リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
遊作とAiがやたらセンチメンタルにしりとりする話。73話~83話のどこかでこんな夜あったらいいなって話だけど多分そんな暇ない(こまけぇこたぁいいんだよ)
なあ遊作~寝る前にしりとりしようぜ。既にベッドに横になった遊作に、そんなことを言ったのはAiだった。
「しりとり?」
「俺は寝る必要ないからさ。ちょっとだけつきあってくれよ」
「……少しだけだぞ」
「おう!」
そうやって、他愛ない単語を連ねていた、はずだった。
「ドラマ」
「魔霧雨(まきう)」
「う、う……」
Aiは咄嗟に思いついた単語を言えなかった。けれど一度思いついてしまうと、その単語が頭を離れない。
「嘘」
出てきた単語に、遊作もリズムが止まった。
(思ったより動揺させちまったかな……)
今の二人にとっては、その言葉はあまりにも意味深で。
(俺が嘘ついて隠してること、遊作は多分気づいてる。俺は遊作の元に迷い込んできたわけじゃない、最初から狙って守らせた。ずっと影から遊作を戦わせてたんだって)
やっぱり言わなければよかっただろうか。Aiがそう思い始めた矢先。
「……そばにいて」
確かに遊作の声で聞こえた言葉に、Aiが固まる。
「え?」
「次、“て”だぞ」
繰り返すつもりはないらしい遊作は、そう言ってAiを促す。しかしどう考えても流せる言葉ではなかった。なかったけれど、だからといって今のはどういう意味だと、ストレートには聞けなくて。
「……しりとりじゃないじゃん」
「続けられなかったからお前の負けだな」
「いや今のは遊作が反則だろ!?」
「単語しか認めないというルールだった覚えはないな」
すました顔で遊作はそう返す。
だから、Aiは囁いた。
「今のは、嘘?」
「………」
不穏な沈黙が降りる。
機嫌が悪くなったのは一目瞭然だった。
「今のなし!! ごめんて!!」
「なんのことだ」
「いやだって、今の嘘じゃ――」
ないんだろ? と、聞こうとした言葉尻は、もそっと体勢を変えてこちらを向いた遊作の目に消し去られる。
普段決して表情豊かとは言えない顔が、雄弁な瞳で訴えている。『何も言うな』。
「――天国」
「え?」
意表を突かれたのか、遊作が目をしばたたかせる。
「さっきの続きだよ。ほら次」
「く……靴」
「月が綺麗ですね」
「……おい」
胡乱な目がAiを見る。いわゆる決まり文句だが、何が元になっているかは知っているのだろう。 “I love you.” でも本質はそこじゃない。月が綺麗なのは、「大切な人と一緒に見るから」だ。
いつか二人でスターダスト・ロードを見た時、Aiは初めてその感覚を理解した。
「なんだよ、単語じゃなくてもいいんだろ?」
意趣返しのようにすました顔で返すと、遊作も文句はないのか、視線をそらすようにブランケットをかぶり直す。
「……猫」
「後悔」
もう吹っ切れたように、Aiは後ろ暗い単語を重ねる。
「……一緒にいたい」
さっき聞いたのと似たようなフレーズだった。
遊作の弱音の呼び水は多分、Aiの罪悪感。
(遊作にはお見通しなんだよな……)
見抜かれているからこそ、今更飾る理由もない。
「一緒にいたいよ、俺も」
「……もう少しだけ……」
続かなくなったのか、遊作が口ごもる。
「……け?」
「……け」
ここまできたら何でもアリだと、Aiはデータベースから決め台詞を引っ張ってくる。
「結婚しよう」
「うるさい」
「そこは“うん”って言うところだろ!?」
「それじゃ負けるだろ」
「そうだけどさー!」
「Ai」
「何?」
遊作の目線が、Aiの視線を窓の外へ誘う。
「月が、綺麗だな」
窓の外に輝いているのは、下弦の月。静かに欠けゆく半月だった。
「……そうだな」
戦いの合間、束の間の休息。こんな時間は、多分いつまでも続かない。
(お前は、いつまで俺を人質でいさせてくれるんだろうな)
この戦いが終われば、それぞれの目的を果たせば、共にいる理由もない――いてはいけないと、多分遊作は思っている。人質だなんて嘯いて、Aiを束縛する権利を自分に認めようとしない。Aiがどんな道を選んでも、それは裏切りではないとでも言うように。
(俺が悪いんだけどさ……)
故郷を守るために、仲間の元に帰るために、生きるために遊作を利用した。遊作は多分、それならそれでいいと思っている。それくらい、Aiを大事に思ってくれている。
だからこそ、復讐へ向かわせてしまったことが悲しかった。遊作のもとに戻ることさえ、本当は迷っていた。「また助けてほしい」だなんて、どんな顔で言えばいいのか、分からなくて。
共に戦う理由があるなら、せめて遊作の役に立ちたい。そこから先に何があるのか、Aiには正直分からない。サイバース世界が崩壊して、仲間だったはずのライトニングやウィンディと敵対して。ボーマンを倒して未来を変える――そう言ってくれた遊作を信じている。ライトニング達を説得するなら、それはイグニスでなんとかするべきだとAiは思う。
未来は不透明で、嘘で隠された絆はあまりにも儚い。遊作がAiを縛りたくないように、Aiもこれ以上遊作に迷惑をかけたくなかった。
(それでも、もう少しだけ、このまま一緒にいたいんだ……)
ふと気づくと、かたわらから遊作の安らかな寝息が聞こえてくる。それだけ疲れていたのだろう。夢うつつにさらけ出された心の弱さを、受け止められていたらいい。
たとえば明日、今夜のすべてが夢に消えても。
「おやすみ、相棒」
夜空に輝く半月は、それでも確かに綺麗だった。
fin.
2期の二人は「戦いが続くうちは一緒にいられるけどそのあとの保証が無い」二人でもあるんだよなぁって。
みんな俺のことを忘れちまう…のAiに「夢に消えても(いい)」っていうモノローグがありかなしかは考えましたがあっちは「俺を忘れないで」ですがこの話はどっちかというと「遊作が言うつもりの無い本音を仄めかした」話なのでセーフとしました。多分二人ともこういうお互いの気持ちを言わないだけで察してるんだろうな…と思ってるので、そういう意味でも覚えていてもいなくてもあんまり関係ない話でもあり。
お互いに「一緒にいたい気持ちはあるけど相手のためには一緒にいない方がいい」と思いながら、互いの目的のために協力してる(それ自体には多分幸せも感じてる)2期の二人が愛しくて仕方ないです…いや本当にそう思ってるかはしらんけど…。
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