リスペクト公式、と言いつつBL・GL妄想上等の色々無節操なのでカオス注意。
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というわけで早速書きました。
ドラマCDつきの豪華版、ぶっちゃけ完走した3日後には見つけて注文してたんですけど、なんか絶対来ないような気がして(なんで?)、聞いてないから好きに書ける!!!って書いたED後捏造です。結局ドラマCDは来たので(それはそう)、思ってたのと面影がだいぶ違って殺されましたが俺はドラマCDを聞かない状態の創作にも意義があると信じている。いやほんと聞けると思ってなかったし聞けない人もいるだろうし。
あとがきはドラマCD聞く前に支部に上げたときのやつです。
EDネタバレ(例のアレ含む)大注意だよ!!!
キャラを掴めないまま勢いだけで書きました。よろしくお願いします。

“遠い明日に、望みを託すなら……。三日月、またあの歌を聞かせてほしい”

 青空の下、大樹に身を預け微睡んでいた長谷部の目蓋が開く。脳裏に残る夢は、文字通り夢に置き去りにした男の記憶。彼が三日月に聞かせてくれと言った歌は、長谷部が守れなかった主の歌だろう。三日月と彼の間にどんな時間があったのかは知らなくても、それくらいは分かる。たとえ主が不在であっても、この本丸は主のものだから。それは長谷部が一番よく知っている……というのは自惚れなのかもしれないが、それでも、長谷部はそう思っていたかった。
「…――」
 主の歌う旋律が、長谷部の唇から零れる。この歌に導かれる刀剣男士が、この本丸の一員。最初は彼自身戸惑っていたし、誰より自分が認めていなかったけれど、彼はもう立派なこの本丸の仲間だった。
 脳裏に浮かぶ、彼の後ろ姿。
「………」
 複雑なため息で、旋律が途切れた。長谷部の胸を刺すのは、今まで感じたことのなかった微かな棘。
 彼がいないから寂しいなんて、言うつもりはなかった。大切なものを守れなかった無念と後悔。かつて味わったものをもう一度味わう羽目になったからこそ、そんな感傷に浸るつもりはない――はずなのに。
「面影……」
 面影はもうこの本丸の一員だった。だからこそ、面影が最後に言葉を交わしたのは三日月だったのだろう。この本丸の刀剣男士達を束ねる柱。
 多分それだけなのに、面影が最後に希望を託したのが三日月だったことが、長谷部はどうしてもやりきれなかった。

 * * *

 歌が、聞こえた。
「――…」
 青空の中で、面影は横たわったまま目蓋を開けた。時の流れにどれほど意味があるのかもわからない夢の中で、面影は一人、あてどなく漂っている。
 それでも、あまり一人だと感じないのは、自分が一度完全に分かれてしまったからなのだろう。人格としては、既に眠りについているもう一人の自分。彼を自分へと取り戻し、その力を得たからこそ、面影は仲間達を本丸へ返すことができた。面影は一人だけれど、一人ではない。
 もしも彼なら、お前は馬鹿だとか言うのだろう。そう思うと、面影は笑みがこぼれるのだ。孤独の中にいた自分は、歴史を守る刀剣男士の使命を持ちながらも、何かを守りたいという感情を本当には知らなかった。
 一部を欠いたままの不完全な自分を、彼らの仲をかき乱しさえした面影を、あの本丸の仲間達は受け入れてくれた。そこで初めて、強さの理由を知った。窮地に立ってなお諦めないこと、あがくことの意味。あがける理由がどこにあるのか。
 だから、面影は夢想する。いつか、彼らの元へ帰る日を。
 迎えてくれる皆の姿を。
「だからお前は馬鹿だと言うのだ」
「……は」
 不意に差した影と降ってきた声に、面影は間の抜けた声をこぼした。
 面影が身を起こすと、自分と同じ顔をした男が立っていた。仲間たちが、黒の面影と呼んでいたもの。
「お前、何故……」
「十分な休息で私とお前の力が満ちた。だから顕現した……と言いたいところだが、それだけではないな。ここは夢の中だ。意味は分かるか?」
 力が満ちた。彼が構築したこの断片とあの本丸を繋ぐために使い果たした力が。
 ここは夢の中。
 その夢を見ているのは――
「……私が願った、のか?」
「そういうことだ」
 黒の面影は、どこか満足そうに笑った。
「歴史を作り替えんとするほどの力で具現化するものが、自分を罵倒するもう一人の自分とはな」
「そうはっきり言われてしまうと返す言葉もないが……」
「自問自答よりも、完全に分けてしまったほうが思考の整理はつけやすい。合理的ではあるのではないか」
「それは褒めているのか?」
「単なる事実だ。私はお前なのだから」
 面影は目を見開いた。驚くほど――驚くほど、黒の面影は柔和になっていた。彼が持ち主の悲願に惹かれて絶望に染まったのは、自分もろとも刀剣男士達を破滅へと導こうとしたのは、孤独だったから。
(今はもう、孤独ではない……)
「夢の断片をつなぐ力の使い方は、私の方がよく知っている。だから、無意識に私を呼んだのだろう」
「………」
 彼がもったいぶった言い回しをするのは、自分が思考を掴みあぐねているということなのだろう。そんな風に、面影の思考が回り始める。
「……お前は知っているのか? 私が、その力で何がしたいのかを」
「聞くべきことは本当にそれでいいのか」
 仕方のない奴だなと、そんな微笑みで問い返される。
 力の使い方を知る彼に、本当に聞くべきこと。
「お前は、力が満ちたと言った。それは……あの夢さえも、具現化できるということなのか? あの本丸に、私は」
 みなまで言う前に、黒の面影が笑い、そして。
 光に包まれる。
「面影!」
 おかしな呼び方だと思う。けれど、それが彼の名前だ。
「私はお前の中にいる。だから、何も問題はない」
 ざぁっ! と。砕けた欠片は蝶となって、面影の中へと還っていく。
 力と共に。
 問題はない。それでも別れの喪失感が確かにあって、面影の頬を雫が伝った。この涙は心の証しだ。仲間達を守るために、目覚めきる前に封じた心。
 彼という存在ごと宿った力を逃さぬように、面影はその手を握りしめた。
 何もないこの空間で、いつの間にか存在さえ忘れそうになっていた自分自身に、その手をかける。複数の逸話の宿る大太刀。
 この刀で今、斬るべきもの。
(夢を斬れば現実が現れるわけではない……夢は成就を待つ願いだ。望むべき明日のない私には、泡沫のように漂う夢しか構築することはできなかった。つなぐべきは明日への道、斬るべきは今ここにある――夢(うつつ)を!)

 刮目して、抜刀。
 大太刀の一閃が、青空の果てを切り裂いた。

 * * *

 半眼で物思いにふけっていた長谷部の眼前を、白い蝶が過る。刹那、その蝶に何かを感じて、長谷部は目を見開いた。弾かれるように立ち上がると、こちらへと歩み寄る人影が見えた。
 あと一歩、手を伸ばせば届きそうな距離で、長谷部は呆然と言った。
「……面影、なのか?」
「ああ……」
 面影も戸惑い気味に答える。
「私だと分からないか? どこか、おかしなところがあるだろうか」
 そんなことを言いながら、面影は自分の姿を顧みる。微妙にずれた返答がかえって面影らしくて、長谷部の緊張が解ける。ため息をついて長谷部は答えた。
「違う。ただ、急だったから……」
 その続きに気恥ずかしさを覚えて、長谷部は言いよどむ。それでも言わなければいけない気がして、長谷部は首を振った。
「それだけじゃない。……お前の夢を見ていた」
「私の?」
「ああ。だから、夢か現か分からなかった」
 長谷部がそう告げると、面影は得心がいったというようにふわりと笑った。いつもしているように、右手を胸に当てる。
「私は確かにここにいる。夢の断片をつないで、現へと帰ってきた」
「そう……か」
 微妙な沈黙が流れる。
 長谷部は決まりの悪そうな顔で尋ねた。
「……その様子では、皆にはまだ会っていないのか」
「ああ。私を導いたのは、お前の歌だったから」
「なんだと?」
「審神者の歌だが、歌っていたのはお前ではないのか? あれはお前の声だった」
 さらりと放たれた言葉に、長谷部は息が止まりそうになった。
「歌っていた覚えは、あるが」
「お前の声が聞こえたから、私はやっと気づいたんだ。帰るだけの力が満ちたことに。そしてお前の夢の断片を頼りに、ここへと帰ってきた」
 面影は、深い意味を感じてはいないのかもしれない。けれどそれは、長谷部にはもうどうでもよかった。頭がうまく回らない。
 うわごとが長谷部の口をつく。
「……面影、抱きしめてもいいか」
「え? あ、ああ……」
 答えを聞くのが早いか、長谷部は面影を抱きしめた。
 それでようやく、長谷部は実感する。面影がここにいる。
 震えそうな声で告げた。
「よく、帰ってきた」
 思っていた帰還とはずいぶん違うな、と面影は面食らう。けれど、それも当然なのかもしれない。遠い明日を願うばかりの自分は、この本丸の皆が、長谷部がどんな気持ちで自分を待っているのかも知らなかった。
 面影は戸惑いながら、それでもどうすればいいのかは分かる気がした。そっと優しい抱擁を返す。
「心配をかけて、すまなかった……」
「いいんだ。お前は全力を尽くした。帰って来れたなら、それでいい」
 腕をほどいて向かい合うと、長谷部の目が心なしか赤く濡れている気がした。それを見られたくないのか、長谷部がふいと視線を逸らす。
「本丸へ戻るぞ。皆も、お前の帰りを待っている」
「……ああ」
 歩き出した長谷部に続いて、面影も歩き出す。
 いつか遠く夢見た明日へと、たどり着いていた。


 終




蝶の舞う明日見る→「靄が晴れないのなんで?! これ面影が見てる夢じゃない!? 帰ってきてなくない!?」→「待ってあれが面影の夢だったら本当の帰還シーンは好きなようにイメージできるってことじゃない?」→「あれ面影が見てる夢の方が都合いいな」←イマココ

正直本編のセリフを素直に受け取ると面影の前に審神者が帰ってくる気がするんですが、とりあえずまだ帰ってきてません。時の政府仕事しろ。嘘です仕事しないで(なぜなら「主を守れなかった長谷部」が大変好きになってしまったため)

無双プレイ中は3章後半くらいから長谷部が「面影」って言うたびにへし面!!って叫んでたんですが、復習しよ…と冷静に物語見たら三日月がしんどくてイメージが長谷部―(好き)→面影―(尊敬)→三日月になっていました。あと真ED条件が「面影とみんな」の絆MAXなのでなるほどそういうことねという解釈がこの二次創作です。でもへし面になってほしいので、感情度は遙か7のルート分岐選択肢で面影(神子)が長谷部(八葉)選んだくらいのイメージで書きました。大和ルートとかこれくらいの温度差あるからヘーキヘーキ。これから個別ルートだがんばれ長谷部。

敦盛(遙か3)とか那岐(遙か4)とか好きなんですが、影響をひしひし感じながら書きました。ありがとうルビーパーティー一生ついていきます。
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