リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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櫂くん誕生日おめでとう!
日付詐称してすみません\(^o^)/
しつこく一年強続けたシリーズ完結編です。

■櫂くんと誕生日シリーズインデックス■
それはまるで、奇跡のような(三和くん誕生日)
続・それはまるで、奇跡のような(アイチくん誕生日)
奇跡のような日常世界(櫂くん誕生日)
日常世界の片隅で(レンくん誕生日)
それはまるで奇跡のような・リターンズ!(三和くん誕生日)
奇跡のような奇跡を君に(アイチくん誕生日)

 奇跡のあとの日常世界


 青い空と白い雲が一番似合う季節といえば、やはり夏だろう。さんさんと降り注ぐ日差しは絶好の水遊び日和だったが、仮にも受験生と呼ばれる身分の櫂と三和には、あまり関係のない話だった。今日も補習と言う名の半日授業を終えて、三和は櫂に尋ねた。
「櫂、今日返ってきた模試どうだった?」
 櫂は澄ました顔で答える。
「問題ない」
「さーすがぁ……」
 対照的に、三和の声にはまったくもって覇気というものがない。
「悪かったのか?」
「悪くはねーけど……よくもない」
 そんな調子でとりとめもなく話しながら校門まで来ると、耳慣れた声が二人の名前を呼んだ。
「櫂くん、三和くん!」
「おぉ、アイチ!」
 三和の声の隣で、櫂も顔を上げると、二人のもとへとアイチが駆け寄ってくる。
「どうしたんだ?」
「えっと……二人とも、忙しいとは思うんだけど、明日の午後、空いてるかな」
「明日?……あぁ!」
 なんのことか気づいた三和が空いてると答えるより早く、櫂が口を開いた。
「先約がある」
「えっ……」
 出鼻をくじかれて、アイチが言葉をなくす。同じく意外だという顔で三和が櫂を見やる。
「先約ってなんだよ」
「答える必要はない」
 相変わらず取り付く島の無い櫂の言動に、アイチがしょんぼりと肩を落としている。
「そ……っか。それじゃ、しょうがないよね……」
 ごめんね、と言おうとしたアイチに、櫂が続けた。
「誰も行けないとは言っていないぞ」
「えっ?」
「それが済んだ後でいいなら」
「それを先に言えよ!?」
 間髪入れない三和のツッコミにも、櫂の真顔は一ミリたりとも崩れない。
「夕方になるかもしれないが、それでもいいか?」
「うん、もちろんだよ!!ありがとう、櫂くん!」
 ぱあっと輝いた表情でアイチが頷く。カードキャピタルで会う約束を交わして、三人はそれぞれの家路についた。

 * * *

 次の日、補習終わりに櫂の教室へと様子を見にきた三和だったが、教室の中に櫂は見当たらなかった。
「――また後つけようとでも思ってるのか?」
「ぅわっ!?」
 しかし真後ろから声をかけられて、三和の声が裏返る。振り向くと、見慣れたポーカーフェイスの櫂が立っていた。一瞬咎められたのかと思ったけれど、どうやら気分を害しているわけではないらしい。
「いや、そこまで考えてなかったけど」
 驚きすぎの心臓を押さえつつ冷や汗で三和が答えると、そうか、とも言わずに櫂は歩き出す。ほぼ習慣で慌てて歩調を合わせても、追い払われるでもない。
 他人のざわめきが遠巻きになった頃、不意に櫂が呟くように言った。
「……墓参り」
「え?」
 目を伏せるように、視線は前に向いたままで櫂は三和に語りかける。
「今日の用事はそれだけだ。だからカードキャピタルで待ってろ」
 昨日は絶対言いたくなさそうだったのに何故――と思ったけれど、答えはすぐにわかった。
「……昨日言わなかったの、アイチがいたからか?」
「……まぁな」
 もう六年前、櫂が一度この町から引っ越した理由を、今でも知る人は少ない。櫂本人が言わないのはもちろん、口止めされているわけではなくても、三和とてそう軽々しく話せることでもなかった。
 何も言えずに二人歩いていると、ぽつりと櫂が続ける。
「……アイツには、知られたくない」
 ゆっくりとした言葉のテンポは、今ここに流れている時間の速さだろうか。それでも止まってはいないことを、櫂は知っているだろうか。
「……いいんじゃねーの?」
 一呼吸おいて、にかっと、空気を打ち消すように三和は笑った。
「お前の弱みだもんなー」
「弱みとか言うな」
 三和の作り出した流れに、櫂も乗ってくる。
「いいじゃん、弁慶の泣き所のひとつやふたつ」 
「やだね」
 ほんとに意地っ張りで、でもそれが自然で。
 恰好つけたい相手くらいいるだろう、意地でも守られたくない奴だって。
 櫂にとっては、それがアイチなのだ。
「――櫂!」
 分かれ道、別の道を行く背中に、三和は呼びかけた。櫂が振り向く。
「今度俺んち遊びに来いよ」
 ふっと笑って、櫂が答える。
「そのうちな」
 懐かしい何かに、手が届いた気がした。

 * * *

 それから数時間後。
 和気藹々とにぎわうカードキャピタルで、三和の携帯が着信メロディを奏でる。着信したメールは櫂からのものだ。
「あと十分くらいで来るってさ」
「本当? じゃあそろそろ待機しないと」
「それは気が早くねーか?」
 俄然そわそわとし始めたアイチに、けれど三和も楽しそうだ。その向かい側では、カムイがポケットの中身を確認している。
「つーわけで、あと十分くらいだって」
「了解」
 笑ってそう答えたのは、レジに座っているミサキだ。保護者である店長は受験勉強があるんだからとミサキの店番を渋っていたらしいが、もともと尋常ではない記憶力で成績の良いミサキだ。どうせ本は読めるしと、小中学生の来店の増える夏休み中のバイトを買って出ていた。
「けどアイツ、どんな顔するんだろ」
 素朴に言ったカムイに、アイチが笑う。
「僕も想像つかないなぁ」
 ちらちらと出入口のほうを見やりつつ、他愛ないおしゃべりで時間を潰す。時計を確認すれば、櫂が予告した時刻はもう少し先なのに、店の前を見知らぬ通行人が通り過ぎるたびにちょっぴりがっかりしてしまうのもご愛嬌だ。
「そろそろかな……」
 メールの着信から、十分を少し過ぎたころ。
「――来た!」
 見慣れた制服姿の櫂が、ポケットに両手を突っ込んだままやってくる。
 しゅいーんと自動ドアが開いて、櫂が店に一歩入ったその瞬間。
「「「「誕生日おめでとう!!」」」」
 掛け声と同時に、数個のクラッカーがぱんぱんっと音を立てる。アイチ、三和、ミサキ、カムイ、井崎。不意打ちに目を丸くした櫂の前で、音で初めて櫂に気付いた森川が「食らえ!」とワンテンポ遅れてクラッカーを鳴らした。
「……くっ、ははははっ!」
 それが引き金になったのか、櫂が噴き出す。
「櫂が笑ってる……」
 まさかの爆笑に見舞われる櫂に、カムイも呆然とするしかない。
「ふっ……あはははっ!」
「ミサキさんまで!?」
 釣られたように笑い出したミサキに、アイチも驚愕する。
「いや、なんか、ツボって」
 言いながらミサキは目の端をぬぐっていたから、どうやら泣くほど面白かったらしい。
 櫂もひとしきり笑い終えて、まさか爆笑されるとは思わずに硬直しているアイチに視線を向ける。
「お前が仕掛けたのか?」
「う、うん。櫂くん喜んでくれるかなーって……」
「そうだったのか!?」
 てっきり驚かせようとしていたんだと思っていた三和が突っ込む。三和は完全にそのつもりだった。
「バカな奴だな。俺がどうすれば喜ぶかくらい知ってるだろう?」
 すっと、櫂がポケットから取り出したものは当然、ヴァンガードのデッキだ。
 もちろんアイチも、用意していないわけがない。
「――うん!」

「「スタンドアップ!」」
「ザ!」
「「ヴァンガード!!」」

 * * *



 霊前で櫂が告げたのは、告げられたのはたった一言だけ。

“この町に帰ってきてよかった”

 それが、生まれ落ちた町で二年半を過ごした櫂の答えだった。



 fin.




あとがき

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あと最近転載しているTwitterはpixivのプロフから飛べます。非公開中です。なんでそんなめんどくさいことしてるんだなんて聞かないであげてください。コミュニティごとに人格切り替えないとパニックになるタイプなんだよ!!(明らかに最初にpixivとHP切り離したのが敗因)

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