リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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レギオンメイト編~ギアクラ編のどこかで、『腕を一本差し出さないと出られない部屋』に入った櫂とレンの話(櫂←レンはデフォ)


櫂レンは『腕を一本差し出さないと出られない部屋』に入ってしまいました。
80分以内に実行してください。
https://shindanmaker.com/525269

+++


“腕を一本差し出せば扉は開く(80分以内に実行しなければ、永久にここで過ごすことになる)”

 そう書かれた紙が貼りついているのは、いわゆるギロチンのミニチュアのようなものだった。

「なんだ、これは……」
 現実離れした脅し文句に、櫂は眉をひそめた。
「笑えない冗談ですね」
 動揺しているのかしていないのか、レンは淡々とそうコメントする。
「冗談にしてもタチが悪すぎる」
「まあ、確かに」
 櫂もレンも、すぐには実感は湧かなかった。ただ、想像はせざるを得ない。ここから出るのが腕一本と引き換えというなら、脱出するためにはどちらかが腕を失うことになる。
「どうしますか?」
「どうするもこうするもないだろう。こんなもの、まともに取り合う価値はない」
「ここで永久に閉じ込められてもいいんですか?」
「そんなわけがあるか。まだこれが本当だという証拠もないんだ。先にこの部屋を調べてからーー」
「それ、微妙に現実逃避してません?」
 むっと、櫂がレンを睨む。自分の意見を全く出さないまま、駄目出しだけされるのは心外だった。
「お前は、何か考えがあるのか」
「……そうですね」
 おもちゃのようなギロチンを見つめて、後ろ姿のままレンは言った。思い詰める風でもなく、ただ淡々と。
「僕は、差し出してもいいと思ってますよ。腕一本」
「……なんだと?」
「いいじゃないですか、それで脱出できるなら」
「本気で言っているのか?」
 櫂の語気が荒くなった。軽くない代償を軽く扱うような、己の身を顧みない態度。浮き世離れしたレンの振る舞いは、櫂を苛立たせる。
 けれどレンは、一切動じた様子はなかった。
「本気ですよ」
 レンは振り向くと、自嘲のような誘惑のような、昏い笑みで櫂に告げる。
「だってそうすれば、君は一生、僕を犠牲にして生き延びたことを忘れたりできないでしょう?」
「……っ」
 レンのまとう気配に、櫂は息を吞んだ。
 たじろいだ櫂を、鋭い視線が突き刺す。
「そのためなら僕は、腕の一本や二本、なくなったって構わない」
「……お前……」
 信じられないような目で見つめる櫂に、レンは目を伏せた。異界を思わせる光は影を潜めて、レンの瞳に光が宿る。狂気も正気も、自在に行き来するレンの天性。
「……僕の正直な気持ちですよ。君は……君なら、どうしますか?」
 あの文面を――あの文面だけを真正面から受け取る気は櫂には無かった。人を嘲笑うような、理不尽な内容が櫂には許せない。だからレンの言葉には、本来答えようがない。
(もしあれが、本当だったら)
 自分一人ならなんとでもするだろう。腕を代償に脱出することを、おそらく躊躇いはしない。そして、親しい誰かと一緒だったとしても、その誰かに代償を払わせたいとも思わない――けれど。
 今、櫂の前には、堅い表情で櫂の答えを待つレンがいる。
(この状況で……その答え方が正しいのか?)
 レンは現実逃避だと言った。理不尽な問いかけから逃れようとしていると言われれば、否定はできない。けれど、それはレンも同じだった。理不尽な問いかけに悩むのではなくて――それを利用して、違うことを櫂に問いかけている。
 低い声で、囁くように櫂は言った。
「……お前がもし、本気でそれを望むなら、いくらでも背負ってやる」
「……え」
 き、っと、櫂はレンを見据える。
「だがな、そういうことを考えるお前が、俺は一番気に入らない!」
 迷い無く言い放たれて、レンはぽかんと櫂を見つめる。
 今度はお前が答える番だと言わんばかりに、櫂はレンを見つめ返す。
「……ふっ」
 空気が変わった。
「ははははっ!」
 レンが吹き出した。
「そうですね、君なら……そうなんですね」
 そう零して、レンは一歩、櫂へと近づいた。
 どこか楽しげな、リラックスした雰囲気で尋ねる。
「それじゃあどうしますか? 二人とも五体満足でないと駄目だって言うなら、僕はここにずっと二人っていうのも捨てがたいんですけど」
「どこまで退廃的なんだお前は……」
「だって、こんな状況でもなければ、君を僕のものにするなんてできないでしょう?」
 切なげに視線を外すレンに、櫂は溜め息をついた。
「……一度だけだ」
「……え?」
 ぐい、と、櫂はレンを抱き寄せた。
 櫂はそれ以上、何も言わない。
 櫂の腕の中で、レンがうめいた。
「……僕もうほんとに死んでもいいです」
「だから何故、そういうことを考える」
「いいじゃないですか……だってもう、こんなに――」

 * * *


 店内に設置されたディスプレイには、最新ブースターのカードが踊っている。日曜日のヴァンガードカフェは、休日らしい賑やかな空気に包まれていた。
「それで結局、その部屋からは出られたの?」
「いや、そこで目が覚めた」
 櫂が久しぶりに会ったアイチに話したのは、昨日見た夢のことだった。「レンとおかしな部屋に閉じ込められた」と、微妙に細部をぼかした話だけれど。
「お前ならどうする」
「そうだなあ……僕が犠牲になれば皆が助かるなら、それでいいって思っちゃうかな」
「お前らしいが、そういう微妙にやけになるところはどうかと思うぞ」
「やけになってたかな……」
 アイチは苦笑してそう言った。追い詰められて捨て身になってしまうところは、レンとよく似ている。アイチはあくまで現実的で、レンは常軌を逸した望みへ展開していくという違いはあるけれど。
 ただの夢の話。ただ少し、性格が垣間見える夢の話。
(……いや――)
 ただの夢とも言えないかと、櫂はスマートフォンに目を落とす。開かれたアプリには、今朝方交わされた会話が表示されていた。


 レン:ありがとう
 櫂:何の話だ
 レン:夢の話です
 櫂:そうか


 Only your heart

(気持ちだけもらっておきます)
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