リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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櫂くんとオーバーロードがイメージで会話するだけ…なんだけどド鬱だよ!櫂くんがリバースしたあのシーンを櫂くんとオバロでやったら的なイメージ。
元はWorld's End Syndromeからの発展でほのぼの会話の予定だったんですが、櫂くんがЯしちゃったからこのザマ\(^o^)/
櫂くんがかげろう使い始めた時期とかクレイの設定とかわりと捏造満載です。
あと地味に紙で出す計画のあった話だったりとかして、縦書きにルビ・傍点とか使ってたりしたのでいつもと雰囲気違うかも。このブログだと行間が狭かったのでとりあえず行の高さいじりました…。

竜になりたい


 荒涼とした大地を風が吹き抜ける。視界の向こうには草原も広がっているその荒野に、一体の竜と少年はいた。かつては空から見下ろすことができたはずのその大地に、少年は――今の櫂は、立っていることしかできない。そもそも、竜と櫂が別々に立っていること自体が、それまでの櫂の常識からは異常なことだった。
 惑星クレイ。カードゲーム『ヴァンガード』の舞台となっている、地球によく似た星。ヴァンガードファイターは霊体となってその地に降り立ち、その惑星の生物に憑依(ライド)して実体化する。
 その惑星が実在している。初めてそう告げられたとき、櫂は正しい記憶を持っていなかった。自分が「かげろう」というクランで戦っていたということを、覚えていなかった。
『何を考えている? 我が主よ』
 声なき声が響く。ドラゴンエンパイアを支配する帝国の暴竜(ドラゴニック・オーバーロード)。戦いに生き、そして果てた、最強のフレイムドラゴン。
 俯いたまま、櫂は答えない。
 それに代わるかのように、遥けき大地の果てを見つめながら、オーバーロードが続ける。
『初めて出会った頃も、あなたはそんな顔をしていた』
 かすかに、何かが痛んだように、櫂が反応する。櫂が初めて「かげろう」のデッキを手にしたのは、交通事故で両親を亡くした直後だった。
 暗闇に突然放り出されたような感覚。叔父に手を引かれるまま、慣れ親しんだ故郷も離れるしかなかった。嫌だと叫ぶ力さえ、そのときの櫂には残っていなかった。
「……竜に、なりたかったんだ」
 ようやく声になったのはそんな言葉だった。
「何を恐れることもなく、何に怯えることもなく、悠久の時を戦いに生きる竜のように……強くなりたかった」

“いいか、イメージしろ。そのカードの剣士のように、強くなった自分を”
“それがイメージできたら、お前はいずれその強さを手にすることができるんだ”
“イメージは、お前の力になるんだぜ”

 いつからそんなことを言い出したのか、櫂は覚えていない。何も知らない子どもだった。自分が口にした言葉が持ち得る重さを、あの頃はまだ知らなかった。
 「かげろう」のデッキを手にした時、決して強くはない自分を、櫂は誰よりもよく知っていた気がする。それを認めたら負けなんだと、頑なに信じていた。何に対しての負けなのかも、分からないままに。
『あなたと共にあるとき、私は最も強く、最も勇壮な竜としていられる。それはあなたの力だ』
「それはお前のポテンシャルだろう。俺の力じゃない」
『いいや、分かっているはずだ、我が主よ。私はあなた、あなたは私。私の力は、確かにあなたの力だ』
「そうだな。……確かに、そうだった。イメージは力になる。……俺もそう思っていた」
 正直なところ、櫂は過去形で言葉を紡ぐのは苦手だった。嫌いだと言ってもいい。何かを押し流すような、何かを捨て去るような――諦めるようなその口振りが、櫂は嫌いだった。
「……だが、惑星クレイは実在してしまった」
 低く唸るような声だった。不意に、荒野に暗雲が立ち込める。それはヴォイドによって侵略されたクレイのイメージ。「かげろう」が封じられ、「なるかみ」が立ち上がったときの、ドラゴンエンパイアの光景。
 櫂はいつの間にかその世界にいた。真なる記憶を封じられ、埋め合わせるような記憶を与えられて。それは惑星クレイを守ろうとする立凪タクト――いや、タクトに憑依したエイゼルの苦肉の策だったようだけれど、今なら分かる。自分は、あの記憶操作に確かに守られていた。大切なものを、失ったことにさえ気づかないようにと。
 そして同時に、それを持たない友を、アイチを助けてやれなかった。アイチは自分だけの記憶を頼りにその苦境を乗り越え、そして打ち勝った。
 その背中を見送るしかない自分を、櫂は知ってしまった。
「終わりなき探求の果て、たどり着きし最終進化。荒ぶる魂を昇華させ、今こそ真の姿を現せ。ドラゴニック・オーバーロード……ジ・エンド」
 光の粒子を身にまとい、オーバーロードが姿を変える。宿敵との決着のために、命を力へと変換(か)えた姿へ。
「お前の宿願は果たされた。それが事実だ」
 オーバーロードは答えない。
「永遠に戦い続ける黙示録の炎。それはもう過去の陽炎(かげろう)。……今はもう、どこにもいない」
 きっ、と、俯いていた櫂がオーバーロードを睨みつける。竜は黙して語らない。
「――消え去れ幻想!」
 オーバーロードが――いや、世界全てが砕け散る。何もない闇の中。自分がどこに立っているのかさえ、櫂には分からない。
「俺はひとりだ。もう、ずっと前から!」
 絶叫は虚空に呑まれる。響くことさえない、時間さえ知らないそれは、どこにも届かない声だった。

 * * *

 ――――――……         
「リンクジョーカー、気に入ってくれたみたいですね」
 立凪タクト、今は代理人(エージェント)を名乗る――それが“誰の”代理人なのかは、実のところ定かではない――ヴォイドの端末は、櫂を見て満足げにくすくすと笑った。櫂の手には、彼に与えられた新しいデッキがある。
「ああ。俺にはこれが似合いだろう」
「ええ、あなたにふさわしいクランだと思いますよ」
 エージェントに言わせればヴォイドそのものであるリンクジョーカーには、倒した相手を逆転(リバース)させる力が備わっている。それは、ヴォイドがクレイと地球を侵略するための力なのだ。けれど今の櫂には、そんなことはもうどうでもよかった。
 アイチやレンと対等に渡り合える、その確信が得たい。櫂が願うのはただそれだけだ。
(俺には何も無い。それでも俺は、お前たちに会いに行く)
 壊すことしか知らない、侵略者としてでも。
 未だ意識に上らないその志向の意味を、櫂はまだ知らない。


 終


 ユニット座談会
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