白紙の未来（泰衡×望美）

遙か３アルティメット泰衡ED見ました！！楽しかったです！！
という勢いだけのモノローグ捏造。ネタバレ注意。泰衡ルートについて語りまくりたかったのであとがきが本番です。

白紙の未来


　金沢柵。渡来してきたばかりの荼吉尼天は滅びた。ここから先の百年に、奥州の脅威となるはずだった魔物が。
　悪夢の始まりを元凶から叩く。言うは易し行うは難し、時空を越えて運命をねじ曲げてみせると言った少女に、これからどうする気だ、などと聞こうとは思わなかった。理詰めしかできない自分なら、絶対に選ばない無謀な選択肢。ならばそれを選んだ彼女が、手堅くその先を考えているとは思えない。
（結局、絆されたようなものか）
　言うなれば泰衡の命を救った少女。望美は、自分の全てを懸けて、泰衡の運命を変えようとした。泰衡とて平泉を守れるなら命のひとつやふたつ惜しくは無かったけれど、一体何があれば望美がそこまで泰衡一人にこだわれるのか、とうてい理解はしきれまい。
　だからこそ、放っておけなかった。
　元いた世界も、こちらの時空で出会った仲間も、全てなげうって百年前に渡る賭けに出た望美は、泰衡を選んだわけですらない。許せない運命を変える、そのことしか考えていなかっただろう。
　泰衡にしてみれば、どうせ無くなる命だった。とっくに覚悟は決めていた。だからこそ――

『駄目ですよ、行きたくなくなっちゃう』　

　――そう言って、泰衡の胸に縋った少女を、どうして見捨てられる？

「ここで、あなたと生きていくより他にないな」
　泰衡がそう言うと、年端もゆかぬただの小娘が、目をしばたたかせてこちらを見つめていた。
「嫌か？　この身一つの他に何も持たぬ俺では」
「泰衡さん……」
　いつぶりかも分からない、もしかしたら本当に初めてかもしれない。泰衡は、優しく微笑んでいた。
　拾われた命の使い道はひとつしかない。譲れない願いと共に、全ての罪と罰までも、あの時空へ置き去りにしたことを、どこまで分かっているかも知らないけれど。
（あなたのものだ、俺の何もかも）
　生まれ変わるように、静まり返った世界を薄明かりが照らす。
「夜が明けたな、この地の戦も終わったようだ。……ここから百年、この地を揺るがす戦乱もない」
　夢物語のような言葉が、自然と口をついて出る。
「じゃあ、幸せになれますね」
　当然のことのように、望美が笑う。
「なれるか？」
「しますよ、私が」
「フ……できそうだな、あなたは――」
　前だけを見て、願いだけを抱いて。荒れ野をゆく彼女の行く手を切り開こう。
　幸せを描いていく。初めて手に入れた、白紙の未来に。

　終

＋＋＋

こちらではご存知の通り私敦望本命でして、泰衡には泰望というよりキャラソンで九郎と平泉を思いまくる泰衡単体に落ちたので、攻略したいという欲求自体はそう高くなかったこともあり、いろいろと泰衡のSSを書きながら「これはゲーム中の展開では落とせないよな…」と思っていたら、望美ちゃんは泰衡の運命どころか平泉はじめゲーム全体の運命を根こそぎ変えてくれましたさすが俺たちの戦神子はスケールが違う。
もともとそこに自分がいるつもりのなかった平泉の平和を九郎に託して望美を守りにいく泰衡が当然の選択すぎて清々しかったです。（百年前の荼吉尼天倒したらそこに荼吉尼天が来るとか来ないとかいう次元超えちゃわない？ってツッコミは野暮ってやつですよね！）望美ちゃんの無鉄砲なお人好しを無駄にさせたくない泰衡もお人好しだなあって思えるの最高でした。
浄土スチルが本当の浄土になっちゃうのもわりと十分に最高だったんですが（おいまてこら死ぬんじゃない！！って思ったけど・笑）そこで満足しない獣のような女によって泰衡の真の浄土が百年前という名の異世界に爆誕するのほんとたまりません。望美が考えなしに（笑）言う「幸せにする」を実現するために泰衡は全力を尽くしてくれることと思います。望美がいるから、幸せを信じて幸せになれる。
陰陽師としての力を存分に見せてくれる泰衡も最高でした。武芸贔屓の世間でコンプレックスはあるけど努力は欠かしてなさそうなところ大好きです。
泰衡ルート楽しかったです…ありがとうございました。