君と見つけたユートピア（雀ヶ森レン）

Я櫂vsレンでレン様があまりに幸せそうだったのでレン様のモノローグ勝手なイメージで増量してみた。
レン櫂表記してたんですが、やっぱりなんかレン様単体のような気がするのでこれで。

「「スタンドアップ！　ザ・ヴァンガード！！」」

　テツを倒したほどの実力者、強さを求める渇望の伝染、世界中のファイターを巻き込む行動範囲。
　この事件の中心には君がいる――そう確信したとき、僕の中に湧き上がったのは紛れもない歓喜だった。
　あの櫂が、今も更なる高みを目指して走り続けている。何者をも顧みないほどの強烈さで。
　君はどんな強さを手に入れた？　僕の力はそれに敵う？　僕はそれが知りたい。
　だから研究した。リンクジョーカーを、そして、君に勝つための強さを。
　いつか君が挑んできてくれた日を、超える瞬間を願って。

「ジャッジバウ・撃退者(リベンジャー)」
「レッドパルス・ドラコキッド」
「……！　かげろう」

　そして君は、僕の期待を見事に超えてくれた。

「この気まぐれな僕が、珍しく研究してきたんですよ？　リンクジョーカーデッキを。なのに君は、その予想をいい意味で裏切ってくれた」

　だから応えよう。僕が手に入れた最高の力で！

「大いなる野望を刀身に乗せ、道を切り開け。幽玄の撃退者(リベンジャー) モルドレッド・ファントム！」

　君がどんな力を手に入れたとしても、僕はその上を行くつもりでいた。
　そう、どんな力でもよかった。それでも――

「さあ櫂、見せてよ、君の力。そのパワーに僕がおそれ、ひれ伏すような強さを！！」
「ライド・ザ・ヴァンガード！　この世の全てのものを焼き尽くす、黙示録の炎！！」

「ドラゴニック・オーバーロード！！」


　――それでも、何よりも君にふさわしいその力と戦える、これ以上の歓喜などありえない！


（オーバーロード――その名こそ、This is the 櫂トシキ！　魂のユニット！！）

　ファントム・ブラスター・オーバーロード、それは君への憧れのなれの果て。
　PSYクオリアに囚われたまま、僕は君の想いを拒絶した。
　それでも君は最後まで、そんな僕を責めることはしなかった。
　できなかったんだ。君は――君のイメージはもう、僕の闇に呑まれていたから。

（僕は知ってる。破滅の力に手を出すことを、君に許せたはずがない。負ければリバースするのなら、敗北だって認められない。だから最後に決断したのは、「君じゃない誰か」だ。虚無(ヴォイド)はその空白に取りついた。ヴォイドは知らなかったんだ。君じゃない君、そこにこそ“本当の君”がいること――そう、永久に消えない黙示録の炎が！）

「来い、レン！」
「彼方より現れし幻獣、心を惑わし、魂もろとも裂き砕け！　クロスブレイクライド！　撃退者(リベンジャー) ドラグルーラー・ファントム！」

　これが僕の本当の姿。
　こんな僕を見て、君はなんて言うだろう。
　世界滅亡を前にして――僕は今、君に挑戦できることが楽しくて仕方ない！

「――ファイナルターン」
「ふふ、そうでなくてはね」
「すべてを焼き尽くす煉獄の炎の中で、再び蘇る。再誕！　炎の最強竜！　クロスブレイクライド！　ドラゴニック・オーバーロード“The Яe-birth”！！」

　業火の中で蘇ったのは、かつて僕が葬った力。
　なのに何故だろう――僕はひどく嬉しいんだ。
　僕を裁かない君の甘さ、僕を裁けない君の優しさ。
　君の愛に阻まれて、僕は君に触れられない。

　虚無に奇妙に捻じ曲げられた、こんな運命の中でしか。

（――いいえ、そうじゃありませんね）

　運命を捻じ曲げたのは君自身。君は君のために作り上げたんだ、僕のためにあるようなこの舞台を。

（ここで終わらせるなんて、もったいなさすぎる……！）

「ダメージトリガー、チェック。……ヒールトリガー、一枚回復」

　結末は揺るがない。その結末を君も僕も知ってる。
　だけどそれは、その結末を見ない理由にはならない。
　君の目はそう言ってる。
　僕も同感だよ、櫂。

「セカンドチェック。ヒールトリガー、一枚回復」

　定まった運命を証す最後の一枚を前に、僕の手が止まった。

「……俺の勝ちだ、レン」
「分かっています」

　山札の中にヒールトリガーはもう無い。
　最後のダメージトリガーは――クリティカル。

「強い。これでこそ、櫂。……うっ……ぐあっ……」

　僕を満たすのは虚無じゃない。
　得も言われぬ高揚。

「そう、ずっと君と、こんなファイトがしたかった……！」


　最高だったよ、櫂。
　世界の果てで、君と踊るのも悪くない。


　fin.



楽屋オチ