リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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最終回でレンがAL4の服着てきた理由を後日櫂くんが聞きに来る話。レン様が告白する話でもある\(^o^)/「レンの望み」って結局こういうことだったんじゃないのかなー?というのを告白させています。愛だ…。
Twitterのほうでいろいろと暴走してしまったのでケジメに…とか思ったはずが、「ぼくがかんがえたさいきょうのかいくん」になってしまうあたり歪みないのは私なのか櫂くんなのか。私櫂くんのことナメてたよ…YKS。

「レン、櫂の奴がお前を訪ねてきているが、どうする」
 ぎっ、と、レンの座っていたチェアーが軋む音がした。動揺しすぎて思わず真顔になったレンが、テツに問い返す。
「……なんで突然櫂が来るんですか?」
 レンの動揺などどこ吹く風で、テツは淡々と答える。
「ショップ大会のときのお前のふざけた格好の真意が問いたいらしいぞ」
「テツも一緒だったじゃないですか!」
 言葉選びに、反射的な甘えに、会話の端々に二人の親しさが滲む。ここ最近はビジネスの話をすることも増えたけれど、こんなときにはやはり昔のままの幼馴染だ。
「首謀者はお前だろう」
「そうですけどー」
 卒業式の日、昔着ていたフーファイターAL4の衣装でカードキャピタルを訪れたことを、櫂に不審に思われたらしい。思い入れて着て行ったのだから気にしてくれるのは願ったり叶ったりと言いたいところだが、まさか向こうからそのわけを尋ねに来るとは想定外だ。
 悩んでいる頭の中身そのままのようにチェアーごと左右に揺れるレンに、テツが告げる。
「……最後だからな。名残は残したくないんじゃないか」
 もう一度、レンの動きが止まった。すっと、音もなく表情が抜け落ちる。
 櫂は卒業後ヨーロッパに拠点を移し、プロファイターとして戦っていくと決めた。そう簡単には日本に帰ってくるわけにもいかなくなることを、レンも知っている。
 そんな櫂のことを半眼でイメージすれば、ただ前を見据える彼の後ろ姿が、脳裏にありありと浮かんでくる。
「……確かに、そういう人ですよね」
 くるりと、テツに背を向けて言った。
「分かりました。通してあげてください」

 Graduation

 夕陽の差し込み始めた執務室に、自動ドアの開く音がする。立ったままガラスの向こうを見つめていたレンは、振り向いて待ち人へと微笑みかけた。
「いらっしゃい、櫂」
「ああ……」
 櫂は戸惑うように相槌を打つ。話の切り出し方を見失ったらしいと思いながら、レンは櫂の傍へと立ち寄って話しかける。
「まだ制服なんですね」
 そう指摘されて、櫂はバツの悪そうな顔になった。青を基調にした後江高校のブレザーとネクタイは、学生らしい真面目さと素直さを際立たせる。子どもっぽいと言われたと思ったのかもしれない。
「契約関係の打ち合わせがあった。いつまでも制服に頼っているわけにもいかないとは思うんだが、なかなか時間が取れなくてな……」
 公的な場で使える服装がこれしかない。そう言い訳する櫂に、レンは小さく吹き出す。くすくすという声が聞こえてきそうな笑みに、櫂は怪訝な目をレンに向ける。
「そういうお前も制服だろう」
 言われた通り、レンも福原高校の制服のままだった。コントラストの効いた黒のカッターシャツと白のブレザー、赤いネクタイ。
「そーですね。もうすぐ着れなくなるかと思うと、なんだか名残惜しくて」
 この三年間、メディアからライバルとして騒がれる程度には、レンと櫂はヴァンガードファイターとして様々な大会を戦ってきた。あのAL4の衣装に込めたのが中学時代からの想いなら、この制服には、高校時代の思い出が詰まっている。
 レンの茶化すような言い方に何かを感じたのか、櫂が本題に入る。
「……ショップ大会の日、昔の服を着てきただろう」
「ええ」
「それが何故か、聞いてもいいか」
 夕陽の透き通るような、真摯なまなざしがレンを見つめていた。わざわざ断りを入れるなんて昔なら考えられなかったのにと、切なさにも似た感情がレンを襲う。真っ直ぐなそのまなざしが、昔と変わらないからこそ。
 見つめ返していられなくて、レンはそっと視線を外す。
「……今言ったのと同じですよ。少し、名残惜しくてね」
「そんなにか」
 俺にはよく分からん、と言外に滲む声に、昔なら感じるのは拒絶にも似た距離だった。けれど今は、分からないなりに受け止めようとしてくれているのがレンにも分かる。
 初めて出会った頃、どこか切実に強さの高みを目指していた櫂は、アイチと出会って変わった。立ち止まって、自分を振り返って、相手を見て、周りを見渡して。誰かと共にいたいと願う、当たり前のはずの感情を、けれど櫂は初めて覚えたのだ。櫂の強さが呪縛していた思いを、アイチは初めて解放してみせた。
「……君は、ファイターとして戦っていくんですよね」
「ああ」
 だからこそ、レンは決意できたのだ。
 レンは顔をあげて、静かに櫂に告げる。
「僕はこのまま、フーファイターの運営に専念します」
 櫂がかすかに目を瞠るのが見えた。小さなその反応だけでも、櫂が本気で驚いていることがレンには分かる。ヴァンガードファイトでしか語り合えなかった不器用な自分達は、ここにはもういない。
「……プロには、ならないのか」
「僕には向いてませんよ」
 当然なるものだと思っていたらしい櫂に、レンは苦笑する。
「そんなはずないだろう、お前ほどの実力があれば――」
 言いながら何かに気づいて、櫂がぐっと口をつぐむ。さっきは分からないと言ったはずなのに、今のレンと同じ、名残惜しそうな顔で櫂は言った。
「……もう、決めたんだな」
 シンプルな言葉が、櫂が何に気づいたのかを物語る。レンが名残惜しいと言った言葉の意味、向いていないという言葉が嘘ではないこと。ヴァンガードは好きでも、純粋に勝敗を争う世界で生きていくには、レンは気まぐれな上に繊細すぎる。そんなレンのことをたとえ誰が知らなくても、櫂だけは知っている。
 そんな現実を無言で受けとめる櫂には、矛盾した内心が垣間見える。好敵手を失いたくない思いと、レンの選択を尊重したい思いと。本気には本気で応える、自分にも相手にも、どこまでも誠実でいる。これが櫂が求めていた本当の強さなのだと、レンはふと思う。頑ななまでに正義を貫こうとした櫂が、悪戦苦闘の果てに辿り着いた強さ。
(君のその強さに、ずっと導かれてきた)
「……言わないでおこうかと思っていたけど……そういうわけにもいかないみたいですね」
 そう言ってレンは、ポケットからデッキケースを取り出す。この小さなケースの中に詰まったカード一枚一枚に、レンの魂が宿っている。
 魂そのものとも言えるデッキを手にして、レンは真剣な表情で櫂に告げる。
「僕が本気でヴァンガードファイターになりたいと思ったのは……強くなりたいと本気で願ったのは、君に相応しい強さが欲しかったから。ひたむきに強さを目指す君を、頂点で待っていたかった」
 小さく目を瞬かせた櫂に、さっきとはニュアンスの違う驚きが芽生えたことをレンは感じ取る。かつてはレン自身理解してはいなかった、本当の望み。
 そこで言葉を切ると、レンはほろ苦い微笑みで目を伏せる。
「……君が強さを目指した果てにあるものが、虚無や孤独であってほしくなかった。僕は、君が背負う運命の重荷を、共に分かち合いたかったんです。……意味は、分かりますか?」
 問いかけられて、櫂は覚悟を感じさせる表情で静かに頷く。
「……ああ」
 かつての櫂には見極められなかった運命、レンが初めて力を手にしたときには、見極められなかった願い。その全てが、今は櫂にも理解できる。勝利の頂にある運命を、リンクジョーカーは櫂へと告げた。そしてレンが告げたのと同じ思いで、櫂はアイチの力になりたいと願った。レンが、アイチが、櫂を追いかけてPSYクオリアで辿った道をなぞるように、櫂はリバースとその先を戦ってきた。導く者と導かれる者が表裏一体になった、メビウスのループ。
「その望みは、リバースした君と戦えたあのときに果たされた。それに……」
 今、目の前にいる櫂を、レンは改めてその目に映す。
「君はもう、その先にある答えをも掴んで見せた。……その運命を、一人で背負えるようになったんです。違いますか?」
「レン……」
 どこか苦しげに眉根を寄せて、櫂は呟いた。優しげに微笑むレンに、かける言葉を思いつかない。
「僕が強さを求めた理由は、もうありません。だから、いいんですよ」
 望みは果たされた。求めるものはもう無いのだと、そう言ってレンは笑う。
「…………」
 ――櫂から不意に、表情が消えた。
 その変化に、今度はレンが目をしばたたかせる。
「……まるで金輪際ファイトをしないような言い方をするんだな」
 どこか色のない、無感動な声だった。
「え?」
 黄昏時には魔が訪れる。それはこんな瞬間なのかもしれなかった。
 けれどその魔性の気配は一瞬で過ぎ去り、代わりに今度は沈みかけた太陽が気配を増す。
「今生の別れでもないだろう。二度と俺とファイトしないつもりか?」
「櫂」
 レンを見つめるのは、彼らしい確かな意志を感じさせる強い瞳。そこに宿る炎に魅せられて、レンは身動きが取れなくなる。
「生まれた理由なんか関係ない。お前はもうヴァンガードファイターなんだ」
「……っ」
 何を言ったのか、櫂は分かっているのだろうか。生まれた理由も生きる意味も、求め続けていたのは君だろうと、レンのどこかが感じている。――感じているけれど。
 そんなことはもはや、それこそ関係なくて。
「……君、僕が何言ったか分かってます?」
「分かっているつもりだが」
 真顔で返してくるから、おそらく本当に分かっているのだろう。
「それで、それは、何と言いますか」
 だからレンは、テンパる自分が止められない。
 さっきまでの覚悟はどこへやら、泣きそうな気分でレンは叫ぶ。
「デリカシーないです!」
 どうにも情けない顔で訴えてはみたけれど。
 櫂はまったく動じてくれない。
「何とでも言え。悪いが俺はライバルは一人でも惜しいんだ。それがお前ならなおさらだ」
 堂々と言い放つ櫂からは本気しか感じない。櫂がいつでも本気だなどということは、それこそレンが一番知っているけれど。
 そんな櫂から目が離せないレンの前で、櫂もまたレンと同じようにポケットからデッキケースを取り出す。
 自分のデッキを見つめる櫂の脳裏には何が巡るのだろう。
「……ヴァンガードで出会う全てのファイターが――」
 自らの魂を手にして、櫂はレンへと微笑みかける。
「――俺の存在意義だからな」
 視界が金色に染まった気がした。こんなにも愛おしげな櫂の微笑みを、向けられる日が来ると思わなかった。彼はこんなにも、ヴァンガードを愛している。
 なんだか胸がいっぱいで、泣きたい気分はいよいよ喉にも詰まりそうになるけれど、それは悲しいからじゃない。
 櫂は清々しいような笑顔でレンへと告げる。
「レン、今の俺があるのはお前のお蔭だ。お前の存在に触発されたからこそ、俺は新しい挑戦へと向かうことができた。お前がいたから、俺はここまで来ることができたんだ。それはこれからもずっと変わらない。永遠にだ」
「……すごいこと言いますね」
 なかばヤケになりながら答えるレンに、櫂は楽しそうに笑う。
「俺は何度でもまたお前とファイトをしたい。……ファイトしてくれるだろう?」
「っ、もちろんです!」
 即答したのは意地っ張りの賜物なのかもしれなかった。さっきからもうずっと、レンは色んな意味で一杯一杯だ。
 目の前の櫂が、あんまり嬉しそうに笑うから。
「それが聞ければ十分だ。邪魔をして悪かったな」
 もはや答えることもできないレンにも、櫂が気分を害する様子はない。
 デッキケースをそっとしまって、櫂はレンへと背を向けて歩き出す。
 開いた自動ドアの前で、櫂が半身で振り向いた。
「またな、レン」
 控えめな、けれど確かに優しさの滲む微笑みが見えた。
 閉じた扉に気が抜けて、レンはその場にうずくまってしまう。いよいよこみ上げるものが抑えられなくなる。
「……なんなんですか、ほんとに……」
 ずっと秘めておくつもりだった。我慢しておくつもりだった。それを櫂は、あっけなく解き放ってしまった。
 微かに苦い胸の痛みを、永遠に消えない輝きに変えてしまった。
(……今までも、これからも……)
 溢れていく涙を拭いながら、レンは心で呼びかける。

(ずっとずっと、大好きだよ。櫂……)


 fin.


 おめでとう! ここうのヴァンガードファイターは
 きずなのヴァンガードファイターにしんかした ▼
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K玲(仮名)のハンドルで主にヴァンガードSSを投稿しています。日記に載せたのを後日修正転載が基本。
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あと最近転載しているTwitterはpixivのプロフから飛べます。非公開中です。なんでそんなめんどくさいことしてるんだなんて聞かないであげてください。コミュニティごとに人格切り替えないとパニックになるタイプなんだよ!!(明らかに最初にpixivとHP切り離したのが敗因)

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