リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
櫂三和というか櫂→三和な雰囲気SS。R-15?
書きながら「心よ原始に戻れ/高橋洋子」とか「Reflection/林原めぐみ」とか連想してました。
書きながら「心よ原始に戻れ/高橋洋子」とか「Reflection/林原めぐみ」とか連想してました。
「お前ってさ、怖いものとかあんの?」
「……あるぞ」
「マジで」
「ああ」
「何」
わりとなんでも、とは答えられなかった。
両親の死に刻まれた呪い。この世界に、確かなものなど何もない。
踏み出すたびに壊れていく、薄氷のように頼りない世界。
そんなイメージに負けたくなくて――明日は来ると信じていたくて、ただがむしゃらに、走り続けている。
来ない明日ならこの手で作ると、そう自分に言い聞かせて。
「……三和」
「え、俺?」
名前を呼んだだけだったけれど、そういう意味じゃないとは言えなかった。それも間違いではないような気がした。
一緒に居たいとは思うけれど、そんな優しい感情じゃないと知っているから、好きだとは言えない。
ある日突然、大事な何かを失うことに、いつも怯えている。
それでも、失くすことが怖いからなんて理由で、抱きしめたりしたくなかった。
それくらいなら、もっと純粋な衝動に、身を任せていたかった。
離したくない。
大切にできなくても、壊すようにしか抱けなくても、それだけが今の櫂に持てる、見せられる全てだ。
「櫂……?」
答えることができずに、抱きしめる腕に力を込める。
「……怖くなんか、ねーよ?」
「――っ」
* * *
櫂が飛び起きると、窓からは既に陽の光が差していて、その向こうで小鳥たちの鳴く声が聞こえる。
朝が来ているという事実をうまく飲み込めずに、櫂が呆然としていると、すぐ傍で声がした。
「……ん、櫂……?」
隣で寝ていた三和が、ぼんやりと目を開けて、もぞもぞと枕元の時計に手を伸ばす。
「……まだはやくね……?」
デジタル表示の時計には、AM6:23という時刻と、ついでにSUNの文字が示されている。
「……そう、だな」
「俺もーちょい寝る……」
言うが早いか、三和はすやすやと寝息を立て始める。
櫂が隣にいることに、安心しきっているようだった。
その寝顔に後ろめたさを感じるなというのは無理な相談だろう。
沈痛な表情で額に手を当て、さっきまでの――悪夢を反芻して、櫂は呻いた。
「……最低だな」
現実にはあんなことはもちろんしていない。ただ三和が初めて一人暮らしの櫂の部屋に訪れて、ちょっと羽目を外して夜遅くまで遊んで、帰るのが面倒だからと泊っていて、客用の布団なんか無いから元々大きめのベッドで一緒に寝た、それだけのことだ。
だから、あれは、夢なのだ。整合性もなんにもない、ただのイメージ。
「………」
そこまで自分に言い聞かせてみて、内心で首を振った。
(……違うな……)
ただの夢、とは、さすがに言い切れそうになかった。
自分だけが住むためのこの部屋に、誰かを入れたのは三和が初めてだ。そのことに多少なりとも緊張していたのは否めない。
一人になりたくて選んだ道だと思ってはいるけれど、その向こうには、一人になるしかなかった運命が厳然と存在し続けている。もう誰も、自分の居場所を守ってはくれない。
友人以上に彼を求める感情が、多分無いわけではないのだ。それをなんと呼ぶのかは、知らないし知りたくもない。名前なんか要らない。
どんな名前を付けてみても、それはきっと正解じゃないから。
“怖くなんか、ねーよ?”
現実の櫂は、怖いなんて言葉は口が裂けても言えないし、だからあの言葉を聞くことも一生無いのだろう。
心を晒す代わりに肌を晒して、抱きしめてもらう代わりに抱いた。
夢の中でさえ、本音なんて言えないのに。
そんなことを思いながら、三和の顔を見つめる。それこそ夢想かもしれないけれど、何も知らないような寝顔は、櫂にとってただただ優しい。
「……お前こそ、怖いものなんかあるのか」
呟いてみても、聞かせる気のない声に、返事があるわけもない。
埒もないなと、櫂ももう一度布団をかぶり直した。
もう少しマシな夢が見れたらいいと、背中合わせの体温に思う。
次に起きたら、普通の今日が始まればいい。
(……ああ、そうか……)
とろりと、櫂の瞳が閉じていく。
(失くしていたのは、明日じゃなくて――)
World's End Syndrome―世界の果て症候群
「……あるぞ」
「マジで」
「ああ」
「何」
わりとなんでも、とは答えられなかった。
両親の死に刻まれた呪い。この世界に、確かなものなど何もない。
踏み出すたびに壊れていく、薄氷のように頼りない世界。
そんなイメージに負けたくなくて――明日は来ると信じていたくて、ただがむしゃらに、走り続けている。
来ない明日ならこの手で作ると、そう自分に言い聞かせて。
「……三和」
「え、俺?」
名前を呼んだだけだったけれど、そういう意味じゃないとは言えなかった。それも間違いではないような気がした。
一緒に居たいとは思うけれど、そんな優しい感情じゃないと知っているから、好きだとは言えない。
ある日突然、大事な何かを失うことに、いつも怯えている。
それでも、失くすことが怖いからなんて理由で、抱きしめたりしたくなかった。
それくらいなら、もっと純粋な衝動に、身を任せていたかった。
離したくない。
大切にできなくても、壊すようにしか抱けなくても、それだけが今の櫂に持てる、見せられる全てだ。
「櫂……?」
答えることができずに、抱きしめる腕に力を込める。
「……怖くなんか、ねーよ?」
「――っ」
* * *
櫂が飛び起きると、窓からは既に陽の光が差していて、その向こうで小鳥たちの鳴く声が聞こえる。
朝が来ているという事実をうまく飲み込めずに、櫂が呆然としていると、すぐ傍で声がした。
「……ん、櫂……?」
隣で寝ていた三和が、ぼんやりと目を開けて、もぞもぞと枕元の時計に手を伸ばす。
「……まだはやくね……?」
デジタル表示の時計には、AM6:23という時刻と、ついでにSUNの文字が示されている。
「……そう、だな」
「俺もーちょい寝る……」
言うが早いか、三和はすやすやと寝息を立て始める。
櫂が隣にいることに、安心しきっているようだった。
その寝顔に後ろめたさを感じるなというのは無理な相談だろう。
沈痛な表情で額に手を当て、さっきまでの――悪夢を反芻して、櫂は呻いた。
「……最低だな」
現実にはあんなことはもちろんしていない。ただ三和が初めて一人暮らしの櫂の部屋に訪れて、ちょっと羽目を外して夜遅くまで遊んで、帰るのが面倒だからと泊っていて、客用の布団なんか無いから元々大きめのベッドで一緒に寝た、それだけのことだ。
だから、あれは、夢なのだ。整合性もなんにもない、ただのイメージ。
「………」
そこまで自分に言い聞かせてみて、内心で首を振った。
(……違うな……)
ただの夢、とは、さすがに言い切れそうになかった。
自分だけが住むためのこの部屋に、誰かを入れたのは三和が初めてだ。そのことに多少なりとも緊張していたのは否めない。
一人になりたくて選んだ道だと思ってはいるけれど、その向こうには、一人になるしかなかった運命が厳然と存在し続けている。もう誰も、自分の居場所を守ってはくれない。
友人以上に彼を求める感情が、多分無いわけではないのだ。それをなんと呼ぶのかは、知らないし知りたくもない。名前なんか要らない。
どんな名前を付けてみても、それはきっと正解じゃないから。
“怖くなんか、ねーよ?”
現実の櫂は、怖いなんて言葉は口が裂けても言えないし、だからあの言葉を聞くことも一生無いのだろう。
心を晒す代わりに肌を晒して、抱きしめてもらう代わりに抱いた。
夢の中でさえ、本音なんて言えないのに。
そんなことを思いながら、三和の顔を見つめる。それこそ夢想かもしれないけれど、何も知らないような寝顔は、櫂にとってただただ優しい。
「……お前こそ、怖いものなんかあるのか」
呟いてみても、聞かせる気のない声に、返事があるわけもない。
埒もないなと、櫂ももう一度布団をかぶり直した。
もう少しマシな夢が見れたらいいと、背中合わせの体温に思う。
次に起きたら、普通の今日が始まればいい。
(……ああ、そうか……)
とろりと、櫂の瞳が閉じていく。
(失くしていたのは、明日じゃなくて――)
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