Life goes on（加州清光＆山姥切国広）

刀剣乱舞系こっちに載せてなかったのか…加州清光と山姥切国広に畑当番組んでもらった話。好きな子二人に軽率に仲良くしてもらった。本命は山姥切さんです。

「俺、汚れる仕事いやなんだよなー」
　ぶちぶち文句を言いながらも、加州清光は結構真面目に畑仕事をしていた。綺麗でいるほうが安心するのは確かだけれど、だからといって仕事を放り出せば本末転倒なのは知っている。
「泥にまみれていれば、山姥切と比べるなんてできないだろ……」
　その隣、山姥切国広も真面目にしてはいるのだが、いかんせん褒められるにも失望されるにも本科を引き合いに出され続けてひねくれた根性は、そんな呟きで表に漏れてしまう。
「あーもうそーゆーのナシナシ！　ただでさえやなのに気が滅入っちゃうだろー？」
　わだかまる空気が鬱陶しいと苦情を投げた加州清光に、山姥切国広は戸惑い気味に顔をあげた。
「それは、……悪かったな」
　意外に素直に謝られて、加州清光がきょとんと目を丸くする。
「ははっ、変な奴！」
　そんな反応をされたことはなかったのか、山姥切国広は怪訝な目をこちらに向ける。そんなに悪い奴じゃなさそうじゃん、気に入ったよ。そんな風にひとつ笑って、加州清光は手にした鍬を振りかぶった。
「ちょーっと楽しくなってきたぜ、っと！　……んっ！？」
　が、勢い良く突き立てた刃が大石にでも引っかかったのか、加州清光が引こうとした鍬が抜けなくなった。抜けそうで抜けない鍬を、加州清光はとりあえずぐいぐいと引っ張ってしまう。
「……っ、おい、無理に引くとあぶな――」
　山姥切国広の声も空しく、力任せに鍬を引き抜いてしまった加州清光は後ろに大きくバランスを崩す。どすん、と、地面に尻もちをついた。
「ってー……」
　痛がっている加州清光に、山姥切国広が手を差し伸べる。
「立てるか」
「ん、さんきゅ……」
　立ち上がって顔を上げると、山姥切国広の頬に見覚えのない傷が増えていた。
「お前、怪我してるじゃんか！　今のか！？」
「ああ……大した怪我じゃない」
　山姥切国広はそう言って拳で傷跡を拭う。自分がまき上げた砂利で傷をつけたと血相を変える加州清光だったけれど、山姥切国広は意に介した様子もない。
「顔だぞ顔！　お前綺麗な顔してんだから大事にしろよ！」
「……っ、綺麗とか、言うな」
　その台詞はもはや完全なる脊髄反射で、今の加州清光を怯ませる要素は何一つなかった。
「なんで！」
「なんでもだ！」
　図体に似合わない駄々っ子のような切り返しに、加州清光が吹き出した。
「ふっ、はははっ！」
　そのまま仰向けに地面に倒れ込んでしまう。いっそ大の字になって触れた地面の感触は悪くなかった。ポリシーとは裏腹に気分は良い。眩しすぎる太陽を手で遮れば、真っ白な手には遠慮なく土がついていて。
「あーあ、汚れちゃったなー」
　どこか乾いた悲哀の滲む笑顔に、山姥切国広は呆れたような同情のような、不思議な声で言った。
「……怪我したわけでもないんだろ。終わったら洗えばいい」
「お前は？　一緒に綺麗にならない？」
「バカ言え」
　言いながら、山姥切国広は加州清光の隣に座り込んだ。低い位置からの視界に、真っ白な雲の漂う青空が広がる。ふわりと、顔を陰らせる外套が風にたなびいた。
「……そういうのは得意じゃない。……一緒に汚れるくらいなら、してもいいがな」
　やっぱり意外な気安さに、加州清光はぱちくりと目をしばたたかせる。腹筋で起き上がって、加州清光は苦笑した。
「嬉しくないんだけど」
　それでも気を遣ってくれてありがとうと、そんな加州清光に山姥切国広は相変わらずの無表情だったけれど、空気は少し優しかった。気を取り直して立ち上がると、軽く土を払う。
「さぁって、サボってないでとっとと終わらせようか」
「ああ」
　転んで、汚れて、綺麗になって。
　それでも日々は続くのだ。

　終

　20150405