リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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レンくん誕生日おめでとう!例によって2期完無視櫂くん高2アイチ後江高1年なパラレル時空ですが、櫂誕「奇跡のような日常世界」の続きと言うより今回はアイチ誕「続・それはまるで、奇跡のような」のスピンオフ的な感じです。たぶん単品でも読めます。
実に半年前、アイチ誕の時から冒頭のレンくんと櫂くんのメールネタがやりたくてたまらなかったよ半年越しで実現したよやったね!!
しかし逆に言えばそのメールしかネタがなく、それ書いていきなり詰まっていたところに舞い降りた天使が櫂くんのキャラソン「前を向いて」でした。というわけで、別にAC編も関係なければ話自体レン視点・テツ視点がほとんどですがBGM(EDテーマ?)は「前を向いて」推奨です。元祖フーファイタートリオが愛しい。
あとテツの年齢は7/7のラジオ「ヴァンガードキャピタル」に従って櫂とレンの一個上です。原作設定とは違いますのでご注意ください。…つまりこのテツって大学受験真っ最中…?
今までで一番櫂くんが祝う気ないのに、今までで一番祝ってる気がする。

 日常世界の片隅で


 フーファイター本部は、レンにとって言わば秘密基地のようなものだった。幼馴染のテツや、大好きなアサカや、そしてヴァンガードの腕を磨く仲間たちと集う秘密基地。総帥という地位についているのは彼らを守るためだという自負もある。
 とはいえ同時にそれは、フーファイター本部が言わば我が家のようなものでもあるということで。
 これでも学校帰りの放課後、AL4――諸々の事情で今は三人しかいないが――のための控え室で携帯電話をいじっていたレンが、雑誌を読んでいたテツに話しかけた。
「……テツ、櫂って今、一人暮らしでしたよね?」
「ああ、そうだと思うが」
「今から櫂の家行きたいんですけど、どうしたらいいでしょう?」
「どうかしたのか?」
「風邪引いてるみたいです」
「は」
 レンがメールをやりとりしていた相手は、レンとテツの中学時代の友人、櫂トシキだった。

 From:櫂
 Sub:誕生日
 おめでとう

 To:櫂
 Sub:Re:誕生日
 ありがとうございます。頭でも打ったんですか?

 From:櫂
 Sub:Re:Re:誕生日
 熱が出た

 To:櫂
 Sub:Re:Re:Re:誕生日
 寝てください

 From:櫂
 Sub:Re:Re:Re:Re:誕生日
 寝てる

 順に見せられたメール画面を覗き込んでいたテツは、表情を変えることなく呟く。
「……重症そうだな」
「でしょう」
 何故かそこはかとなく自慢げにレンが答えた。
 今日がレンの誕生日なのはテツももちろん知っている。というより、総帥であるレンの誕生日を祝うために、ミーティングルームではアサカを中心に現在進行形でパーティーの準備が行われている。アサカがほぼ私情で提案したイベントなのだが、特に反対する理由もないのでテツは勝手にやらせている。
「……急げば始まるまでには間に合いそうだな。何か見舞いを持っていくか」
「はい!」
 やたらと楽しそうな顔で答えるレンに、テツは相変わらずのポーカーフェイスで突っ込んだ。
「……お前、櫂の家に押しかける口実ができたと思ってるだろう」
「きっと神様からの誕生日プレゼントですね」
 生き生きとした調子で答えるレンを、溜息一つでテツは流した。現実的なことを考えれば無駄口を叩く暇はそうない。
 つまるところこれが、二人の日常というやつだった。

 * * *

 見舞いの品は何がいいかと言いながら適当な食料を買い込み、二人は櫂のマンションにやってきた。
 マンション内に入るには暗証番号が必要なようだったが、テツが勝手知ったる様子で暗証番号を打ち込む。
「あれ、テツもここ初めてじゃないんですか?」
「櫂にメールで聞いておいた。あまりいいことじゃないだろうが、見舞いに行くのにいちいち起こしていたら本末転倒だろう。できるだけ無理をさせないに越したことはないからな」
「さすがテツですね!」
 嬉しそうなレンの声を、テツは無言で噛み締めてしまう。
 レンは他人を褒めることを躊躇わない。かつて、彼がPSYクオリアに魅入られていたときは、それは選ばれた者としてのレンの特権であり、その与奪は他者を支配するための手段だった。レンが最も賞賛を寄せていた櫂は、だからこそ、強すぎる束縛に耐え切れなくて――レンと純粋に友達でいたくて、その特権を否定するためにレンに挑み、勝つことができずにレンの元を去った。
 アサカを見出したのも、同じ才能だったのだろうとテツは思う。レンの支配は未熟だった彼女を守り、彼女はレンの支配を受け入れて花開いた。それは裏を返せば、櫂を失ったことで壊れかけていたレンの正義を、彼女が守っていたということだった。
 他者への賞賛。それはレンの天賦の才だ。それが変わらない限りは、レンがどんな罪を犯したとしても、彼の傍を離れないとテツは誓った。そして櫂は、罪を洗い流すために戦い続けた。彼の罪を、彼の嘲笑を拭い去るために。
「……考え事ですか?」
「いや」
 感慨にふけっていたのを見抜かれて、テツはそう返した。闇にその身を落としていた頃とは違う、純粋に仲間を思うレンの前では、野暮な追想のような気がしたからだ。
「先に言っておくが、あまり時間はないぞ」
「はい、大丈夫ですよ」
 頷いたレンの雰囲気は、何かを企んでいそうだった。
 それが何なのか読み切れたことなど一度もないけれど、レンのことだから適当に非常識でそれなりにまともなことだろう。
 一線を超えそうなときに止める覚悟だけはしておきつつ、その一方で何をしでかすのか期待しているというのは、テツだけの秘密だった。

 * * *

 ピンポーンと、テツが玄関のチャイムを鳴らして数分待っていると、がちゃりとドアが開いた。
「……よく、来たな……」
 顔を出した櫂は、いつものきりりとした表情はどこへやら、目は開ききっていないし顔は赤いし今にも倒れてきそうだった。
「はいはい無理しちゃ駄目ですよー。お邪魔しますね」
「失礼する」
 そんな櫂を押し戻しつつ部屋に上がったレンに続いて、テツも中に入って玄関を閉めた。
 テツが買い込んできた食料を一旦テーブルの上に置いていると、櫂をベッドにリターンさせるのに成功したらしいレンが、おもむろに櫂のものと思われる携帯を取り上げるのが見えた。
「おい……」
 力なく抗議した櫂を押さえこんで、手早くどこかに電話をかけている。
「あ、もしもしアイチくんですか?」
 受話器の向こうで「えぇっ、レンさん!?」と驚く声が聞こえた。
「はーい、雀ヶ森レンでーす。ちょっと櫂が風邪で倒れちゃったみたいなんで、お見舞いに来てあげてくれませんか?おうち分かります?……そうですか、それじゃあよろしくお願いしますね」
 そう言って電話を切る。あっという間の出来事だった。
「というわけで、アイチくんが来てくれますよ」
 一点の曇りもない笑顔でレンが言った。櫂が疲れた顔をしているのは、風邪のせいだけではないだろう。
「お前……人の携帯……」
 勝手に触るな、と櫂が言う前に、レンは慣れた調子で口を尖らせる。
「だって僕、アイチくんの連絡先知らなかったんですもん」
「だってじゃない……」
 さっき企んでいたのはこれかと思いながら、テツが口を挟んだ。
「その辺にしておけ」
「テツ……」
 そのテツはと言えば、買ってきたスポーツドリンクが注がれたコップを手にしている。もちろんこれは、櫂の台所にあったものだ。
「悪いが勝手に拝借した。その様子では本当に寝ていただけだろう。水分を取っておいたほうがいい」
「……すまない」
「いや」
 それを結構素直に受け取っている櫂を見ながら、レンがぼやく。
「テツばっかりずるいです」
「お前はもう少し櫂のことを考えろ」
「考えてますよー」
 そうだな、考えてるけど惜しいんだよな、そうテツは胸中で呟いた。
 櫂に対する――櫂だけではないかもしれないが――レンの気遣いは、なんというか、自由だ。それ故に櫂本人を振り回してしまうのだが、それは櫂がレンの好意にいまいち素直な返事を返さないせいでもあって、どちらが先なのかテツには分からない。
 ついでに言えば、二人より一つ年上のテツにとっては、そういう二人のやりとりは「いいなぁ仲が良くて」だったりする。
「あ、そうだ櫂、みかん食べます?」
「……いる」
 早くも立ち直ったレンの言葉に、今度こそ櫂が素直に頷いた。
 自分が選んだ見舞いの品を取りに行ったレンを見送りながら、櫂が呟いた。
「……相変わらずだな」
 あまり覇気のない様子で苦笑する櫂は、結局のところこういうレンが好きなのだろう。その感覚にはテツにも覚えがあって、思わず小さく吹き出してしまう。
 櫂が気づいてこちらを見やったようだが、咄嗟にポーカーフェイスで明後日の方向を見てしまったものの、決定的瞬間を目撃されることは無かった。
「はい、どうぞ」
 どうぞと言いつつ持ってきたレンの手に、乗っているみかんは三つ。そのうち一つを櫂に渡して、もう一つをテツに差し出してくる。
「テツも食べません?」
「もらおう」
 受け取ったみかんの皮をむきつつ、テツはまったく表情を変えずに告げる。
「これを食べたら帰るぞ」
「はーい」
 そんなことを言って三人そろってみかんを食べているところに、来客を告げるインターホンが鳴った。
「あ、アイチくんでしょうか?僕が出ますね」
 言ってレンが席を立つ。
 アイチが来るには早いような気がする、と櫂が様子を見守っていると、案の定レンは「どちら様ですか?」などと聞き返している。暫く待ったレンが、櫂を振り向いて言った。
「櫂、三和って人が来てます」
「……入れてやってくれ」
 なんとなくどういうルートで情報が回ったのか察しつつ、櫂はそう答えた。元々様子を見に来るつもりだったところに、アイチが連絡したというところだろう。
 レンとテツが帰り支度を終えたあたりで、もう一度玄関のチャイムが鳴った。三和がそこまで上がってきたらしい。
「ちょうどよかった。それじゃ、僕達これで失礼しますね」
「養生するんだな」
 言い残して去ろうとする二人を、櫂が呼び止める。
「レン、テツ」
 振り向いた二人に、櫂は言った。
「……ありがとう」
 虚を突かれた一瞬の間の後、二人が破顔する。
「どういたしまして!」
 そう言ってレンは明るく笑い、テツが無言で微笑む。
 その表情に、櫂もそっと笑った。
 胸が痛いくらいに、幸せな瞬間だった。

 * * *

 冬の日は暮れるのが早い。レンとテツが外に出ると、夜の闇はもうすっかりあたりを覆っていた。
 駅への道を歩きながら、レンがぽつりと呟く。
「来てよかったですね」
「そうだな」
「早く帰らないと、アサカが待ちくたびれちゃいますね」
「そうだな」
「……なんか、泣いちゃいそうです」
「……いいんじゃないか」
 誰も見てはいないぞと、テツは淡々と答える。
 泣きそうだと言ったレンの声は、もう既に震えていた。
 それも当然かもしれないとテツは思う。
 櫂とすれ違ったあの頃、レンが本当に願っていたもの。
 傷ついたレンを支えてくれたもの。
 その両方ともが、今、レンの手の中にあった。
「……っ」
 泣きだしたレンの嗚咽を聞きながら、テツは胸中で呟く。
(誕生日おめでとう、レン)
 感謝にも似たその言葉を、ここで口に出すのは憚られて、テツはふと頭上を見上げる。
 透き通った空に星が瞬く、綺麗な夜だった。


 fin.
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