リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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当時森川の扱いにもやっとしつつ見てた後江CF部のジエンド森川を補完しつつ櫂くんのリバース別パターンイメージ。櫂くんがリバースした真相(そんなものがこれ以上出てくるのかもよく分かりませんが)予想は私はこれでFAにしたいです(願望)
追伸:カムイとアイチ見て修正しました。
サブタイ元ネタは↓

これの「公約数を知りたくて君を見ても2でも3でも割れない素数だったよ」がすっごく切ないんだ!!!って何回言ってもなかなか分かってもらえません(笑)


 桜咲く春の頃。宮地学園高等部に外部から進学したアイチは、新しい環境にまだまだ戸惑っているようだった。宮地学園には、ヴァンガードに興味を持つ人間は少ない。
 そんなとき、アイチのクラスメイト、石田ナオキがカードキャピタルへとやってくる。アイチとファイトして負けたナオキは、デッキだけ買って店を飛び出してしまった。
 せっかく同じ高校の生徒とヴァンガードができたのに、楽しませてあげられなかった。そう落ち込むアイチに、櫂はこう言った。
「デッキを買って行ったんなら、そいつはヴァンガードに興味を持ったってことだ」
「あ……そうか」
「しっかりしろ、お前は先導者なんだろ」
「そんな。あ、でも……もし石田くんがヴァンガードに興味を持ったんだったら、僕から声をかけてあげなきゃ。ありがとう、櫂くん」
 ファイトのときとは打って変わって頼りない日常のアイチに、櫂は口を出さずにいられない。放っておいても、アイチは気づいたと思うのに。
 それは三和の言うように優しさだったのか、それとも、櫂自身が感じていたように――焦燥の裏返しだったのか。


 虚数解―櫂君の割り切れない気持ち


 部室棟の片隅の廊下では、ドアを開けずともがやがやとした声が聞こえる。櫂と三和が連れ立って向かう先は、今年度設立したばかりのカードファイト部だ。
「ちーっす!」
「よお、遅かったな!」
 がらりとドアを開けた三和が声をかけると、ファイトを観戦していたカムイがこちらを向いた。本来後江中に通うれっきとした中学生のカムイだったが、今度あるという対外試合の助っ人部員として、特例でこの後江高校に来てもらっていた。
「ジャガーノート・マキシマムで、ヴァンガードをアタック!」
「くっ……ノーガードだ……!」
「やってるな、今日の調子はどうだ?」
「いつも通りマケミが負けまくってるけど、今やってるやつはマケミの野郎が鬼引きで勝ってるぜ」
 言われた通り、手札が尽きた井崎のダメージゾーンに6枚目のカードが並ぶ。どうやら決着はついたらしい。
「ふっ、見たか、これがグレード3の恐ろしさだ……!やはりグレード3デッキは最強だな!はっはっはっは!!!」
 グレード3が実に五割を誇る森川の構築は、ライド事故が頻発することとブースト不足になりがちという致命的な欠点があるものの、着実にライドできてトリガーさえ引きまくれるなら、勝つこと自体は不可能ではない。
「今回は俺の負けだ……けどなぁ!明らかに負けのほうが多いんだから少しは構築に疑問持てよ、マジで!!」
「確かに、さらなる強力なグレード3の投入を恐れてはいかん」
「そういうことじゃなくてー!!」
 何を言っても聞こえていないような森川も森川だが、井崎もよくツッコミ続ける体力があるなと、恒例のやりとりに感心し始めてしまう三和だった。
 そんな二人を横目に、カムイが意気揚々と櫂に声をかける。
「それで、今日は試合に向けて最終確認するんだろ?」
「ああ」
 短く答えた櫂は、カバンからデッキを取り出す。
「俺はなるかみで行く。お前もデッキは決まっているな?」
「ああ、バッチリだぜ!」
 自信満々で答えたカムイに、櫂は満足げに口の端をあげる。
「なら、いくぞ」

「「スタンドアップ!!」」
「ザ!」
「「ヴァンガード!!」」

 * * *

「……仕上がりは上々、と言ったところか」
「くっそー、あとちょっとだったのに!!」
 結果は櫂の貫禄と悔しそうに地団駄を踏むカムイを見れば一目瞭然だった。
 観戦していた三和も混ざって暫くファイト内容の検討して、三和がよしとまとめに入る。
「いい感じだったな。……あ、そうだカムイ、お前ちょっと森川とファイトしてくれよ」
「え?」
「なんだなんだ、今度はお前が俺様の最強デッキの錆になるのか? あん?」
「ケッ、だーれが!錆になるのはお前のほうだぜ」
「貴様……どうやら立場が分かっていないようだな。これが神聖なる部活動である以上!俺様はお前の先輩様なのだ!!敬ってへつらえー!」
「お前だって櫂も三和も先輩とか言ってねーじゃねーか!どーしても呼ばれたいんだったら俺様を倒すんだな!」
「いい度胸だ!」

「「スタンドアップ!ヴァンガード!」」

「……さて、と。んじゃ、引き続き井崎はそっちの監視頼むな」
「おう、任せろ」
 煽りあうだけ煽りあってファイトを始めた二人を尻目に、三和と井崎はにやりと含みのあるアイコンタクトを交わす。森川達がこちらを気にしていないのを確認して、三和は櫂に言った。
「もう一個のデッキ、持ってきてるよな?」
「……本当にやるのか?」
 話を振られた櫂は、若干渋い顔をしながら言われた通りもう一つデッキを取りだす。
「あいつあのまんまじゃ黒星一個確定だろ? 俺はそれはどーかと思うんだよねー。デッキさえまともなら普通に強いんだしさ。そういう可能性を引き出してやるのも先輩の務めだと思うわけよ」
 うんうんとわざとらしく頷いている三和には、舌先三寸という言葉が似つかわしい。
「それに試合形式はくじ引きだって話だし。アイチと当たる可能性、上げたくねえ?」
 にやりと、面白がるように三和は笑う。
「………」
 三和と井崎の企みは、櫂が構築したデッキを森川に使わせること。しかも森川本人の了承を得ずに、だ。櫂としては、かなり躊躇する話だった。
 しかしアイチの名前を出されてしまうと、今の櫂はその躊躇すら踏み切ってしまいそうになる。
 宮路学園でカードファイト部を設立するために奔走しているというアイチは、当然ながらカードキャピタルに来ることは少ない。その間にアイチがどんな成長を遂げているのか、櫂には想像もつかない。
 そのことが何故か、今の櫂にはひどく不安だった。
「……とにかくデッキの仕上がりはチェックする。お前もデッキを出せ」
「おうよ!」

「「スタンドアップ」」
「ザ」
「「ヴァンガード!」」

 * * *

 結局のところ、森川は櫂の構築したドラゴニック・オーバーロード・ジ・エンドを擁するかげろうデッキでも、アイチに勝つことはできなかった。そのことに誰より衝撃を受けたのは櫂だ。森川はデッキの性能を十分に引き出して戦っていた。
 けれど、櫂が本当にショックなのは、敗北それ自体ではないのかもしれなかった。
(今の俺では、アイチには届かない……)
 どうしてか当然のように、櫂は考える。それはどこかで予感していた結末だった。
(デッキの完成度が不十分だとは思えない。戦える力はあるはずなんだ。なのに何故……勝てる気がしない……?)
「……馬鹿なことを」
 内心を打ち消すように、櫂はそう口に出した。
(弱気になるな。足りないと思うなら強くなればいい。それだけのはずだろう?)
 言い聞かせてみても、心にかかる暗雲は、一向に晴れる気配を見せなかった。


 ―――>>>>>>>><<<<<<<<―――


「……今のままではお前は勝てない」
 暗闇の中で、静かな声が告げる。
「だったら、今より強くなればいい、それだけのことだ!!」
「違うな、お前がお前である限り、お前はアイチには勝てない。いや――」
 闇は絡みつくようにして、櫂の自由を奪う。
「――お前はアイチと、戦うことすらできない」
「なに、を」
「お前の強さの源は孤独。お前の強さは、孤独を磨き上げて手に入れた強さだった。だがアイチは違う。アイチの強さは、誰かに導かれ、誰かに支えられて手に入れた強さだ」
「何が言いたい……」
 言葉の意図を測りきれずに絞り出した声は、呻き以上にはならなかった。
 色の無い冷静な声が、櫂へと問いかける。
「それを導いたのはお前だろう。お前こそが、アイチに絆への道を開いた。……お前はアイチを目の前にして、孤独なままでいられるか――?」
「――っ!」
 今度こそ完全に、息が止まった。
 ずっと感じていた違和感。完全に、急所を突かれていた。
「お前はアイチを相手に本気になれない。アイチを相手に、お前はお前でいられない」
「あ……あ……!」
 その通りだ。
 アイチに対して本気になれない。
 アイチに対して、勝ちたい気持ちが湧いてこない。
「お前がアイチと戦う運命は最初から奪われていた。……それを取り戻したいと願うなら」
 す、と、不意に闇が質量を増す。
 彼の手にひらめいたのは、個性の抜け落ちた無銘の剣(つるぎ)。
「選択の時だ、櫂トシキ。お前はどちらを取る。孤独を極限まで磨き抜いたファイターとして、真の強さを手にした先導アイチと戦う運命か。それとも――」
 走馬灯のように、かつて焦がれた光が櫂を駆け巡る。初めてのアイチとのファイト。彼がライドしたブラスター・ブレードのイメージ。彼の想いを拒絶しきれなかった、ドラゴニック・オーバーロード。
「――お前が夢に見た強さに、永遠に出会わない運命か」
「……お前は、俺なのか」
 掠れた声で囁いた櫂の鳩尾を、冷たい刃が貫く。
「……ああ。さよならだ。櫂トシキ」
 そう告げた瞳から、零れた雫が紅(くれない)に凝(こご)った。


 fin.


諦めない それでも僕は諦めない

eとiとπの式じゃ表せない
僕らだけの秘密の未来 求めるための問題に
解なんか無いよ

たかし君の割り切れない気持ち/デッドボールP feat.結月ゆかり

あとがき
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