山姥切国広が真剣必殺して誉取るだけ

普段から「どうせ写しの俺には興味ないんだろ」と言いつつ土壇場では「俺を写しと侮ったこと後悔させてやる」と啖呵切る山姥切国広のプライドの高さ嫌いじゃないです。山姥切国広が言う「写し」は「青は藍より出でて藍より青し」って言うところの「青」みたいな意味なんじゃないかと疑っています。藍じゃないからって低く見られるのは心外だみたいな…。そこに刀匠国広への思いと堀川派としての誇りがあったらいいなと夢見ています。いつか極になってほしいけど夢見すぎて手紙見るの怖い。
それが言いたかっただけなので本当にタイトル通りの内容ですが、ぶっちゃけ山姥切×乱のなれそめとして考えたのに続きが書けないから単体で投稿していますすみません…（CP色は全くありません）
ちなみに当本丸、初期刀：山姥切国広、初鍛刀：秋田藤四郎です。

視界の利かない夜の戦場だった。
　乱の目が、暗がりの中に何かが蠢くのを捉える。
「秋田、後ろ！」
「えっ……」
「……っ！」
　山姥切が咄嗟にその間に入る。受け流しきれなかった刃が脇腹を浅く薙いだ。じわじわと重なった傷が、全身の動きを鈍らせている。
「山姥切さん！」
「ほう？」
　秋田が呼んだ名前に、影が反応した。
「知っているぞ、そなたの銘(な)」
　三日月のような口の端(は)が、闇に浮かび上がる。
「魔をも断ち切る山姥切の霊刀か、はたまたその美しき写しか……ふ、聞くまでもないようだな」
　満身創痍の山姥切――山姥切国広を、影は嘲笑う。
　ゆらりと、切っ先のように光る目(まなこ)が、影を捉えた。
「……俺を写しと侮ったこと、後悔させてやる。……死をもってな！」
　瞬間、放たれた一閃が闇を薙いだ。闇に紛れていた本体を寸分違わず断ち切られて、飛び去った影に真っ二つの槍が取り残される。それもまた、地に落ちる前に雲散霧消した。
　“山姥切国広”の逆鱗に触れたことに、気づく間さえなかったかもしれない。
　それが最後の一体だったのだろう。しんとした静寂があたりに訪れる。夜のとばりの中に、蠢いた闇はもういない。
「俺は、俺だ」
　確かめるように、噛みしめるように、山姥切は呟いた。
　たたずむ彼に、立ち上がった秋田が声をかける。
「あの、ありがとうございました」
「……いや」
　礼を告げる秋田に、山姥切は一呼吸置いて短く返した。逆撫でされた神経はすぐには落ち着かない。けれど、それを知らぬ秋田でもなかった。山姥切国広とあわせ、主が顕現させた最初の二振り。だからこそ声をかけたのだ。ともすれば一人、己の存在証明を探して、孤独の中に迷い込む彼だから。
「お疲れ、これで最後？」
「そのようだな」
　離れて戦っていた加州、そして骨喰と鯰尾も集まってくる。
　山姥切国広は隊長として、仲間へと告げた。
「任務完了だ」


2017.10.9