かなで+天音学園のみんなで冥加誕生日お茶会。
というか、スペシャルイベントの天音学園とほぼ同じシチュエーション?
故に、氷渡はログアウトしましたorz
さてどうやって祝ったものだろうか?眉間にしわを寄せる…とまではいかなかったが、かなでは頭をフル回転させて考えていた。
冥加に受け取ってもらって邪魔にならないもの、となると、形のあるものはどうにもしっくり来なかった。日常使うものに不自由していそうには見えないし、ましてや調度品の類は自分が手に入れられるよりよほど良いものがそろっていそうだ。花束なども考えないわけではなかったが、そのあたりは妹の枝織が配慮していそうでもある。
やはり料理だろうか?夏の大会のとき冥加以外のメンバーにはお弁当をふるまえたけれど、冥加だけは一緒に食事というわけにもいかなかった。一度くらい、手料理を食べてもらいたいという気持ちはある。
せっかくの誕生日だ。ごちそうとか、ケーキとか、そういうものを作るのもいいかもしれない、枝織はきっと協力してくれるだろう。
だがしかし、だがしかし…
「…やっぱり、これも外せないよね…」
+ ありったけのおもいをきみに +
「これは一体なんだ?」
天音学園の温室に集められた天音学園室内学部アンサンブルメンバーと枝織に囲まれて、冥加は不機嫌そうに言った。
テーブルの上には、かなでの手作り誕生日ケーキと、枝織の用意した紅茶とコーヒーがセットしてある。
「まぁ冥加、そう邪険にすることもないだろう?せっかく小日向さんと枝織さんが用意してくれたんだし。たまにはこういうのもいいんじゃないかな」
「お、おれも一緒で本当にいいんですか?」
「もちろん!だって、七海くんも冥加さんのことお祝いしたいでしょう?」
「は、はい!」
「じゃあ大丈夫だよ」
ニコニコと笑顔を崩さないかなで達を、冥加はいつものしかめっつらで眺めている。
以前なら「くだらん」とでも一喝して凍りつかせたかもしれないその光景を、簡単に壊すことが、今の冥加にはできなかった。
ため息をひとつついて、用意された席についた。
「冥加さん、誕生日おめでとうございます!」
そう言って目の前に差し出されたケーキは、切り分けられるまで白い生クリームに隠されていたスポンジ部分が緑色で、一瞬意表を突かれた。
「あ、にんじんケーキなんかの要領でグリーンピースのペーストを練りこんでみたんです。一応、生クリームと一緒になっても大丈夫な味にしたはずなんですけど…」
「………」
おそらく、グリーンピースのスープが好物だということをどこからか掴んでそうしたのだろうということは察しがついた。ただ、
(これではまるで、嫌いな野菜をあの手この手で食べさせられる子供ではないか…?)
と、いささかプライドが傷ついたということは口にはしなかった。それを口に出せばもっとプライドが傷つくのは目に見えていたから。
「…いらん気づかいだ」
そっけなく答えて、冥加はそのケーキを口にした。
予想通りというかなんというか、味は申し分なかった。
「小日向さん、すごくおいしいです!」
「うん、さすがだね」
無邪気に感想を述べる七海と天宮に、続いて同じようなことを言えるわけもなく。
「…こんなことをしている暇があったら、ヴァイオリンの腕を磨いたらどうなんだ」
普通なら悪態としか取られないようなそのセリフに、かなでは何故か、意を得たりとばかりに顔を輝かせた。
「はい!だから、ちゃんと用意してきましたよ」
そう言って、かなではヴァイオリンを取りだした。
思わぬ展開に冥加が面喰らっているうちに、かなでは一人、花園の中へと立つ。
舞台があるわけでもないその場所は、それでも確かに、ヴァイオリニストのためのステージに見えた。
ぺこりとお辞儀をしたかなでに、七海と天宮と枝織がぱちぱちと拍手をする。
顔をあげたかなではゆっくりとヴァイオリンを構え、弓を引いた。
音が、生まれ始める。
「――…」
この夏、冥加が聴いてきたかなでの音は、そのほとんどがアンサンブル曲の一パート―星奏学院オーケストラ部の一員としての音だった。そして星奏学院の弦楽合奏の個性は、第一ヴァイオリンを要とした、なめらかな一体感。それは、冥加率いる天音学園のピアノトリオがファイナルでたどり着いた音、それぞれの奏者が個性を主張し、競い合いながら絡み合う一体感とは、まったく逆の性質のもの、支え合う音だった。
けれど、今は違う。これはソロ曲だ。冥加が、初めて聴いたかなでの音と同じ―
(―いや、これは…)
初めて出会ったときと、同じ印象の音。
(…儚い)
弦が切れて泣いていた少女。
今の音は、そんな第一印象そのままの音色だった。
今にも崩れ落ちそうなその音色のあやうさに、目も、耳も、それ以外のすべての器官まで総動員して、感覚の全てがかなでに向かっていく。
演奏しているかなでと、不意に、目があった。
かなでが、驚き、そして、やわらかに微笑む。
「…っ」
音色が、急激に変化を遂げる。
花開くように、色鮮やかに輝き始める。
かなでを囲む周囲の花々までもが、色づいていくようだった。
かつて冥加を貫いた、太陽のような音色―いや、それよりもさらに、輝きを増した音色。
(…そういう、ことか)
やがてかなでは演奏を終える。
呆然と、圧倒されるように静かな沈黙が訪れる。
心地良い敗北感が、冥加を支配していた。
誰かが拍手を始める前に、冥加は席を立って言った。
「小日向かなで、今の曲…俺ともう一度、手合わせ願おう」
「―はい!」
まっすぐに向けられる笑顔に、心臓の焦げる音がする。
恋という言葉では追いつかない、愛ですら似つかわしくない、だから憎しみと名付けたその感情は、今もあっけないほどに、冥加を捕らえて離さない。
隣り合うかなでに背を向けるようにして、冥加はヴァイオリンを構えた。
背中合わせでいいのだろう。互いに縛りあう運命であればこそ、共に自由を目指して、羽ばたける。彼女に、その翼を最初に与えたのが自分だと言うのなら―弾くだけだ。
愛のあいさつを。
* * *
「…ねぇ七海、きみはこの演奏をどう思う?」
「なんだか…見せつけられてる、って、言うんですか?」
「うん…いや、それもあるんだけど」
「けど?」
「冥加は、変わったね」
そう言って微笑んだ天宮も、変えられた人間の一人ではあったけれど。
「小日向さん、どうしてもお二人とご一緒にお祝いしたいとおっしゃってましたわ。兄様を支えてくれた人達だからと」
「え、えぇ!?そんな、天宮さんはともかく、おれなんて…」
「違うよ七海。一緒に音楽を形作る人間。どんな形であれ、冥加は独りじゃなかった…そういうことかな」
にっこりと微笑む枝織と天宮に、七海はいまいちピンとこずに首をかしげていたけれど。
考えるのは諦めて、ただ奏でられる音に、心をゆだねた。
世界のすべてに感謝し寿(ことほ)ぐような、その音色に。
fin.
+++
グリーンピースケーキなんてものが生クリームと本当に合うのかなんて知らない!
もうネタ考えるのめんどくさいからネタ考えるところからネタにしよう、と思ったらこうなった。
ネタ考える所からネタにしなかったらヴァイオリンを思いつかなった可能性が高いです(笑)ネタにしてよかった!(爆)
冥加さん誕生日おめでとう!!愛してるーーー!!!
コルダ3は公式で冥かな\(^o^)/
pixivからこのサイトにはリンク等を貼っていません。あんな大手SNSからこんなコアなサイトに直接飛べるようにする勇気無いです\(^o^)/
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