リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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Beat the wall」続編。最初書いたときは前の話がこのタイトルだったりした。
148話のЯ三和VSジュンを観戦してます。時間経過に無理がありますがそもそもご都合主義空間なので適当に流してください。
ちょっと精神力使い果たしてあやうく成仏しかけたのは秘密です。
追記:修正しました。もともとこっちを言わせていいものか悩んで不採用にしてたんですが、ナオキが言ってくれたので。


 どれくらい経っただろうか。不意に、三和の視界が開けるように光が差した。現実世界の光景が、櫂がいる壁の向こうとは反対側に映し出される。
「お前がファイト見えるって言ってたの、これか?」
「ああ。どうやら、ファイトするのはお前のようだな」
 光に気付いてかこちらを向いた櫂の視線は、やはりスクリーンのように投影された現実へと注がれている。
 見えない壁を挟んで微妙に斜めにズレた位置で、二人は同じ光景を見つめる。画面の中のもう一人の三和と、ここにいる櫂と、二人ともが両手をポケットにつっこんでいることは、三和の視界には入らなかった。
 彼はどうやら裏ファイター達を押さえに来たようで、異変に気付いたジュンが彼を問い詰める。

『櫂が何故リバースしたのかは知らないが、奴を止めようとして、逆にお前がリバースされたことは想像がつく。何故なら三和、お前は櫂が心を許す、たった一人の友だからだ』
 画面の中で、自嘲するように三和は微かに鼻で笑う。
『何故だ三和。何故櫂に手を貸す。今の櫂は明らかに間違っている!』
 分からない奴だなと、三和がため息をついた。
『櫂だからさ。あいつはいつも一人。俺だけでも、そばにいてやってもいいだろう?』

「……なんか俺はすごいことを言ってるな!」
 冷や汗を隠して真顔で茶化した三和に、背後からの答えは無かった。これはなかなかにいたたまれない。一人でもそうだったろうに、本人がそこにいるからなおさら。
 どんな顔で聞いているのか、正直言って振り向くのは怖い。
「……お前がさっき言ってたことと、たいして変わらないだろ」
「え」
 そう思っていたのに予想外に冷静な答えが返ってきて、三和は振り向いてしまう。
 苦悩するように眉根を寄せた櫂は、それでも彼らから視線を逸らさない。

『かげろう? 櫂のデッキか』
『そうだ。リバースしてさらに強化されている』

 だんっ!と、唐突に聞こえた音に三和がびくっと体を竦ませる。振り向けば当然そこには、壁を殴りつけた櫂が見えた。俯いたその表情は三和には分からない。
「おい、ひとつ聞くぞ」
「な、なんでしょう?」
 明らかに怒気を孕んだ声に、怯えた笑顔で三和が答える。
「あのときも、今も。何故かげろうを選んだ。……何故、俺のデッキなんだ」
 なんだそんなことかと、拍子抜けして三和は息をつく。
「ダチだからだよ。お前を止めるにしても、力を貸すにしても、俺はお前の側にいるって、そう……」
 そこで三和は口をつぐんだ。言えなかったのではない。どう続けるべきか迷ったからだ。
 けれど代わりに何かを思いついて、中途半端に振り向いていた体を改めて櫂の――壁のほうに向ける。打ち付けられた拳に重ねるように壁に触れると、その向こうにある櫂の手に触れているような温度差を感じる。
「……やっぱな。さっきから、なんっか変なんだよなーこの壁」
 茶化すような口調とは裏腹に、三和の目は真剣だった。その目を見て、櫂が怪訝な顔をする。
「お前は何も感じないか?」
「……ああ」
「そっか。……ふーん……」

『ドーントレスリバースの、リミットブレイク!ゴジョーを呪縛(ロック)!』

「……うぉっ!?」
 唐突に、壁の抵抗を失って三和は体を支えきれずに櫂へと倒れこんだ――そう、櫂のいる側へと。
「――っ!」
 後ろにたたらを踏みつつ櫂が咄嗟に受け止められたのは完全に反射の賜物で、事態はまったく呑み込めていない。呆然とする櫂の目の前で、三和は振り向いて自分が来た方を確認する。ぺたぺたとした手ごたえはそこに依然として壁があることを物語っていたが、それについて一言。
「おお、抜けた!」
 一片の曇りもなく感嘆した三和の背後から、なんだか真紅に染まっていそうなオーラが立ち上がる。
「なにを、寝ぼけたことを……言ってるんだ!」
 そう怒鳴って、櫂が三和に掴みかかる。
「言っただろう、ここに出口は無いんだぞ!?」
「聞いたけど、でも向こうもだだっ広いだけだったし――」
 櫂の剣幕に冷や汗を浮かべつつ苦笑でいなそうとして、三和は気づいた。
 自分の首元を掴んだ手が、微かに震えていることに。
「何故、そこまで……!」
 三和は困ったように笑うと、櫂を受け止めるようにして、二人分の体重を背にした壁に預けて宙を見上げる。
「……こうしたかったから、かな?」
 その向こうでは、今もジュンとリバースした三和が戦い続けている。
「何言って……」
「まぁ聞けって。さすがにお前は気づいてんだろ? リバースファイターは絶望の先を歩いてる……絶望の中で足掻いてるって」
 身じろぎもしない櫂の無言は、肯定を物語っていた。
「それこそお前が、壁が壊せなくて絶望してたこと、俺は多分知ってたんだ。できることなら、力になってやりたかった。もっと近づけたら、櫂のためだけにいられたら……。だけど、それが無理なのも俺は知ってた。だってさ、どんなに頑張ってお膳立てしても、戦うのはお前だから。最後の最後は、俺は見ていてやることしかできない。……それが俺の絶望だった」
「お前がいなかったら、俺はここまで来れてない」
「はは、さんきゅ」
 珍しいどころではない素直なセリフに、三和は軽く笑う。
 けれど、笑ってばかりいられないのも確かだった。
「……今もあいつは絶望してる。破滅に向かうお前を止められないことに。今でもお前が一人なことに。だから呪縛の力を使って、お前が感じたのと同じ痛みを、せめてもの絆の証にしてる……」

 ジュンと三和のファイトは佳境を迎えていた。
『櫂のところへは行かせない。――ファイナルターン!』
 三和がジュンをリバースさせるのは、時間の問題だった。

 震える声で、櫂が絞り出す。
「……お前を巻き込みたくなかった」
「俺は巻き込まれたかったんだよ」
「バカだ、お前は……!」
「あんまバカバカ言うなって、結構傷つくんだぜ?」
「それ以外なんて言えばいい。こんな……!」
 かすれた声で、囁くように櫂が続けた。
「……こんなバカを止められない俺が、一番バカだ」
「バカでいいんだよ」
 ずっと俯いたままだった顔を上げて、櫂が涙をぬぐう。
 今度こそ隠し切れない泣き顔は、いつもよりずっと幼く見えた。
「お前がバカだから、俺はここまで来れたんだぜ?」
「バカばっかりだ、本当に」
 それでもその声には、今までよりもずっと、確かな何かが宿っている。
 泣きはらした顔に涙の跡は消えなくても、暗い影はもう見えない。
「……お前のためにも、俺はここを出なければいけないんだな」
「ああ。俺にできるのはここまでだ」
 真剣な顔で三和が頷く。
「リバースは、不可能を可能にする力じゃない。が……」
「壁を壊すのは不可能じゃない」
 明るく笑った三和に、櫂も微かな笑顔を返す。
 やわらかな優しさが、二人を満たしていく。
「今の俺達は夢みたいなもんだから、これにどれくらい意味があるかは分かんねえけど……」
 三和は櫂の手を取って言った。
「俺の全部、お前に貸すから。一緒にここを出よう」
「お前を連れて、俺はここを出る。……約束する」
「うん」

 どうかこの誓いが、絶望の中で戦う彼らに届きますように。
 それは同じ形をした二人の希望、最後に残された祈りだった。


+++

前世ユベルと王子の永遠の愛の誓いと、十代とユベルの超融合と、オネストが藤原のもとに戻ったシーンを主にモチーフにしています。ただそれに加えて互いに拒絶しあうことしかできなかったD藤原と絶望吹雪のパターンがあって、その場合三和くん救済されるんだろうか(櫂くん三和くんになんか言ってくれるんだろうか)…って不安になってしまったので、pixivのほうではちょっと公開を停止しました。
最終的にЯ櫂くんは三和くんの手を完全に振り払ったし、Я三和くんはそれを分かっててЯ櫂くんの行く道を露払いしようとしてるんだろうしな…って…orz
櫂くんが三和くんリバースを躊躇ったことに、希望を見出したいんですけど。
アモンが呑まれた闇から、十代が、藤原が抜け出しきれなかった闇から、櫂くんは抜け出せるんだろうか。(アイチも三和くんもその闇ともつながってるのが厄介なんだよな…)
追記:ナオキくんのお蔭でどこに希望があるのかわかってきたのでセリフ修正して再公開しました。
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