リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
三和くん誕生日おめでとう…間に合わなか っ た …orz
ので、Aパートだけアップします。去年の三和誕「それはまるで、奇跡のような」から一年、櫂くんアイチくんに連れられて三和くんがやってきたのは――?
去年あんまり祝ってあげられなかったから来年もう一回って思ったのに、既にアイチ誕の時点で「いや櫂くんがまともに祝うとか無理じゃね?」となり、レン誕で「祝わなくていいや」と悟りを開いてしまった(笑)後の三和誕はこんな感じに…ってまだまともに始まってませんが。
P.S.4/6更新しました!三和くん誕生日おめでとおおー……。・゚・(ノД`)・゚・。
注意事項
【第一期後アイチが後江高校に進学してるパラレル時空】
【世界大会とか出てないしタクトとかレオンとか居ない】
【平然と三年生に進級している三和くんと櫂くん】
【オリジナル口上・オリジナルカードを使用します】
【このシリーズはティアドロップと同じ世界線だったようです】
ので、Aパートだけアップします。去年の三和誕「それはまるで、奇跡のような」から一年、櫂くんアイチくんに連れられて三和くんがやってきたのは――?
去年あんまり祝ってあげられなかったから来年もう一回って思ったのに、既にアイチ誕の時点で「いや櫂くんがまともに祝うとか無理じゃね?」となり、レン誕で「祝わなくていいや」と悟りを開いてしまった(笑)後の三和誕はこんな感じに…ってまだまともに始まってませんが。
P.S.4/6更新しました!三和くん誕生日おめでとおおー……。・゚・(ノД`)・゚・。
注意事項
【第一期後アイチが後江高校に進学してるパラレル時空】
【世界大会とか出てないしタクトとかレオンとか居ない】
【平然と三年生に進級している三和くんと櫂くん】
【オリジナル口上・オリジナルカードを使用します】
【このシリーズはティアドロップと同じ世界線だったようです】
現在日本という国において、四月一日という日は新しい年度の最初の日ということになっている。何故一月から始めないのか、ひょっとしたら理由はあるのかもしれないが、少なくとも三和はそれを知らなかった。今日から三和は高校三年生、いわゆる受験生になる。昨日から今日で、別段何が違うわけでもないとは思うけれど。
しかし四月一日は、三和にとって別の意味でも節目の日なのだった。
「三和くん、誕生日おめでとう」
「サンキュー、アイチ」
街の交差点、待ち合わせ場所へとやってきた三和に、アイチが笑顔で祝福を贈る。その後ろには、もうひとつ見慣れた顔があった。
「お前はなんかねーの?」
にやりとした顔で三和が水を向けると、櫂は澄ました顔で答える。
「別に」
三和の誕生日に、せっかくだからどこか遊びに行こうと誘ったのはアイチだ。櫂がそれに同意したのにはいささか驚いた三和だったが、二人の厚意が嬉しくないわけもなく、三和は迷わず頷いた。
「それで、今日はどこ連れてってくれるんだ?」
「それは着いてからのお楽しみだよ」
三和には行き先は知らされていなかった。アイチが指定するということだったので、妙なサプライズはないだろうと高をくくっていたのだが。
三人で街を行きながら、三和は次第にそれが甘かったような気がしてくる。
裏ファイト場という場所を指定したのは、果たして本当にアイチなのだろうか。
「やぁ、よく来たね。三和くん誕生日おめでとう」
前もって話は通っていたらしく、ジュンがそう言って出迎えてくれる。しかしフィールドの中心に鎮座するモーションフィギュアシステムに、三和の焦燥は高まるばかりだ。張り付いた笑顔には冷や汗が浮かんでいる。
「ありがと……って、あの、アイチ、マジでここ?」
一縷の望みをかけて、こそこそと聞いてみたものの。
「うん、そうだよ」
一点の曇りもない目で答えられた。
その横から、櫂がおもむろに三和の腕を取ると、そのまま中央へと三和を引きずっていく。やはりこの展開なのか。お前俺がここのシステム苦手なの分かっててやってるだろ。
「おい、まて、聞いてないぞ櫂!」
「お前だってデッキぐらい持ってるだろ」
「そういう話じゃねぇっつの!」
「まぁそう言うな」
有無をいわさず三和をテーブルにつかせると、櫂は向かい側で自分のデッキをスタンバイした。
システムに備え付けられたグローブを装着して、やたらと爽快な笑顔で告げる。
「やろうぜ?」
興味津々の裏ファイター達と、ある意味これを仕組んだ張本人のアイチに囲まれて、三和に逃げ道は無い。
何より――なんでそんなにも、楽しそうな顔をするんだ、櫂。
「っ、今回だけだからな!!」
ほとんどヤケクソになりながら、三和はグローブを手に取った。
「「スタンドアップ!(ザ・)ヴァンガード!!」」
* * *
「《リザードランナー コンロー》のブースト。《ドラゴンナイト ネハーレン》でヴァンガードにアタック!」
「《フレイムシード・サラマンダー》でガード!」
「ターンエンド」
ド迫力のビジョンに戦慄を煽られてか、今回ばかりは三和も必死だった。そんな二人のファイトを観戦しながら、ジュンが呟く。
「三和くんも《かげろう》なんだね」
同じく隣で観戦しているアイチが答える。
「うん。よく櫂くんの練習相手してたから、一番詳しくなったんだって」
「なるほどねぇ」
のほほんと世間話をしている外野とは対照的に、三和はいっぱいいっぱいだ。
「おい櫂!俺に何の恨みがあるっていうんだ!」
「そんなものはない」
「嘘つけえぇええ!!」
「……嘘じゃないさ」
にやっと、櫂が笑った。
「《ドラゴニック・ウォーターフォウル》に、ライド!」
「なっ……!?」
櫂のデッキについては、三和はなんでも知っていると言って過言ではない。しかしこのユニットを入れたデッキは、櫂は完成させたことはないはずだった。
「ウォーターフォウルのスキル発動。手札のグレード3をコストに、パワープラス10000!」
《ドラゴニック・オーバーロード》がドロップゾーンへと送られる。
「なんで……!」
思わず本気で驚いた三和に、櫂が不思議な表情で微笑った。
「……っ、手札一枚をドロップ。《ワイバーンガード バリィ》で、完全ガード!」
「ほう、よく持っていたな」
「ったりめーだ!」
ここぞというときに使わないでどうする。どんなに序盤で攻め立てられても、火力の乗った後半まで視野に入れておかなければ、ガード切れで一気に焼き尽くされるのがオチだ。――その前に攻め勝つことができなければ結局ジリ貧だと分かってはいても、如何せん櫂ほどキレのいい攻めはなかなかできない。
「俺のターン、スタンド・アンド・ドロー。《ドラゴニック・ロウキーパー》にライド!リミットブレイク!お前のリアガードをバインドさせてもらうぜ!」
櫂が全てのリアガードを手元に伏せる。その数は四枚。けれど櫂の威風堂々とした佇まいは、揺らぎはしなかった。
「俺のヴァンガードがオーバーロードなら、ついでに弱体化にも成功していたところだな」
「……!」
《ドラゴニック・オーバーロード》は、ヴァンガードかリアガードに《かげろう》のユニットがいなければパワーがマイナス2000される。リアガードをバインドされる効果は、オーバーロードにとってはかなりの脅威だった。
「お前まさか……これを警戒してたってのか!?」
「さぁ、どうだろうな?」
櫂も三和のデッキ構成をかなりのところまで知っていることには変わりない。対策を用意しても不思議ではないけれど、そのためにオーバーロードを外すなんてことを、櫂がするのだろうか。
(わっかんねぇけど……!)
「《鎧の化身 バー》のブースト!《ガーネット・ドラゴン“閃光”(フラッシュ)》で、ヴァンガードにアタック!」
「ガード!《ブルーレイ・ドラコキッド》!」
「《希望の火 エルモ》のブースト、《ドラゴニック・ロウキーパー》のスキル発動!このユニットがヴァンガードにアタックするとき、相手のリアガードが2枚以下なら、パワープラス3000!行くぜ、荒れ狂う戦士達の唯一のルール、魂の誇り!ワン・オン・ワン・ジャッジメント!」
ロウキーパーのパワーは合計で19000。
「……ノーガード!」
「っ、ツインドライブチェック!」
ノーガードを宣言した櫂のダメージゾーンには今の時点で四枚。クリティカルが一枚でも乗れば、六枚には到達する。しかしまだリアガードの攻撃が残っている以上、ここでガードを使い切るわけにもいかない。ガードに割けるカードが不足しているということか。
「一枚目、ドロートリガー。パワーはネハーレンに。カードを一枚ドロー。二枚目……っ、クリティカルトリガー!クリティカルはロウキーパー、パワーはネハーレンに!」
トドメを刺せるトリガーを引いて、動揺したのは三和のほうだった。櫂は静かに、デッキに手を添える。
「ダメージチェック。一枚目、トリガーなし」
五枚目のカードを、櫂はダメージゾーンへと送る。
「二枚目――」
櫂が開く六枚目のカードに、三和の、そして観戦しているジュンとアイチの視線が注がれる。
自らドローしたカードを確認して、櫂が目を伏せるようにして笑った。
そのカードを、櫂が三和へと公開する。
「――《ドラゴンモンク ゲンジョウ》、ヒールトリガー!」
「嘘だろ……」
まるでドローするカードを知っていたかのように見えて、思わず三和はそう呟いていた。
「ダメージを一枚回復。パワーはウォーターフォウルに!」
「……っ、エルモの効果でカードを一枚交換。《ドラゴンモンク ゴジョー》のブースト、《ドラゴンナイト ネハーレン》でアタック!」
「《槍の化身 ター》《約束の火 エルモ》でガード!」
残り手札一枚の状態で、櫂は最後の攻撃をしのいだ。
「このターンのエンドフェイズ、ロウキーパーのスキルでバインドされたユニットは、四枚までリアガードサークルにコールし直すことができる」
「俺は《鎧の化身 バー》《ドラゴンモンク ゴジョー》をコール。残りのユニットはドロップゾーンへ」
「なっ!?」
「えっ?」
「へぇ?」
三和とアイチ、ジュンの声が重なった。櫂のフィールドには、前列中央にヴァンガード《ドラゴニック・ウォーターフォウル》、その後ろに《鎧の化身 バー》、そして右後列《ドラゴンモンク ゴジョー》。まだリアガードをコールする余地は残っている。手札も一枚しかないこの状況で、戦力は少しでも惜しいはずだ。
「……ターンエンド」
なのにリアガードをコールしないということは、櫂が何か企んでいるということだった。
「俺のターン。スタンド・アンド・ドロー」
櫂はドローしたカードを確認して手札に加えると、さっきのターン、最後に残っていた一枚のカードを手に取る。
しんとした緊張の波紋が、あたりに広がるのを感じた。
「――宿縁の業火を鎮めし者よ、無限なる世界の再生を謳うがいい!クロスライド!《ドラゴニック・ウォーターフォウル “RE-BIRTH(リ・バース)”》!!」
朗々とした声が高らかに響き渡る。
ドラゴンの割拠する帝国を守護する水の竜。その進化形態が、櫂のもとへと舞い降りる。
紅の大地からくっきりと浮き出る白と青、孤高のティアードラゴン。
「……すげぇ……」
三和の口から感嘆の声がこぼれた。
今使っているシステムが苦手だったことなど、すっかり忘れていた。
それくらい――リバースのビジョンは、ただただ荘厳だった。
「リバースのアルティメットブレイク!ドロップゾーンに置かれたユニットを三体までスペリオルコールし、そのターン中、コールしたユニットのパワープラス5000!」
「ちょ、待てええええええ!?」
「新たなる生を受け甦れ!《ドラゴニック・オーバーロード》《ドラゴンナイト ネハーレン》《約束の火 エルモ》!!」
スペリオルコールされたユニットによって、櫂のフィールドがあっという間に埋め尽くされる。
「ゴジョーのブースト、ネハーレンでヴァンガードにアタック!」
リバースのスキルで強化されたネハーレンのパワーは、ブーストも合わせて23000。
「《ドラゴンダンサー モニカ》《槍の化身 ター》でガード!」
三和のダメージゾーンにはカードが四枚。あと一枚まではダメージを受ける余裕があるものの、防げる攻撃を防いでおかないと、後に控えている攻撃のパワーは、とてもではないが防ぎようがない。
「バーの支援をつけて、《ドラゴニック・ウォーターフォウル“RE-BIRTH”》でアタック!」
クロスライドしたウォーターフォウルのパワーは12000、ヴァンガードを攻撃するときのパワーアップスキルと支援によって23000。
「……《ワイバーンガード バリィ》、完全ガード!」
「……!」
二枚目の完全ガードに、櫂が目を瞠る。一瞬驚いた顔をした櫂は、面白そうに――本当に面白そうに笑った。
「いいのか?ここで使って」
三和の手札はこれでゼロ。残るオーバーロードの攻撃を防ぐことはできない。
「いーんだよ!」
本音で言えば、リバースの迫力に気圧されたところが無いとは言えなかった。
(どっちにしろ、クリティカルが出たらその攻撃は防げない。だったら、どこでガードしたって同じだ!)
「ドライブトリガーファーストチェック!」
ドローしたのは《十字撃ち(クロスショット) ガープ》、トリガーは無い。
「セカンドチェック!」
櫂が開いたカードは――
「ーっ、来ると思ってたよ!!」
「《ブルーレイ・ドラコキッド》、クリティカルトリガー!効果はすべてオーバーロードへ!《約束の火 エルモ》のブーストにより、《ドラゴニック・オーバーロード》のパワープラス6000、合計パワー36000!《ドラゴニック・オーバーロード》でヴァンガードにアタック!この世のすべてのものを焼き尽くす、黙示録の炎!!」
「受けて立ってやんよ!来い、櫂!」
「エターナル・フレイム!!」
オーバーロードの炎が、ロウキーパーを焼き尽くす。
「ダメージトリガーファーストチェック!」
三和がデッキからカードをドローする。
「……ってうおおおおお!?」
「ヒールトリガー!」
外野からアイチが叫んだ。あと一歩のところで、三和はとどめを回避する。
「ダメージを一枚回復。ロウキーパーにパワープラス5000!……セカンドチェック!」
あと一枚、もう一枚ヒールが引ければ、この窮地を脱することができる。
勢いに乗れたらとドローしたカードは――
「……ってやっぱダメかー!」
カードをダメージゾーンに置いて、三和が地面に腰を落とした。奇しくもそれは《ドラゴニック・オーバーロード》、攻撃側の櫂と同じユニットだった。
それを確認した櫂が、グローブを外して三和の側へとやってくる。
三和に右手を差し出して言った。
「俺の勝ち、だな」
「おうよ、派手に散ったぜ」
櫂に手を引かれて、三和は立ち上がった。
久しぶりに全力で戦ったファイトは終わってみると清々しくて、心地よい疲労を感じる。
「人の誕生日だってのにめちゃくちゃ楽しみやがって。今度こそなんかねーの?」
三和がそう言うと、最高に上機嫌な顔で櫂が笑った。
「お前に言うことなんかねーよ」
* * *
ぱちぱちと手を叩く音がして、櫂と三和はコートサイドを見やる。アイチとジュンが、二人に拍手を贈っていた。
熱いファイトをひとしきり称えて、二人がフィールドへとやってくる。
「二人ともお疲れ様!すごいファイトだったよ」
「アイチ……」
屈託のない賞賛を贈られても、三和は素直に喜べなかった。
アイチの両肩をがしぃっと掴むと、がたがたと揺さぶる。
「謀(はか)ったのか!?謀ったんだな!?」
「ごめっ、ごめん、ごめんなさい!」
「何故だ、何故お前がこんな……!」
映画のワンシーンか何かのように三和が言うと、アイチが冷や汗を浮かべながら笑って答える。
「だって今日は、エイプリルフールでしょう?」
「そんなこと言う子に育てた覚えはありません!!」
見かねたように、櫂が二人の間に入った。
「三和、あまりアイチを責めるな。アイチがここを指定したのは嘘じゃない」
「いやどう見てもお前の指定だろ!?」
「確かに、アイチの指定先は俺が指定した」
「IP偽装!?」
堂々とネタばらしをしてくる櫂に、三和のツッコミが追い付かない。
なんでそんなまわりくどいこと――という言葉は、確信犯なアイチの笑顔に阻まれる。
“どうだった?”
その表情に、三和も毒気を抜かれざるを得なかった。
「……とんだ誕生日だな、まったく」
だまし討ちなんてごめんなはずなのに、嫌だったかと聞かれたらそうじゃないから、自分の負けなのだろうと三和は苦笑する。
それに――
“宿縁の業火を鎮めし者よ、無限なる世界の再生を謳うがいい!クロスライド!《ドラゴニック・ウォーターフォウル “RE-BIRTH(リ・バース)”!!”
櫂がずっと使いこなせなかった《ドラゴニック・ウォーターフォウル》。そのクロスライドユニットが勝利を導いたということは――
(もう、大丈夫なんだな。櫂)
消えない涙はあるのだろう。それでも、櫂は櫂なりに答えを出したのだと、三和にはそう思えてならなかった。
そんな三人を微笑ましげに見ていたジュンが言った。
「楽しんでもらえたみたいで何よりだよ」
その言葉に、アイチが頭を下げる。
「ジュンさん、今日はありがとうございました」
「こっちこそ、面白いファイトだったよ。これで使いおさめなら、こいつも申し分ないだろうさ」
言いながら、ジュンはファイトテーブルに愛おしげに触れた。思ってもみない話に、三和が聞き返す。
「え、これもう使わねぇの?」
「さすがに年季が入ってるからね」
ジュンは多くを語らなかったけれど、後ろに控える裏ファイター達のメンツもちらほら入れ替わっている。ひょっとしたら、ここにも代替わり的なものがあるのかもしれない。
「それの最後が俺と櫂って……良かったのか?」
「言っただろう?申し分ないファイトだったよ」
三和へとジュンが笑いかける。
「……礼は必要ない、か?」
そんなジュンに、普段の調子に落ち着いた櫂が言った。ジュンは満足げに頷く。
「そんなガラじゃないはずだろう、お互い」
その言葉に、櫂がふっと笑う。
「そうだな」
ジュンと櫂の間にあるのは、似た者同士の暗黙の了解のような何かなのだろうか。
元気でな、と、そんな挨拶を交わして、三人は裏ファイト場を後にした。
* * *
「遅くなっちゃったけど、これ、僕からの誕生日プレゼント」
「え?」
帰り道、微妙に先を行く櫂の後ろのほうで、アイチは三和に小さな包みを渡した。
「ありがとう」
三和はぽかんとした表情で受け取る。中身はキャンディーボックスらしく、やっぱりアイチはアイチなのかと、妙な感動を覚える。
「……結局今日のって、言い出したのどっちなんだ?」
「最初にもうすぐ三和くんの誕生日だねって言ったのは僕だよ。そしたら櫂くんが、そろそろエイプリルフールだなって」
「言い直したわけだ」
「うん」
アイチは素直に相槌を打つ。
それで二人してサプライズを仕掛けようということになったらしい。
「あいつにとっちゃエイプリルフールのほうが重要なんだな」
三和が苦笑すると、アイチがくすりと笑う。
「でも櫂くん言ってたよ。三和くんの誕生日がエイプリルフールでよかったって」
「……え?」
言われた言葉の意味がすぐに呑み込めずに三和が聞き返すと、前を歩いていた櫂が振り返らないまま言った。
「余計なことを言うな、アイチ」
こっちを見ない櫂の表情は分からないけれど、その時点で照れ隠しだと言っているようなものだ。多分アイチが聞いたそのセリフ自体、口が滑ったようなものだったのだろう。
「……なーるほど?」
サプライズの意味がようやく腑に落ちて、三和の顔に満面の笑みが広がる。
無視を決め込んでいる櫂に、三和は後ろから走り寄ってヘッドロックでもかます勢いで抱きつく。
「ありがとなっ!」
「……っ、離せ!!」
「やーだね!」
別にこれくらい良いだろうと三和は笑った。抱きつかれた櫂の顔は真っ赤になっていることだろう。
素直じゃないもここまできたら才能かもしれない。何が嘘か何がほんとかなんてどうでもいい。嘘も本当もひっくるめて、今日の全部が、櫂からの誕生日プレゼントだった。
(ほんとにありがとう、櫂)
* * *
新しい一年が始まる。
何かが終わるかもしれない、何かが変わるかもしれない。
それでもきっと、ずっと――
fin.
Take a chance, YES, NO?
I can see my hopes and dreams
I'll fight until the end!
Just believe! You will see!
It's time to show the fire burning in me
DREAM SHOOTER/Sea☆A
あとがき的な何か
しかし四月一日は、三和にとって別の意味でも節目の日なのだった。
「三和くん、誕生日おめでとう」
「サンキュー、アイチ」
街の交差点、待ち合わせ場所へとやってきた三和に、アイチが笑顔で祝福を贈る。その後ろには、もうひとつ見慣れた顔があった。
「お前はなんかねーの?」
にやりとした顔で三和が水を向けると、櫂は澄ました顔で答える。
「別に」
三和の誕生日に、せっかくだからどこか遊びに行こうと誘ったのはアイチだ。櫂がそれに同意したのにはいささか驚いた三和だったが、二人の厚意が嬉しくないわけもなく、三和は迷わず頷いた。
「それで、今日はどこ連れてってくれるんだ?」
「それは着いてからのお楽しみだよ」
三和には行き先は知らされていなかった。アイチが指定するということだったので、妙なサプライズはないだろうと高をくくっていたのだが。
三人で街を行きながら、三和は次第にそれが甘かったような気がしてくる。
裏ファイト場という場所を指定したのは、果たして本当にアイチなのだろうか。
「やぁ、よく来たね。三和くん誕生日おめでとう」
前もって話は通っていたらしく、ジュンがそう言って出迎えてくれる。しかしフィールドの中心に鎮座するモーションフィギュアシステムに、三和の焦燥は高まるばかりだ。張り付いた笑顔には冷や汗が浮かんでいる。
「ありがと……って、あの、アイチ、マジでここ?」
一縷の望みをかけて、こそこそと聞いてみたものの。
「うん、そうだよ」
一点の曇りもない目で答えられた。
その横から、櫂がおもむろに三和の腕を取ると、そのまま中央へと三和を引きずっていく。やはりこの展開なのか。お前俺がここのシステム苦手なの分かっててやってるだろ。
「おい、まて、聞いてないぞ櫂!」
「お前だってデッキぐらい持ってるだろ」
「そういう話じゃねぇっつの!」
「まぁそう言うな」
有無をいわさず三和をテーブルにつかせると、櫂は向かい側で自分のデッキをスタンバイした。
システムに備え付けられたグローブを装着して、やたらと爽快な笑顔で告げる。
「やろうぜ?」
興味津々の裏ファイター達と、ある意味これを仕組んだ張本人のアイチに囲まれて、三和に逃げ道は無い。
何より――なんでそんなにも、楽しそうな顔をするんだ、櫂。
「っ、今回だけだからな!!」
ほとんどヤケクソになりながら、三和はグローブを手に取った。
「「スタンドアップ!(ザ・)ヴァンガード!!」」
* * *
「《リザードランナー コンロー》のブースト。《ドラゴンナイト ネハーレン》でヴァンガードにアタック!」
「《フレイムシード・サラマンダー》でガード!」
「ターンエンド」
ド迫力のビジョンに戦慄を煽られてか、今回ばかりは三和も必死だった。そんな二人のファイトを観戦しながら、ジュンが呟く。
「三和くんも《かげろう》なんだね」
同じく隣で観戦しているアイチが答える。
「うん。よく櫂くんの練習相手してたから、一番詳しくなったんだって」
「なるほどねぇ」
のほほんと世間話をしている外野とは対照的に、三和はいっぱいいっぱいだ。
「おい櫂!俺に何の恨みがあるっていうんだ!」
「そんなものはない」
「嘘つけえぇええ!!」
「……嘘じゃないさ」
にやっと、櫂が笑った。
「《ドラゴニック・ウォーターフォウル》に、ライド!」
「なっ……!?」
櫂のデッキについては、三和はなんでも知っていると言って過言ではない。しかしこのユニットを入れたデッキは、櫂は完成させたことはないはずだった。
「ウォーターフォウルのスキル発動。手札のグレード3をコストに、パワープラス10000!」
《ドラゴニック・オーバーロード》がドロップゾーンへと送られる。
「なんで……!」
思わず本気で驚いた三和に、櫂が不思議な表情で微笑った。
「……っ、手札一枚をドロップ。《ワイバーンガード バリィ》で、完全ガード!」
「ほう、よく持っていたな」
「ったりめーだ!」
ここぞというときに使わないでどうする。どんなに序盤で攻め立てられても、火力の乗った後半まで視野に入れておかなければ、ガード切れで一気に焼き尽くされるのがオチだ。――その前に攻め勝つことができなければ結局ジリ貧だと分かってはいても、如何せん櫂ほどキレのいい攻めはなかなかできない。
「俺のターン、スタンド・アンド・ドロー。《ドラゴニック・ロウキーパー》にライド!リミットブレイク!お前のリアガードをバインドさせてもらうぜ!」
櫂が全てのリアガードを手元に伏せる。その数は四枚。けれど櫂の威風堂々とした佇まいは、揺らぎはしなかった。
「俺のヴァンガードがオーバーロードなら、ついでに弱体化にも成功していたところだな」
「……!」
《ドラゴニック・オーバーロード》は、ヴァンガードかリアガードに《かげろう》のユニットがいなければパワーがマイナス2000される。リアガードをバインドされる効果は、オーバーロードにとってはかなりの脅威だった。
「お前まさか……これを警戒してたってのか!?」
「さぁ、どうだろうな?」
櫂も三和のデッキ構成をかなりのところまで知っていることには変わりない。対策を用意しても不思議ではないけれど、そのためにオーバーロードを外すなんてことを、櫂がするのだろうか。
(わっかんねぇけど……!)
「《鎧の化身 バー》のブースト!《ガーネット・ドラゴン“閃光”(フラッシュ)》で、ヴァンガードにアタック!」
「ガード!《ブルーレイ・ドラコキッド》!」
「《希望の火 エルモ》のブースト、《ドラゴニック・ロウキーパー》のスキル発動!このユニットがヴァンガードにアタックするとき、相手のリアガードが2枚以下なら、パワープラス3000!行くぜ、荒れ狂う戦士達の唯一のルール、魂の誇り!ワン・オン・ワン・ジャッジメント!」
ロウキーパーのパワーは合計で19000。
「……ノーガード!」
「っ、ツインドライブチェック!」
ノーガードを宣言した櫂のダメージゾーンには今の時点で四枚。クリティカルが一枚でも乗れば、六枚には到達する。しかしまだリアガードの攻撃が残っている以上、ここでガードを使い切るわけにもいかない。ガードに割けるカードが不足しているということか。
「一枚目、ドロートリガー。パワーはネハーレンに。カードを一枚ドロー。二枚目……っ、クリティカルトリガー!クリティカルはロウキーパー、パワーはネハーレンに!」
トドメを刺せるトリガーを引いて、動揺したのは三和のほうだった。櫂は静かに、デッキに手を添える。
「ダメージチェック。一枚目、トリガーなし」
五枚目のカードを、櫂はダメージゾーンへと送る。
「二枚目――」
櫂が開く六枚目のカードに、三和の、そして観戦しているジュンとアイチの視線が注がれる。
自らドローしたカードを確認して、櫂が目を伏せるようにして笑った。
そのカードを、櫂が三和へと公開する。
「――《ドラゴンモンク ゲンジョウ》、ヒールトリガー!」
「嘘だろ……」
まるでドローするカードを知っていたかのように見えて、思わず三和はそう呟いていた。
「ダメージを一枚回復。パワーはウォーターフォウルに!」
「……っ、エルモの効果でカードを一枚交換。《ドラゴンモンク ゴジョー》のブースト、《ドラゴンナイト ネハーレン》でアタック!」
「《槍の化身 ター》《約束の火 エルモ》でガード!」
残り手札一枚の状態で、櫂は最後の攻撃をしのいだ。
「このターンのエンドフェイズ、ロウキーパーのスキルでバインドされたユニットは、四枚までリアガードサークルにコールし直すことができる」
「俺は《鎧の化身 バー》《ドラゴンモンク ゴジョー》をコール。残りのユニットはドロップゾーンへ」
「なっ!?」
「えっ?」
「へぇ?」
三和とアイチ、ジュンの声が重なった。櫂のフィールドには、前列中央にヴァンガード《ドラゴニック・ウォーターフォウル》、その後ろに《鎧の化身 バー》、そして右後列《ドラゴンモンク ゴジョー》。まだリアガードをコールする余地は残っている。手札も一枚しかないこの状況で、戦力は少しでも惜しいはずだ。
「……ターンエンド」
なのにリアガードをコールしないということは、櫂が何か企んでいるということだった。
「俺のターン。スタンド・アンド・ドロー」
櫂はドローしたカードを確認して手札に加えると、さっきのターン、最後に残っていた一枚のカードを手に取る。
しんとした緊張の波紋が、あたりに広がるのを感じた。
「――宿縁の業火を鎮めし者よ、無限なる世界の再生を謳うがいい!クロスライド!《ドラゴニック・ウォーターフォウル “RE-BIRTH(リ・バース)”》!!」
朗々とした声が高らかに響き渡る。
ドラゴンの割拠する帝国を守護する水の竜。その進化形態が、櫂のもとへと舞い降りる。
紅の大地からくっきりと浮き出る白と青、孤高のティアードラゴン。
「……すげぇ……」
三和の口から感嘆の声がこぼれた。
今使っているシステムが苦手だったことなど、すっかり忘れていた。
それくらい――リバースのビジョンは、ただただ荘厳だった。
「リバースのアルティメットブレイク!ドロップゾーンに置かれたユニットを三体までスペリオルコールし、そのターン中、コールしたユニットのパワープラス5000!」
「ちょ、待てええええええ!?」
「新たなる生を受け甦れ!《ドラゴニック・オーバーロード》《ドラゴンナイト ネハーレン》《約束の火 エルモ》!!」
スペリオルコールされたユニットによって、櫂のフィールドがあっという間に埋め尽くされる。
「ゴジョーのブースト、ネハーレンでヴァンガードにアタック!」
リバースのスキルで強化されたネハーレンのパワーは、ブーストも合わせて23000。
「《ドラゴンダンサー モニカ》《槍の化身 ター》でガード!」
三和のダメージゾーンにはカードが四枚。あと一枚まではダメージを受ける余裕があるものの、防げる攻撃を防いでおかないと、後に控えている攻撃のパワーは、とてもではないが防ぎようがない。
「バーの支援をつけて、《ドラゴニック・ウォーターフォウル“RE-BIRTH”》でアタック!」
クロスライドしたウォーターフォウルのパワーは12000、ヴァンガードを攻撃するときのパワーアップスキルと支援によって23000。
「……《ワイバーンガード バリィ》、完全ガード!」
「……!」
二枚目の完全ガードに、櫂が目を瞠る。一瞬驚いた顔をした櫂は、面白そうに――本当に面白そうに笑った。
「いいのか?ここで使って」
三和の手札はこれでゼロ。残るオーバーロードの攻撃を防ぐことはできない。
「いーんだよ!」
本音で言えば、リバースの迫力に気圧されたところが無いとは言えなかった。
(どっちにしろ、クリティカルが出たらその攻撃は防げない。だったら、どこでガードしたって同じだ!)
「ドライブトリガーファーストチェック!」
ドローしたのは《十字撃ち(クロスショット) ガープ》、トリガーは無い。
「セカンドチェック!」
櫂が開いたカードは――
「ーっ、来ると思ってたよ!!」
「《ブルーレイ・ドラコキッド》、クリティカルトリガー!効果はすべてオーバーロードへ!《約束の火 エルモ》のブーストにより、《ドラゴニック・オーバーロード》のパワープラス6000、合計パワー36000!《ドラゴニック・オーバーロード》でヴァンガードにアタック!この世のすべてのものを焼き尽くす、黙示録の炎!!」
「受けて立ってやんよ!来い、櫂!」
「エターナル・フレイム!!」
オーバーロードの炎が、ロウキーパーを焼き尽くす。
「ダメージトリガーファーストチェック!」
三和がデッキからカードをドローする。
「……ってうおおおおお!?」
「ヒールトリガー!」
外野からアイチが叫んだ。あと一歩のところで、三和はとどめを回避する。
「ダメージを一枚回復。ロウキーパーにパワープラス5000!……セカンドチェック!」
あと一枚、もう一枚ヒールが引ければ、この窮地を脱することができる。
勢いに乗れたらとドローしたカードは――
「……ってやっぱダメかー!」
カードをダメージゾーンに置いて、三和が地面に腰を落とした。奇しくもそれは《ドラゴニック・オーバーロード》、攻撃側の櫂と同じユニットだった。
それを確認した櫂が、グローブを外して三和の側へとやってくる。
三和に右手を差し出して言った。
「俺の勝ち、だな」
「おうよ、派手に散ったぜ」
櫂に手を引かれて、三和は立ち上がった。
久しぶりに全力で戦ったファイトは終わってみると清々しくて、心地よい疲労を感じる。
「人の誕生日だってのにめちゃくちゃ楽しみやがって。今度こそなんかねーの?」
三和がそう言うと、最高に上機嫌な顔で櫂が笑った。
「お前に言うことなんかねーよ」
* * *
ぱちぱちと手を叩く音がして、櫂と三和はコートサイドを見やる。アイチとジュンが、二人に拍手を贈っていた。
熱いファイトをひとしきり称えて、二人がフィールドへとやってくる。
「二人ともお疲れ様!すごいファイトだったよ」
「アイチ……」
屈託のない賞賛を贈られても、三和は素直に喜べなかった。
アイチの両肩をがしぃっと掴むと、がたがたと揺さぶる。
「謀(はか)ったのか!?謀ったんだな!?」
「ごめっ、ごめん、ごめんなさい!」
「何故だ、何故お前がこんな……!」
映画のワンシーンか何かのように三和が言うと、アイチが冷や汗を浮かべながら笑って答える。
「だって今日は、エイプリルフールでしょう?」
「そんなこと言う子に育てた覚えはありません!!」
見かねたように、櫂が二人の間に入った。
「三和、あまりアイチを責めるな。アイチがここを指定したのは嘘じゃない」
「いやどう見てもお前の指定だろ!?」
「確かに、アイチの指定先は俺が指定した」
「IP偽装!?」
堂々とネタばらしをしてくる櫂に、三和のツッコミが追い付かない。
なんでそんなまわりくどいこと――という言葉は、確信犯なアイチの笑顔に阻まれる。
“どうだった?”
その表情に、三和も毒気を抜かれざるを得なかった。
「……とんだ誕生日だな、まったく」
だまし討ちなんてごめんなはずなのに、嫌だったかと聞かれたらそうじゃないから、自分の負けなのだろうと三和は苦笑する。
それに――
“宿縁の業火を鎮めし者よ、無限なる世界の再生を謳うがいい!クロスライド!《ドラゴニック・ウォーターフォウル “RE-BIRTH(リ・バース)”!!”
櫂がずっと使いこなせなかった《ドラゴニック・ウォーターフォウル》。そのクロスライドユニットが勝利を導いたということは――
(もう、大丈夫なんだな。櫂)
消えない涙はあるのだろう。それでも、櫂は櫂なりに答えを出したのだと、三和にはそう思えてならなかった。
そんな三人を微笑ましげに見ていたジュンが言った。
「楽しんでもらえたみたいで何よりだよ」
その言葉に、アイチが頭を下げる。
「ジュンさん、今日はありがとうございました」
「こっちこそ、面白いファイトだったよ。これで使いおさめなら、こいつも申し分ないだろうさ」
言いながら、ジュンはファイトテーブルに愛おしげに触れた。思ってもみない話に、三和が聞き返す。
「え、これもう使わねぇの?」
「さすがに年季が入ってるからね」
ジュンは多くを語らなかったけれど、後ろに控える裏ファイター達のメンツもちらほら入れ替わっている。ひょっとしたら、ここにも代替わり的なものがあるのかもしれない。
「それの最後が俺と櫂って……良かったのか?」
「言っただろう?申し分ないファイトだったよ」
三和へとジュンが笑いかける。
「……礼は必要ない、か?」
そんなジュンに、普段の調子に落ち着いた櫂が言った。ジュンは満足げに頷く。
「そんなガラじゃないはずだろう、お互い」
その言葉に、櫂がふっと笑う。
「そうだな」
ジュンと櫂の間にあるのは、似た者同士の暗黙の了解のような何かなのだろうか。
元気でな、と、そんな挨拶を交わして、三人は裏ファイト場を後にした。
* * *
「遅くなっちゃったけど、これ、僕からの誕生日プレゼント」
「え?」
帰り道、微妙に先を行く櫂の後ろのほうで、アイチは三和に小さな包みを渡した。
「ありがとう」
三和はぽかんとした表情で受け取る。中身はキャンディーボックスらしく、やっぱりアイチはアイチなのかと、妙な感動を覚える。
「……結局今日のって、言い出したのどっちなんだ?」
「最初にもうすぐ三和くんの誕生日だねって言ったのは僕だよ。そしたら櫂くんが、そろそろエイプリルフールだなって」
「言い直したわけだ」
「うん」
アイチは素直に相槌を打つ。
それで二人してサプライズを仕掛けようということになったらしい。
「あいつにとっちゃエイプリルフールのほうが重要なんだな」
三和が苦笑すると、アイチがくすりと笑う。
「でも櫂くん言ってたよ。三和くんの誕生日がエイプリルフールでよかったって」
「……え?」
言われた言葉の意味がすぐに呑み込めずに三和が聞き返すと、前を歩いていた櫂が振り返らないまま言った。
「余計なことを言うな、アイチ」
こっちを見ない櫂の表情は分からないけれど、その時点で照れ隠しだと言っているようなものだ。多分アイチが聞いたそのセリフ自体、口が滑ったようなものだったのだろう。
「……なーるほど?」
サプライズの意味がようやく腑に落ちて、三和の顔に満面の笑みが広がる。
無視を決め込んでいる櫂に、三和は後ろから走り寄ってヘッドロックでもかます勢いで抱きつく。
「ありがとなっ!」
「……っ、離せ!!」
「やーだね!」
別にこれくらい良いだろうと三和は笑った。抱きつかれた櫂の顔は真っ赤になっていることだろう。
素直じゃないもここまできたら才能かもしれない。何が嘘か何がほんとかなんてどうでもいい。嘘も本当もひっくるめて、今日の全部が、櫂からの誕生日プレゼントだった。
(ほんとにありがとう、櫂)
* * *
新しい一年が始まる。
何かが終わるかもしれない、何かが変わるかもしれない。
それでもきっと、ずっと――
fin.
Take a chance, YES, NO?
I can see my hopes and dreams
I'll fight until the end!
Just believe! You will see!
It's time to show the fire burning in me
DREAM SHOOTER/Sea☆A
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