【遙か７】Heart break（大和＆五月）

幸村と五月同時攻略してると出てくるイベント「二つの優しさ」で幸村ルートになる選択をしたときの五月に大和がビビってる話。私の中の五月のイメージこう！！って話なんだけど誰なら気づきそうかなと考えた結果大和にお鉢が回ってきたという話なので大和の独白なのに五月の話です。なお大和も五月も口調まだよく分かってない！
遙か７で絶対書きたい！！！！！って思ったのこれって業が深すぎる。五月お兄ちゃんが爆速でお兄ちゃん投げ捨ててきたの怖かったんだもん！！でもその結果私が好きなのはこういう五月なわけですよ！！（お前）

　怨霊なんて見えるのは、俺みたいに闇が深い奴だと思ってた。おっとりして見える五月にだって、何かあると感じてはいた。
　初めて会ったときもそうだ。七緖と一緒になって歓迎してくれたけど、自分には見えないから凄いとはしゃぐ七緖とは違って、見える方の五月が喜んでくれたのは、シンプルに「同類だから」だと思う。
　七緖には聞こえないようにタイミングを見計らって、五月は言った。
「こんな能力持ってると大変だよね」
　同情まじりのため息。それを七緖に聞かせないのは、余計な心配をかけないためだったんだろう。それでも違和感はあった。こんなに仲が良さそうなのに、五月は隠し事をしている。
「俺達でよければ力になるよ。七緖も喜んでるし、よければ仲良くしてやって」
　だから思ったんだ、こんな能力を持ってる奴は、やっぱり闇を抱えてるんだなと。

　思っては、いたけど。

「京を離れたい……」
　実の兄である織田信忠を封印して、七緖は憔悴しきっていた。あやめの言葉に甘えて筒見屋の屋敷で休んだらどうかと言ったのは五月で、京を離れたらどうかと言ったのは幸村だ。
　七緖が選んだのは、幸村の助言だった。
　そのときの五月の沈黙がだいぶ冷たくて、俺はちょっとぎょっとしたんだ。
「五月？」
「え？　ああ、何？」
　振り向いた五月は、いつも通り人当たりの良さそうな笑みを浮かべてたけど。
　夜の闇の中で、完璧なポーカーフェイスはかえって浮いてしまっていた。
「いや……いいのか？」
　俺の問いかけに、五月が七緖の方を見やる。その視線の先では、青い顔をした七緖が、つばきと共に幸村から話を聞いている。
「七緖がここを離れたいなら、俺が反対する理由はないし。そのほうが気が休まるなら、そうしたほうがいいんじゃないかな」
　多分それは、自分に言い聞かせるための理屈だったんだろう。不自然に淡々とした声は、波立った心を抑えた痕だ。
　俺の釈然としない顔に気づいたのか、五月が複雑そうに笑った。「まいったなー」と顔に書いてある。
「……気づかなかったことにしてくれない？」
　うわぁ、という心の声は五月に聞こえただろうか。正直言えばちょっと引いた。それくらいで五月を嫌いになったりはしないけど、やっぱり驚きはする。
「それはまあ、いいけど」
「ありがとう、大和」
　お前それでいいの？　喉まで出かかったけど、いいも悪いもない。五月だって、全部分かってて言わないのが最善だと判断したんだ。
　五月は、最初から七緖が神子だって知ってた。自分が星の一族として守るべき存在だって。二言目には兄と妹を口にしながら、目隠しするようなやり方で七緖を危険から遠ざける、あいつの過保護はそういうことかと思ってたんだけど。
（そういうことかよ）
　俺と話して吹っ切れたのか、五月は今度こそいつもの顔に戻って、幸村たちの会話に入っていった。その横顔を見ながら思う。八葉として、星の一族として、義理の兄として――多分その中のどれも、五月を満足させはしないんだろう。実の兄という、血のつながりの強さを見てしまった今は。
　七緒を一番支えたいときに頼ってもらえなかった五月が、一瞬だけ見せた闇。
　あの冷たい沈黙は、五月が心の中で、独占欲を握りつぶした音だった。


＋＋＋

五月ルートで「幼なじみのそういうの見るの複雑」って正直に言ってくれる大和が好き。