リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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アイチくん誕生日おめでとう!
高校の中間テストはだいたいこの時期って認識であってますか。

■櫂くんと誕生日シリーズインデックス■
それはまるで、奇跡のような(三和くん誕生日)
続・それはまるで、奇跡のような(アイチくん誕生日)
奇跡のような日常世界(櫂くん誕生日)
日常世界の片隅で(レンくん誕生日)
それはまるで奇跡のような・リターンズ!(三和くん誕生日)

 奇跡のような奇跡を君に


 梅雨に入ったばかりとは思えないような快晴の日、午後三時を過ぎて落ち着いてきた暑さの中、三人の少年が街路を歩いて――否、走っていた。
「も、森川く、井崎くん、待って……っ」
 先頭を走る森川、井崎から数メートル後ろを走るアイチは、既に息が上がっている。
「なんだぁだらしねぇなあアイチ!体力の無さは相変わらずかー?」
「俺も結構いっぱいいっぱいだけどな!!」
 森川に遅れてこそいないものの、井崎も元気いっぱいとは言いがたい。
「ふっ、カードファイトが俺を呼んでいる……カード達の声が聞こえる限り、俺様が立ち止まることはなーい!!」
「テスト終わったのが嬉しいだけじゃねーか!!」
 今日は後江高校の中間テスト最終日だった。全力でつっこんでいる井崎も、唐突に始まったマラソンにつきあえる程度には開放感を満喫している。それはアイチも同じだったけれど、いかんせん基礎体力の違いは大きかった。
「よっしゃーいっちばーん!」
 カードキャピタルの扉の前で、森川が高らかに宣言する。井崎もまたやれやれと立ち止まって、後ろを振り返ることしばし。ゴールを目の前にして一気にペースダウンしたアイチも、へろへろと歩きそうになりながらもなんとかたどり着いた。
「おつかれさん」
「ありがとう……」
 疲労で弱々しいながらも、アイチの苦笑はどことなく晴れやかだった。

 * * *

 いつもの静かな機械音で、カードキャピタルの自動ドアが開く。森川に続いて井崎と共に中に入ると、聞き慣れた声が出迎えてくれた。
「いらっしゃい。テストお疲れ様。誕生日おめでとう、アイチ」
「ミサキさん。ありがとうございます」
「お兄さん!誕生日おめでとーございます!」
「ありがとう、カムイくん」
 今日が後江高校のテストが終わる日なのも、アイチの誕生日なのもみんなが知っていた。パーティーというわけではないけれど、打ち上げを兼ねて集まろうと言い出したのは、先頭を切って走っていた森川だ。ほとんど反射で店内を見回したアイチに、ミサキが苦笑する。
「アイツならまだ来てないよ」
「あ」
「まぁ、来るかどうかも分かんないけど……」
「……そうですね」
 ミサキがさらりと言ったセリフに、アイチがかすかに表情を曇らせる。アイチが探した相手――櫂も今年は受験生だ。テストが終わる時間もアイチ達二年生より遅かったはずだし、受験勉強に力を入れているのか、櫂はカードキャピタルを訪れる頻度自体が下がり気味だった。
(来れなくてもしょうがないよね……)
 残念な思いは禁じ得ないけれどと肩を落としたアイチに、ミサキがデッキを手に笑いかける。
「せっかくだし、どう、久しぶりにファイトしない?」
 ミサキもまた櫂と同じく受験生で、店番で顔を見るのは久しぶりだった。ということは、今日は特別に時間を取ってくれたのだろう。そんな気遣いが嬉しくて、アイチは偽りのない笑顔で返した。
「はい!」

 * * *

「ダメージチェック……トリガーなし。くっそー、俺の負けです!」
「やったぁ!ありがとう、カムイくん」
「お、じゃ次は俺の番だな!」
「お前少しくらいデッキいじったのか?」
「当然だ!さっきはグレード3が足りなかったようだからな。さらに最強のグレード3を――」
「だから減らせって言ってるのに……」
 ミサキ、カムイ、森川や井崎とひとしきりファイトしていたところ、不意にカードキャピタルの自動ドアが開く音がする。アイチが振り返ると、きらきらと目立つ金髪が目に入った。
「よう、楽しそうだな!」
「三和くん!……」
 ぱぁっと顔を輝かせたかと思うと、そこでアイチの顔が微妙にフリーズする。
「……だけ?って顔してんな」
「あっ、その、ごめん……」
 三和が一人で来ることがないわけではないのだが、どうしても櫂と一緒のイメージが強すぎて、期待してしまったのは確かだった。
「いーっていーって、せっかくの誕生日だし?おめでとさん」
「ありがとう」
「というわけで……ほい、プレゼント」
「えっ?」
 差し出されたのは、白い大きめの箱だった。ラミネートコーティングされたそれは、お菓子屋さんか何かで買ってきたもののように見える。
「これ……」
「「ケーキか!?」」
 食べ盛りの黒髪二人の声が唱和した。それが気に入らないように、カムイと森川がふんっと顔を背ける。
「あーっと言っとくけど俺からじゃない。いや俺からかな?これ運ぶの苦労したんだぜ。ひっくり返したら一巻の終わりだし」
 そこんとこ何も言わないのは信頼ってことなのかねぇ?そんな風に言いながら、アイチへと手渡してくる。
「それって……」
「俺はちゃんと言ったんだぜ?自分で持ってけって。でもアイツ、絶対嫌だの一点張りでさぁ」
 誰のことを言っているのか、知っている人間には疑う余地もない。しかし知っている誰もが、多かれ少なかれ意外に思いながら、その箱へと視線を注いでいる。
「あ、開けていい?」
 期待と不安からくる緊張で、アイチの声がうわずってしまう。
「もちろん」
 テーブルの上に置いて、アイチがおそるおそる箱を開く。
 中から現れたのは、真っ白なホールケーキ。そっけなく配置されたフルーツにはなんだか人柄が現れている気がしたけれど、中央にはきちんとチョコレートでできたプレートが置かれている。
 ホワイトチョコレートのメッセージも、彼が手ずから書いてくれたのだろう。
「……っ」
「お兄さん」
 カムイが驚いて声を上げる。感激しすぎのような気はしながら、息が詰まるのは止められそうになかった。
「……来てないのに一番おいしいとこ持ってった気がするね」
「ははっ、ほんと、ズルいやつだよな」
 本音なのだろうけれど、茶化すようなミサキと三和のコメントには、アイチを宥めるような優しさが滲んでいた。
 いつか聞かれた誕生日のイメージ。意外な人達が、自分を祝うために集まってくれたら。
 あの日のイメージとは全然違うかもしれないけれど、思い出さずにはいられなかった。
 思いがけない贈り物。

(やっぱり、泣いちゃうよ。櫂くん)


“Happy Birthday Aichi”


 fin.




あとがき
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