今まで失敗したことがないが、今回はどうだろう。
(……うーん?)
 分かる気がしないかと言ったきり、その答えを三和は教えてくれなかった。お陰でアイチは、余計に増えた疑問符に悩まされることになるのだった。

 * * *

 櫂とカムイのファイトは三ラウンドに渡ったが、結局櫂が勝ちを譲ることはなかった。
「くっそー!あーもう負けたから言ってやる!誕生日おめでとっ!」
 カムイのその言葉に、櫂は答えずにふっと笑った。
「あっ、お前そんなんで誤魔化さずになんか言えよ!」
 いつも通り喧嘩腰のカムイに、櫂は澄ました顔で答える。
「リベンジしたかったら、たまにはカードキャピタルにも顔を出すんだな」
「……っ、たりめーだ!」
 予想外のセリフに不意を打たれて、カムイは真っ赤になって叫んだ。
「ったく、調子狂うぜ……」

 * * *

 帰り際、用事があるからと三和が先に帰ったため、道を歩くのは櫂とアイチの二人だった。
 カムイへの返答に驚いたのはアイチも同じで、隣を歩く櫂に、アイチは疑問を投げかける。
「……櫂くんは、パーティーみたいなお祝いは、嬉しくないの?」
 その問かけに、櫂は答えない。普通にしていてもほとんど無言な櫂だから、暫く答えがなくても不思議ではないのだが、さすがに沈黙に耐え切れずに、やっぱりいい、とアイチが取り消そうとしたそのとき。
「……イメージしろ」
「え?」
「今日はお前の誕生日だ。いつも通りにカードキャピタルに行くと、いつもの皆がお前を祝うために集まっている。お前はどうする」
「え、えーと……」
 カードキャピタルを開けると、カムイやミサキ、森川、井崎、店長、三和。それに櫂まで、自分を祝うために集まってくれていたりしたら。
「……きっと、凄く嬉しくて……」
 どうする、と言われても、もうそのイメージだけで思考が爆発してしまいそうだ。つい一年ほど前まで、イメージすることすらできなかった光景。それがもし、実現してしまったりしたら。
「……泣いちゃうかもしれない、かなぁ……?」
 思ったままアイチがそう口にすると、隣で櫂がため息をついた。
(外した……っ!?)
 アイチの焦りはどこ吹く風で、櫂は呟く。
「……そういうのは俺のガラじゃないんだ……」
「………えっ?」
 それはどういう意味だろう。俺はそんな反応はしない?いや――これは。
(……外したわけじゃ、ない……?)
 櫂の雰囲気は、全く見当外れの答えに呆れている風には感じられなかった。
(それって……)
 アイチのイメージが、ものすごい方向に組み変わっていく。
 これはひょっとして、ひょっとして。

 櫂ももしかして、自分がイメージしたような反応をしてしまうかもしれないのだろうか。

(……み、見てみたい……!)

 そのイメージが正しいのかは分からない。けれど櫂は、嬉しくないとは答えなかった。ならそれが正しいかどうか、確かめる価値はあるだろう。
 来年はもう三和くん止めないで一緒に派手にやっちゃおうかな。
 隣で不穏な好奇心を抱(いだ)かれていることに、櫂は気づいているのかいないのか。
 無言のままの帰り道は、それでも不思議と賑やかな気配が漂っていた。


 fin.
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